β版が公開された次世代型SNS「FiNANCiE」の詳細に迫る特集『ドリーム・シェアリング・サービス「FiNANCiE」の正体』第2弾!今回は株式会社フィナンシェの代表取締役社長であり、ブロックチェーンカンパニーUnicon Pte. LtdのCEOも務める田中隆一氏のインタビュー前編を公開しました。田中氏の今までのキャリア、ブロックチェーンとの出会い、FiNANCiEのロードマップなどについて語っていただきました。
ずっと人との繋がりに関する仕事をしてきたキャリア
−まず田中さんの今までのお仕事について教えて下さい
私は2002年にDeNAに入社して、当時はネットオークション系の事業に携わっておりました。その後独立して地域の口コミサービス事業を立ち上げて売却、そしてソーシャルゲーム企業「Zynga」で働きました。「Zynga」ではソーシャルゲームの企画やパートナーシップに携わっていました。
今振り返るとその後に「Unicon」を立ち上げるまでも、ずっと「人の繋がり」に関する仕事をしてきましたね。僕はインターネットの面白さは、人と人がその場でマッチングしていくことだと思っています。
−現在の「Unicon」では、FiNANCiE以外のブロックチェーン/仮想通貨のビジネスもされていますよね? この領域にいつどのように田中さんが興味を持ったんですか?
「Unicon」ではまず東南アジアの決済や、ゲームのコミュニティ部分の提供するプラットフォームを作りました。当時東南アジアで事業をしていく中で、決済の仕組みが一番課題だと感じていたんです。
東南アジアの人々は、みんなゲームで遊びたいと思っているんですけど、クレジットカードを持っていないからゲームに課金できないです。カードを持っていない人はプリペイド方式で前課金する方法しかないんですが、その手数料がまた高い。東南アジアのこういった決済に関する状況では、ゲームのコンテンツビジネスをグロースするのが難しいと肌で感じていました。
ビットコインの自動販売機に出会う
そんな時に偶然シンガポールでビットコインの自動販売機を見つけたんです。確か2012年くらいの頃だったと思います。
その自動販売機は法定通貨を入れるとビットコインのペーパーウォレットで出てくる仕組みでした。それを見て、これは面白いなと思いました。その自動販売機で買った紙のビットコインを海外に持っていってもそのままその地域の通貨に交換できたりするわけです。
ビットコインは手数料安くて、銀行を通さなくても使える通貨なんだ、そう興味を持ったのが僕と仮想通貨の出会いでした。
余談ですが、その時自動販売機で買った紙(ウォレット)の3BTCは、いつの間にか他のレシート等と紛れてなくしちゃったんですけどね(笑)。
そこから仮想通貨に興味を持ち出したんですが、その後世界中で数多くのICOプロジェクトが出てきて、それらが新しい資金調達方法として話題になっていきました。
これまでのプロジェクトや事業は基本的には初めに国家という地域の経済圏から生まれるものでしたが、ICOのプロジェクトはその枠を超えて興味関心で繋がる経済圏を通貨のようなものを使って作ることができているところが非常に魅力的だと思いました。
その当時から僕は國光さんと一緒にそれらのICOのプロジェクトの良し悪しの分析を繰り返していたんです。
ICOの中では詐欺みたいなものも多く、さらにその中には宣伝がうまくてお金が集まっているプロジェクトが国内外にありました。正直そういった状況は不健全だと感じていましたので、それをどうにかするために僕らが内部でICOを分析して出していた指標をとりあえず外に出そうと考えたんです。
そこで2017年に「Bitinvestors」というICOを評価するメディアを作りました。
僕たちはそのメディアを通じて様々なICOのエコシステムの分析や、そのプロジェクトがどういうチームで運営されているかなど総合的な評価指標を一緒に提供していきました。
ちなみにその知見を使って積極的にこの部分でビジネスを作っていこうと思い、ブロックチェーン企業に特化したファンド「gumi cryptos」をgumi社と協力して立ち上げたんです。
ICOプロジェクトの評価軸
-当時ICOプロジェクトの評価軸をどういう風にして作られたのですか?
トークンのエコシステムやマーケティングについて、またアロケーションの仕方やそのプロジェクトチームのメンバーや、それをどんな人が支援しているかなど、それらの重要な項目をさらに要素分解してトータル60を超える評価軸を作りました。
例えばエコシステムの評価に関しても、そのエコシステム内に「需要と供給がしっかり存在しているか」「それが数値によって表現できるかどうか」「需要の中で初期インセンティブとしてよりネットワーク効果を持つかどうか」など細かく分解して指標としていきました。
その指標を使ってその不健全なものをはじいて、できるだけマーケットを健全なものにし、より受け入れられやすい市場を作っていきたいと思っていました。
個人が夢を実現プラットフォームを作る
—そのように様々なプロジェクトを評価してきた田中さんが、今回のFiNANCiEというブロックチェーンを使ったプロジェクトをなぜやろうと思ったのですか?
