トークンを活用した地域活性化の可能性
「FiNANCiE」上で独自トークンを発行し、地域活性化を目指すプロジェクトが多数始動している。
「FiNANCiE」は、株式会社フィナンシェが運営するトークンを発行して資金調達の可能なクラウドファンディング2.0サービスだ。2019年に国内でサービスを開始し、これまでサッカーJリーグ、野球、バスケ、などのプロスポーツチームをはじめ、映画やアイドル、インフルエンサーなど100以上のプロジェクトのトークンが「FiNANCiE」で発行されている。
ユーザーはiOSやAndroidの専用アプリを通じ、トークンの購入が可能だ。アプリ内でFiNANCiEポイント(1pt=1円)を必要額購入することで、トークンの購入ができる。
ユーザーはトークンを一定数持っていることで、プロジェクト側がそれぞれ設定した特典を得が得られる。それぞれのプロジェクトでトークンの価格が変動する仕組みで、ユーザーは購入したトークンの売却することも可能だ。なお「FiNANCiE」で発行されているトークンは、金融商品取引法上の有価証券ではなく、資金決済法上の暗号資産(仮想通貨)でもないという。
今回は「FiNANCiE」でトークンを発行するプロジェクトの中で、事例が増加中の「地域活性化プロジェクト」をいくつか紹介させていただく。
熊本県菊池市発、黒毛和牛「KYUKON WAGYUプロジェクト」
熊本県菊池市の畜産農家「山瀬牧場」を家業とし、全国各地の良質なお肉を紹介する肉師®︎としても活動する山瀬健策氏が手塩にかけて育て上げる黒毛和牛「KYUKON WAGYU」の「畜産×食育」に関する「KYUKON WAGYUプロジェクト」が今年9月に始動した。
FiNANCiEでの「トークン発行」と、トークンを基盤とする「共創型コミュニティ」で、生産者と消費者がパートナーとなって創り上げる「次世代の畜産流通と収益モデル」の実現にチャレンジするプロジェクトだ。
東京目黒にて山瀬氏がプロデュースする焼肉レストラン「きゅうこん」をはじめ、パリに本店を持ち、フランスの革新派美食ガイド「ゴ・エ・ミヨ2020」にも掲載された「Restaurant TOYO Tokyo」などを運営する「TOYO JAPAN」のバックアップし、「地方×東京×web3」に挑戦する取り組みだ。
第一弾のこのプロジェクトの核になる取り組みとしてトークン販売(初回ファンディング)で集まった支援金で「黒毛和牛の一頭買い」を行うという。サポーターと共に「仔牛をせり、育て、いただく」という、約20ヶ月にわたる一連のプロセスを共有するとのこと。
仔牛の生育から流通に至るオープンな情報提供にこだわった「見届ける畜産」を実践しながら、肉のプロフェッショナルで肥育農家でもある山瀬氏の視点により、世代を超えて楽しめる「家族の食育」に取り組んでいくとのことだ。
なおトークン購入者は特典として、プロジェクト運営の一部に携われる投票企画への参加や参加型イベントへの招待、特典抽選への応募などの権利が得られる。投票はトークン保有数に応じて投票数が多くなる仕組みや保有しているトークン数の割合によって抽選特典の当選確率が変動する仕組みとなっている。また一定のトークンを保有しているサポーターには限定の特典も提供されるとのことだ。
例えば初回価格で10,000ptに相当する数量のトークン保有者に対し、「黒毛和牛の肥育に関する限定コンテンツ」や「KYUKON WAGYUの優待販売に関する限定情報」、「焼肉レストランきゅうこん優待のご案内」、「プレミアム抽選イベント参加権」といった限定コンテンツ用意されている。その他特典の異なる、複数のプランが販売されている。
→「KYUKON WAGYUプロジェクト」の「FiNANCiE」のトークン詳細情報と支援コース購入ページ
静岡県三島市発「三島ウイスキープロジェクト」
10月には、Whiskey&Co.主導の「三島ウイスキープロジェクト」で始動した。
「三島ウイスキープロジェクト」は静岡県三島市限定ウイスキーづくりを起点とした関係人口創出を目指すプロジェクトだ。内閣府の「関係人口」創出・拡大のための支援事業、令和3年度補正「中間支援組織の提案型モデル事業」に採択されているプロジェクトでもある。
トークン発行とトークン保有者が参加できる「FiNANCiE」内のコミュニティを活用し、Whiskey&Co.社とサポーターがパートナーとなって創り上げる「地域ブランドづくりを通したまちづくりや関係人口の創出」の実現にチャレンジするプロジェクトだ
具体的にこのプロジェクトでは「FiNANCiE」上でトークン「key3」が販売される。そのトークンの保有者にはウイスキーの購入権やその製造・販売プロセスへの参画権などの特典が付与される。なお「key3」は初回販売で1口の10,000ptで購入ができ、1人あたり10口が購入上限だ。初回販売では2000口(2000万pt)分が用意されている。
トークンの保有数をウイスキーの熟成年数に紐づけ、トークンの保有数が多いほど、熟成年数の長いウイスキーのボトル製品を購入できる権利を獲得できる仕組みだ。熟成年数は3年、5年、10年の3タイプあり、それぞれの熟成年数製品1本購入に必要な口数は1口、5口、10口。なお樽詰日は2023年4月を予定しているとのこと。
