福岡/飯塚をブロックチェーン都市に。産学官民連携アライアンス「FBA」が目指すこと(石丸修平・正田英樹・野見山広明)

福岡/飯塚をブロックチェーン都市に。「FBA」が目指すこと

 福岡県未来ITイニシアティブが、福岡県を拠点にWeb3を活用し事業を行う企業へインタビューをお届けする連載企画。第4回は「FBA(フクオカ・ブロックチェーン・アライアンス)」から、FBA会長の石丸修平氏、株式会社chaintope代表取締役CEOの正田英樹氏、株式会社カグヤ代表取締役社長/徳積財団 副理事長の野見山広明氏のインタビューをお届けする。なお取材は、福岡県飯塚市のBA(Blockchain Awakening)にて実施した。

FBA公式サイトより

 FBAメンバーへのインタビュー

左から正田英樹氏、石丸修平氏、野見山広明氏

 –FBAとは? どのような取り組みをしているのか教えてください。

石丸:FBA(フクオカ・ブロックチェーン・アライアンス)は、Web3領域の政策提言から実装までを推進する、産学官民連携のアライアンスです。2021年の福岡県ブロックチェーンフォーラムで「飯塚市ブロックチェーン推進宣言」を発表した際に設立しました。

FBAの目標は、飯塚市起点で福岡県そしてより広いエリアに、ブロックチェーンを広げてくことです。かつて日本を支えた炭鉱の街・飯塚が、日本を支えるブロックチェーンシティとして進化することを世界へ発信し、日本の発展に貢献することを目指しています。

特に町づくりの分野でのブロックチェーン活用や、産業起点でのものづくり、人材育成通じた担い手の輩出の推進を目的としています。

–現在FBAに参加されているのはどんな団体ですか?

石丸:現在参加団体として、行政からは福岡県と飯塚市、また行政関連の組織として福岡県Ruby・コンテンツビジネス振興会議、福岡地域戦略推進協議会(Fukuoka D.C.)が参加しています。教育機関として九州工業大学と近畿大学が、民間企業としてはハウインターナショナル、chaintope、カグヤ、幻冬舎らが参加しています。産学官民連携したアライアンスです。

そしてFBAや、ブロックチェーン関わりたいと希望する起業や団体向けに「FBAフレンドシップ」という制度があります。現在約50社の企業が参加していて、具体的には、DAOを使って事業されているアビスパ福岡さんや、地元の通信のインフラ企業であるQTnetさん、その他情報システム系企業さんや会計事務所さんが、参加いただいております。

おかげさまで「FBAフレンドシップ」への登録数は年々増加しています。さらに拡大していきたいと思っておりますので、ご興味あれば公式サイトの登録フォームからご応募いただきたいです。

かつての炭鉱の街・飯塚でブロックチェーンを推進

–FBAの拠点でもある、ここ飯塚市について教えてください。

正田:冒頭で石丸さんがお話ししていた通り、飯塚はかつて炭鉱の街として栄えた地域です。ピークの時は日本の半分以上の石炭が飯塚から採れていて、莫大な資金が動いていたんです。当時は、三井、三菱、住友といった財閥企業も飯塚で事業を行っていました。

しかし石炭から石油へのエネルギー革命で、飯塚は主要な産業を失い、次第に街も当時の活気がなくなってきました。そんな状況をどうにかしよう、新たな産業作ろうと飯塚が目をつけたのが情報産業です。当時地域の政治家の方々の動きもあり、北九州の大学であった九州工業大学の情報学部を飯塚に作ることができました。私自身は飯塚出身ではないんですが、まさに九州工業大学の情報学部に行くために飯塚に来て、その後ITやブロックチェーン開発を行うchaintopeを起業しました。

石丸:飯塚の人口は現在12万人ほどですが、この地に九州工業大学をはじめ近畿大学、それから短大も含めて3つの大学があることが、まず稀有だと思います。私も福岡県で広く活動して多くの地域を見ていますが、大学発のスタートアップや技術者が、ここ飯塚からたくさん輩出されているのは、特徴的です。もちろんその中にはブロックチェーン関連事業に挑戦している人たちもいます。