いろいろなプロジェクトを分析した知見を使って私たちがプロジェクトを作ってICOをするというよりは、そのICOのような新たな資金調達方法を多くの人に利用してもらいたいと考えたんです。私たちが発行体になるのではなく、多くの人が逆に発行体になってもらうことはできないかと。
それでFiNANCiEの事業を構想しました。
また実際にFiNANCiEでカードを発行するのはプロジェクトではなく、「人」です。それらは今までのICOとやはり全く違ったものです。だから「人」という軸でどういう風に資金調達するのが健全であるべきかについてじっくり検討していきました。
中央集権的にマーケットプレイスを厳しく管理しても偶発的な人と人との出会いが阻害されますし、一方制限なく解放しすぎると無法地帯になってしまいます。そのように僕たちが考えたときに、FiNANCiEでもブロックチェーンの思想で重要な「非中央集権」「トラストレス」「自立分散」を活用すべきだという結論に至りました。できるだけFiNANCiEでも私たち中央の管理者が介在しなくてもいいように、自律的にコミュニティが回る仕組みを取り入れようと。
だからFiNANCiEではカードの売り出しと二次流通の価格決定に私たち運営が介在しなくてもいい仕組みを取り入れました。具体的には売り出し価格は私たちが決めるのではなく、ダッチオークションでユーザーが価格を決められるような仕組みを取り入れています。
またカードを二次流通する部分も、Bancorアルゴリズムを応用し、その時の需要と供給に応じて、自動的に価格が変動する仕組みを採用しています。
FiNANCiEは、すべてを私たちがオリジナルで発明したというよりは、先行している様々なプロジェクトを参考にして、それらの上手く成り立っていた要素をどんどん取り入れて設計していきました。
ソーシャルネットワークサービスの次の形を目指して
先ほどお話ししたように私は今までの仕事でも人の繋がりやコミュニティということを意識してきましたし、それは國光さんも同じで、だからこそ2人とも「ソーシャルネットワークサービスの次の形」を実現してみたいと思っていました。
今まで僕たちは色んなICOプロジェクトを見てきましたが、その中には「それをなぜブロックチェーンでやるんだろう」と疑問に思うものも少なくはなかったです。
一方僕たちはブロックチェーンで何かしようと考えたというよりは、まずそれぞれの価値をお互いにやり取りできるような次世代のソーシャルネットワークサービスを作りたいと思っていて、それにはパブリックチェーンのような仕組みがマッチすると思って、だからFiNANCiEでもブロックチェーンを使おうと考えたわけです。
FiNANCiEのロードマップ
—今年、FiNANCiEはどのようなロードマップでアップデートしてくのでしょうか?
まず直近では現段階のベータ版から本ローンチに向けて初期のユーザーさんにとにかく使ってもらって、機能を改修していく予定です。あと現在はブラウザでしか使えませんが、アプリの開発も進めていきます。またコミュニティ内のメッセージ機能などもどんどん改善していきたいです。
FiNANCiEのような、個人価値を可視化して周りが応援する仕組みは、日本が海外に先行しており、新しいコンセプトにマッチしていると思っています。実は初めは海外でのローンチを予定して、海外で開発やクローズドベータのテストをしていたんです。
ただいろいろテストしていったなかで、オンラインサロンやコミュニティトークンなどの先行事例もある日本からスタートするのがいいのではと思ったのです。FiNANCiEが実現しようと思っている概念は、文化的にも日本人にマッチすると思いました。
可能性としては海外も大きいと思っているので、まずは日本でモデルをきちんと作りながら、成功事例として海外に持っていきたいなというのが次のフェーズですね。
−海外展開はいつ頃を検討していますか?
グローバルでのローンチは今年中には出したいと考えています。実は初めは海外版でテストを進めていたので、例えばカードをイーサリアムと交換する仕組みなどは、すでにほとんどできているんです。もちろん日本では法律的な問題がありその機能は制限していますが。
−今お話しに出た日本の法律や規制に関してはどのように対応してきたのですか? その部分、ブロックチェーン領域で新規事業を立ち上げる一つネックになっている部分だと思います。これからサービスを始める人たちに向けてアドバイスください
この部分はすごく慎重に進めましたし時間も要しました。構想段階からモデル設計にいたるまで、金融と仮想通貨分野に詳しい弁護士にずっと相談をしながら進めてきました。
これからブロックチェーンで事業を始める人たちにも、できるだけモデル設計の段階から早めに専門家に相談した方がいいとアドバイスしたいですね。
ブロックチェーンのサービスは、一つの法律だけじゃなくて複数の法律との兼ね合いも気にしなければいけません。そしてそれらの法律の主旨もそれぞれ違うわけです。
それを一つ一つ照らし合わせていって、幾つもの法律の趣旨に則ってモデルを設計していくというのが、結果的にサービスの実現の近道なのではないかと思っています。
(後編に続く)
→この特集すべてを読む『ドリーム・シェアリング・サービス「FiNANCiE」の正体』
(編集:設楽悠介/竹田匡宏 写真:大津賀新也)