またトークン購入者には、ウイスキーのボトル製品の優先購入権利に加え、トークン保有者限定コミュニティへの参加や、ウイスキー製造の各種プロセス(蒸留やテイスティング等)にまつわる投票企画や体験イベントへの参加権利、初回販売記念オリジナルNFTプレゼント、またWhiskey&Co.社製造のウイスキー以外の「その他スピリッツ・焼酎(全国・通販で購入可能)」を10%引きでディスカウント購入可能な権利などの特典も用意されている。さらに、ある一定の口数のトークンを保有しているユーザーへ、毎年抽選で樽のまま購入できる権利の付与を調整、検討されているとのことだ。
→「三島ウイスキープロジェクト」の「FiNANCiE」のトークン詳細情報と支援コース購入ページ
沖縄県名護市「やんばる」発「畑人3.0プロジェクト」
そして11月には沖縄の農業生産法人クックソニア発足の「畑人3.0(ハルサーサンテンゼロ)」プロジェクトが始動している。
「畑人3.0」は、沖縄県沖縄本島北部の山や森林など自然が多く残っている地域「やんばる(山原)」の産直食材を広く届けると同時に、生産者コミュニティの在り方、地域や消費者との関わり方について皆で一緒に考え、アップデートしていくことを目指すプロジェクトだ。
沖縄県名護市を拠点に、地域に根ざした農業と流通の仕組みづくりに取り組んできた畑人であるクックソニア代表の芳野幸雄氏が発起人。なお畑人(ハルサー)とは、農家や畑の人を指す沖縄の方言だ。
このプロジェクトではトークンとコミュニティを活用し、農作物の栽培・加工・販売に至るプロセスの可視化やノウハウ共有をはじめ、市場の同行に左右されない生産・流通体制の構築、リアル・オンラインで実施されるレシピ開発や料理教室など、生産者と支援者が一体となって取り組む、あたらしい農業づくりへの挑戦を行うとのこと。
トークン販売によるファンディングで集まった支援金は、同プロジェクト第一弾の取り組みとなる特別配合の「やんばる産スパイス」開発や、やんばる食材の栽培、商品開発などプロジェクトの運営資金に利用される。
「FiNANCiE」上で発行されるトークンは「ドゥシ(仲間)トークン」として販売中だ。「ドゥシトークン」購入者は特典として、コミュニティ運営の一部に携われる投票企画への参加や参加型イベントへの招待、特典抽選への応募などの権利が得られる。また一定のトークンを保有しているサポーターには限定の特典も提供されるとのことだ。
なお「ドゥシトークン」の販売メニューはお試しコース5,000pt、スタンダードコース10,000pt、プレミアムコース30,000pt、畑人3.0スポンサーコース300,000ptの4種類が用意されている。
購入者には購入pt分の「ドゥシトークン」が付与される他、「トークン保有者限定コミュニティへの参加」、「投票企画・抽選応募への参加権」、「やんばる産スパイスをお届け」、そして「初回販売記念のオリジナルNFT」などが付与される。
→「畑人3.0」の「FiNANCiE」のトークン詳細情報と支援コース購入ページ
「新しい推し活」としてのトークン購入
フィナンシェの担当者に確認したところ、地域活性に繋がるトークン発行の予定は、検討中も含めると直近で10プロジェクト以上あるようだ。
フィナンシェでは、地域活性を目指すプロジェクトの相談を積極的に受け付けていくという。トークン発行について知識のない方への基礎知識のレクチャーや企画検討なども、担当者がサポートしてくれるようだ。
具体的には、ミーティングを重ね、トークンを使用して何をしたいかなどのビジョンの言語化し、ビジョン実現のため具体的なステップを描き、プロジェクトとして魅力ある形に導いてくれるという。
なお実施する規模にもよるが、初回の打ち合わせから約1ヶ月でトークン発行が可能だとのこと。すでに多数の事例がある「FiNANCiE」というプラットフォームを活用できるため、スピーディーにプロジェクトを始動できるのも魅力だ。フィナンシェの担当者も「NFTも含め、気軽にトークンを発行できるのが、FiNANCiEの強み」と語っている。
また今後もフィナンシェとして「町おこしなど、関係人口の創出を掲げる取り組みは積極的にサポートしていきたい。規模の大小を問わず、まだまだ各地の特色に合わせた活用事例を増やしていけると思っている」とし「トークンを購入者の皆さんが『新しい推し活』として、第二、第三の我が町感覚で、トークンを保有いただき、旅行先の検討材料としても楽しんでいただく潮流を産んでいきたい」と語ってくれた。
自分の出身や関わりのある地域がトークンを発行している場合は、そのプロジェクトを応援するのもいい。また新たな故郷を作るために、今回紹介した事例も含め「FiNANCiE」上で色々なプロジェクトを探してみても楽しいかもしれない。
また現在地域活性化や町おこしを行っている地域の方で、トークンの活用に興味があればぜひフィナンシェに問い合わせてみてはいかがだろうか。
Header Image:iStock/Katsiaryna-Pleshakova