正田:そして飯塚市としても、ブロックチェーンに積極的です。前述の通り2021年に「飯塚市ブロックチェーン推進宣言」を発表しています。そして主にブロックチェーン関連事業を行う起業への補助金や、FBAも連携して中学生向けICT教育・ブロックチェーン授業なども実施しています。

飯塚のこれまでの歴史、そして現在の環境的な強みを活かし、炭鉱の次は情報技術で、そしてブロックチェーンで、というように飯塚を盛り上げていきたいと思っています。もちろんFBAとしても、産学官民が連携したアライアンスであることを活かし、全力でサポートしていきたいです。

BA(Blockchain Awakening)とは?

–今取材させていただいているこの場所、「BA」について教えてください。

野見山:飯塚でブロックチェーンを盛り上げていく一つの拠点として作った施設です。「BA」という名称は、Blockchain Awakeningの略。まさにブロックチェーンに目覚める場所として、エンジニアのディスカッションの場として、ハッカソンの開催の場所として、または研修や合宿場所として、これまでも多くの人たちに訪れていただきました。

この「BA」は古民家を改築して作ったんです。サウナや水風呂もあります。場の道場というコンセプトで、最先端の技術と懐かしい暮らしが調和したハイテクハイタッチを体験できる場として、多くのエンジニアをはじめとした挑戦する人々のマインドフルネスを高めるきっかけを提供しています。

ちなみにこのBAや併設している「徳積堂カフェ」など私が手掛ける飯塚の複数の施設や活動にもブロッックチェーンを使っているんですよ。ブロックチェーンで「徳積帳」という、文字通り参加者の方の活動などで積んだ「徳」を可視化できるように、徳積トーコンというトークンをやり取りする仕組みをchaintopeさんと開発し活用しています。

FBAが目指すこと

–FBAの今後の展望を教えてください。

石丸:街としてブロックチェーンを盛り上げていくために、野見山さんがご説明した「BA」もその一つですが、目に見える拠点がもっと欲しいと思っています。それぞれの拠点をうまく繋げていきながら、様々な人たちが集って仕事をして、新しい価値を生んでいけるような場をたくさん作っていきたいですね。

FBAとしては短期的には裾野を広げて、中期的にはプロジェクトやケースをどんどん作っていき、最終的にはそれをちゃんと事業化していくという3ステップで、ブロックチェーンを段階的に広げていこうということ思っています。

現在はちょうどその真ん中の、様々なケースや事業づくりに取り組んでいるフェーズです。一例を挙げると、飯塚市にもサポートしてもらい、駐車場でブロックチェーンを活用し顔認証でキャッシュレス決済を行う仕組みの実証実験も行っています。

そのように生活に身近なブロックチェーンのユースケースをたくさん生み出される、そんな拠点がたくさんあり、外から目に見える形で「ブロックチェーン都市」と思っていただけるようにしていきたいです。

私自身、全国の自治体と意見交換させていただく中で、いわゆる従来のGDP的価値観だけではやっていけないという点に直面しています。人口を増加や誘致活動を推進したいという意見も聞く一方で、地域の支え方や持続可能性をどう作っていくかといった新しい価値観をベースとした町づくりが求められていると感じます。私はそこにソリューションを作っていきたい。そしてその一つの基盤としてのブロックチェーンに可能性を見出しています。

だからさらなる展望としては、ブロックチェーンの担い手を広げていくことだけじゃなくて、次の新しい町づくりの1つのモデルみたいなものをここ飯塚で作っていきたいと思っています。

「フクオカ・ブロックチェーン・アライアンス2024」について

–11月29日に飯塚市役所で開催のイベント「フクオカ・ブロックチェーン・アライアンス2024」について教えてください。

正田:飯塚市が、世界をブロックチェーンでリードする都市へと発展するため、大々的に「飯塚市ブロックチェーン推進宣言」を行ってから丸3年。FAB主催としては初開催となるイベントです。前日(11月28日)に福岡市で開催の「福岡県ブロックチェーンフォーラム2024」とも連携しています。

