構想段階中の暗合資産を利用した精算サービス
続きまして精算サービスでありますが、こちらに関しては暗号資産を活用してCCC(キャッシュコンバージョンサイクル)を短期化し、中小の資金流動性を向上させるとありますが、仮想通貨を使うことによって、あまり大きな声では言えませんが、なかなかかかっている海外送金での為替手数料とかを減らしたり、あとある程度キャッシュのあるところがプールすることによって、そちらをバスケット制みたいな形で、暗号資産を擬似的に扱うことによって、中小企業の資金融資を楽にしたりとそういった形で使えます。これはどうしても法制度に依存してしまいますが、いろんな使い方ができるんじゃないかなと思います。
せっかくブロックチェーンを使うなら、暗号資産のメリットもどんどん使えるんじゃないかなということを想定しています。ただまだ法制度が追いついていないので、構想段階です。
サプライチェーン・トレーサビリティシステムについて
あと先ほど話したサプライチェーン・トレーサビリティシステムとして使えるという部分があります。サプライチェーン・トレーサビリティシステムのメリットとしては、まず効率化です。生産計画時に使えたり、取引証明の効率化などに使えてきます。あと品質向上です。問題発生時に原因追跡スピードが向上したり、問題発生原因の正確な記録、安全性の証明活用にも使えるというところで期待できるかなと思っています。
あと3番目に新たな金融手法の確立というものがありますが、トランザクションレンディングの実現です。トランザクションを担保にして「大企業と取引していますよ」とかそういった証明をもとに金融機関から融資を取りやすくするというトランザクションレンディングといったものを実現できたりします。こういった使い方も非常に期待しています。
サプライチェーントレーサビリティシステムは、前からメリットがあるのはわかっているのですが「誰がお金出すの?」という問題がありました。
みんなでちょっとずつお金を出しあっても、このサプライチェーントレーサビリティシステムを作るのになかなか効率的なお金の出し方、お金を出す人って決めるのが難しかったんですが、ブロックチェーンメリットを活用して、契約・見積・請求・受発注のDX化により実現していけば、自然にサプライチェーントレーサビリティーシステムができますので、この使い方をすれば誰がお金出すの問題というのは解決できるんじゃないかという風に考えています。
続きまして5番の自社保有というところですが、こちらはもう先ほどお話した通りです。自社でファイヤーウォール内でしかデータを持ちたくないよということであれば、それも可能ですよという話になります。
あと6番の海外クラウドの使い方なのですが、これは我々としても非常に期待している分野です。最近、各国でデータ規制が出てきています。
例えば国名をあげていますが、中国・ベトナム・ロシアなどでは、個人情報及び国家が重要とするデータは自国にデータを保持したり、データを他国に持ち出さないという規制がございます。そうなってくると我々の方でですねサプライチェーン取引、商取引基盤を作ったから我々の方にデータを預けるということがなかなかできません。
日本で我々が日本の会社、アメリカの会社、タイの会社のデータを預かることはできるのですが、中国やベトナムの会社を日本リージョンの中に持ってこようとすると、これはできません。
ですので日本及び非規制国は日本でクラウド化して、規制国の中国では中国でCordaを立ち上げて、ノードをDockerでノードだけ持っていけば、そのままネットワークの設定をすれば取引として使えます。
基本的に広く同じ様にベトナムでもできますし、データ規制国の間、データ規制国ではその国でCordaを立ち上げることによってデータ規制に対応することができて中国やベトナム、ロシアとも商取引DX基盤、サプライチェーン管理というのができてくるのではないかという風に考えています。
ブロックチェーン(Corda)・ビジネスを企画する上での注意点
今までは我々が今構想していることをお話ししたのですが、そういう意味では我々が今構築していまして、ほぼできておりまして、テスト段階に入っているのですが、ここからはそういったものを作る中でいろいろ得たノウハウをシェアさせていただきたいと思います。
まず最近頻繁に「経営層からブロックチェーンをベースにビジネス企画を出すよう指示を出された」というご相談を受けることがあります。