ブロックチェーンの技術や思想を用いて事業展開を行う福岡を中心とした複数の企業のプレゼンテーションや、「ブロックチェーンの現在と未来への課題」をテーマにしたパネルディスカッションが実施され、ブロックチェーンを社会実装した先進事例など、具体的・実践的なケーススタディを体感することができるイベントです。ネットワーキングできる懇親会も開催し、もちろんFBAや福岡県・飯塚市の取り組みなども紹介します。

先ほどお伝えした「FBAフレンドシップ」のメンバーの方にも集まっていただきます。さまざまなフェーズの企業さんが集まるので、このイベントを通じて各社の状況や、場合によっては失敗談なども共有しあって、学びのあるイベントにしたいと思っています。これからブロックチェーンを取り組もうと思っている企業さんの参加も大歓迎です。是非とも多くの方にご参加いただきたいです。

「フクオカ・ブロックチェーン・アライアンス2024」概要

タイトル:「フクオカ・ブロックチェーン・アライアンス2024」
日時:2024年11月29日(金)14:30~18:30  ※開場14:00
場所:飯塚市役所 1階(多目的ホール/80席程度)※オンライン配信あり
参会費:無料 →参加申し込みはこちら
主催:フクオカ・ブロックチェーン・アライアンス(FBA)
共催:福岡県、福岡県未来ITイニシアティブ、飯塚市、福岡地域戦略推進協議会
協力:株式会社chaintope、株式会社カグヤ、幻冬舎、九州工業大学、近畿大学

<プログラム>
14:00 開場
(第一部)
14:30 開会
14:32 フクオカ・ブロックチェーン・アライアンス(FBA)の活動紹介
FBA会長 石丸修平氏
14:45 フレンドシップ会員企業によるブロックチェーンの取組み発表
・株式会社プラグテック代表取締役 舩本俊隆氏
・株式会社ワーキングハセガワ 代表取締役 長谷川伸一氏
・アビスパ福岡株式会社 執行役員 平田剛久氏
・トヨタファイナンシャルサービス(株) BCグループ VP  落合修平氏
・株式会社saketreasures 代表取締役 中山雄介氏
・CryptoGames株式会社 ブロックチェーンエンジニア 高橋祐貴氏
・ 一般社団法人徳積財団 副代表理事 野見山広明氏
・株式会社BLOCKSMITH&Co 代表取締役社長CEO 真田哲弥氏
・渋谷Web3大学株式会社 代表取締役 北村元氏
16:00 休憩
16:15 パネルディスカッション
テーマ:ブロックチェーンの現在と未来への課題。国際金融都市フクオカとの親和性
・株式会社chaintope 代表取締役 正田英樹氏
・株式会社幻冬舎 「あたらしい経済」編集長 設楽悠介氏
・みんなの銀行 CXOオフィス 渋谷定則氏
・福岡地域戦略推進協議会(FDC) ディレクター 片田江由佳氏(モデレーター)
17:15 自治体における取組み紹介
・福岡県
・飯塚市
17:30 閉会
(第二部)
17:35〜18:30 懇親会

関連リンク

福岡県未来ITイニシアティブについて

福岡県未来ITイニシアティブは、「新しいITを生み出す人やITを活用する人とともに、より豊かに生活できる未来を創造する」を理念としています。福岡県には、ITを活用した製品・サービスの研究・開発を行う企業・エンジニア・大学等が多数集積しています。これらのITに関わるすべての人とともに、新しいITの創出と活用の促進、起業家やエンジニアが協力して挑戦を続ける環境づくり、未来のIT産業を支える人材の育成を行い、県内のIT産業の持続的な発展を目指します。

あたらしい経済内の特設ページでは、ブロックチェーン関連を中心とした福岡県未来ITイニシアティブの取組みや福岡県内のブロックチェーン関連企業のご紹介などを掲載していきます。

福岡県未来ITイニシアティブ WEBサイトはこちら
公式Xはこちら

取材/インタビュー:荘日明(あたらしい経済)
編集/執筆:設楽悠介(あたらしい経済)
写真:堅田ひとみ
取材場所:BA

関連するキーワード

この記事の著者・インタビューイ

福岡県未来ITイニシアティブ

福岡県未来ITイニシアティブは、「新しいITを生み出す人やITを活用する人とともに、より豊かに生活できる未来を創造する」を理念としています。本県には、ITを活用した製品・サービスの研究・開発を行う企業・エンジニア・大学等が多数集積しています。

これらのITに関わるすべての人とともに、新しいITの創出と活用の促進、起業家やエンジニアが協力して挑戦を続ける環境づくり、未来のIT産業を支える人材の育成を行い、県内のIT産業の持続的な発展を目指します。

福岡県未来ITイニシアティブは、「新しいITを生み出す人やITを活用する人とともに、より豊かに生活できる未来を創造する」を理念としています。本県には、ITを活用した製品・サービスの研究・開発を行う企業・エンジニア・大学等が多数集積しています。

これらのITに関わるすべての人とともに、新しいITの創出と活用の促進、起業家やエンジニアが協力して挑戦を続ける環境づくり、未来のIT産業を支える人材の育成を行い、県内のIT産業の持続的な発展を目指します。

この特集のその他の記事

ブロックチェーン活用のデジタルプロダクトパスポート(DPP)で、人も環境も救う衣料品を(ワーキングハセガワ 長谷川伸一)

福岡県未来ITイニシアティブが、福岡県を拠点にWeb3を活用し事業を行う企業へインタビューをお届けする連載企画。今回は、福岡の筑豊地区を拠点に、業務用ユニフォームの販売を行う、株式会社ワーキングハセガワの代表取締役 長谷川伸一氏のインタビューをお届けします。

Sponsored

観光や地域の課題解決を目指す。訪問証明NFT発行アプリ「COMMUN」とは?(九州NTFラボ 時田悠樹)

福岡県未来ITイニシアティブが、福岡県を拠点にWeb3を活用し事業を行う企業へインタビューをお届けする連載企画。第2回目は、九州地域で大規模NFTイベントなどを開催する「九州NTFラボ」代表で、NFTを訪問証明として配布するアプリ「COMMUN」の事業に携わる時田悠樹氏にインタビューを行いました。

Sponsored

やはりトークン発行がWeb3の醍醐味、日本企業の挑戦をもっと成功させたい。マーケットメイク事業で目指すこと(暗号屋 紫竹佑騎)

第3回は、福岡を拠点にブロックチェーン関連の開発やコンサルティングや複数の自社サービスを展開する暗号屋の代表社員 紫竹佑騎氏のインタビューをお届けする。なお取材は、福岡県Ruby・コンテンツ産業振興センターにて実施した。

Sponsored

ブロックチェーンEXPO(11/20-22)で商談できる、福岡県企業のご紹介 by 福岡県未来ITイニシアティブ

福岡県未来ITイニシアティブでは、福岡県内企業の優れたブロックチェーン製品・サービスの普及・展開を促進するため、11月20-22日に幕張メッセで開催の「第5回ブロックチェーンEXPO【秋】(NexTech Week2024内)に、福岡県内企業4社と共同出展致します。

福岡/飯塚をブロックチェーン都市に。産学官民連携アライアンス「FBA」が目指すこと(石丸修平・正田英樹・野見山広明)

 福岡県未来ITイニシアティブが、福岡県を拠点にWeb3を活用し事業を行う企業へインタビューをお届けする連載企画。第4回は「FBA(フクオカ・ブロックチェーン・アライアンス)」から、FBA会長の石丸修平氏、株式会社chaintope代表取締役CEOの正田英樹、株式会社カグヤ代表取締役社長/徳積財団 副理事長の野見山広明氏のインタビューをお届けする。なお取材は、福岡県飯塚市のBA(Blockchain Awakening)にて実施した。

Sponsored