ただ「明確にブロックチェーンのメリットを活かすユースケースがないしコストも合わない、どうしようという」と相談を受けますが、こちら今日お話しした内容をまとめた感じになります。
基本的にブロックチェーンを使うときのメリットとしてあげられるのは、やっぱりデータセキュリティです。なかなか踏み込んで話せなかったところですが、サービス事業者がデータを閲覧できない運用が可能です。
昨今、就職斡旋企業がデータを別の分析に使っていたことやビデオ会議システムのサービス企業がで勝手にユーザーの権限を変えていたこととかですね、サービス事業者がデータを見れたり、扱えることに対する問題が発生しております。
こういった問題もブロックチェーンを使えば、サービス事業者がデータを閲覧できない運用も可能ということがメリットになるかと思います。
これは結構大きくてサプライチェーンやってくる場合、取引データって下請けさんへ「何か発注しました、さらにその下請けさんへ何かを発注します」という場合に、下請けさんへさらに発注する部分は、原価データになってきますのでサプライチェーンの上流に知られたくないというものなのです。
なのでサプライチェーンの上流の企業はもちろんのこと、サービス運用社もデータの中身を見れないというのは、非常にサプライチェーンシステムを作る上や他のサービスを作る上でもメリットになるんじゃないかなと考えています。
あと先ほどお話しさせていただいたグローバル対応、データ自国保有規制国でも対応できます、グローバルに展開できますというのがメリットになるかと思います。あと機能拡張性です。スマートコントラクトは意外とですね、簡単にいろいろできますので。一度、取引基盤を構築するとですね、適用範囲拡大が容易にできると考えております。
あとそれに加えて暗号資産を活用できるということです。
まだ規制が多いので我々も勝手なことはなかなか言えないのですが、ファイナンス・アカウンティング分野では革命的な機軸を打ち出せる可能性を考えています。我々もいろいろな案を出していますが、まだ法令に引っかかってしまうのでなかなかオープンには話せません。
しかし金融、ファイナンス・アカウンティング分野で活用すれば、今の困っている部分に対してかなり革命的な改善ができるのはないかと考えています。
あとフェールセーフでもなく、フェイルソフトでもなく、止まらないフォールトトレランスという形で可用性は中央管理システムに比べるとかなり高いこともメリットになるのかなと思います。
そしてスケーラビリティです。我々のように完全な分散システムというよりは、分散システムをクラウドで扱っているものに関しては、スケーラビリティは大きな課題になってきますが、非常に簡単に大きくすることができます。
特にオーケストレーションツールであるKubernetesなどそういったものを使っていくと、かなり柔軟なスケーラビリティを確保することができるのではないかという風に考えております。
サービス開発時に技術関連で気をつけるべきポイント
あと技術関連でお気をつけいただきたいことがいくつかありますので、情報をシェアさせていただきたいと思います。
まずITインフラ構築に関してです。ITインフラってサーバー、OS、ミドルウェアといったものだけじゃなくて、ブロックチェーン基盤構築まで入れておりますが、この工数が想定以上に必要になります。
一般的な中央管理システムですとアプリ開発が7,8割、ITインフラ開発が2割,3割という風なイメージがあるかと思いますが、ブロックチェーンの場合、ITインフラ構築:アプリ開発の工数、コストのかかり方がITインフラが7、アプリ開発が3、もしくは8:2とかそのような感じでITインフラ構築が思ったより大変になります。
なのでそのあたりの専門家の確保や予算計画もしっかりと見据えた方がいいかなと考えています。やはりマイクロサービスアーキテクチャなどいろんなツール類を使わないとなかなかうまく運用できないかなと思っていますので、Asure、AWS、コンテナ・オーケストレーションツール、CI/CDツール、インフラ定義ツールの高レベル要員の確保は必須ではないかなと考えています。
特にKubernetes・Terraformはインフラ定義ツールですけど、インフラをテキストで作れるようにしておかないとノード1つ追加するのもいちいち手作業でやっていると、ミスの温床になりそうな気がします。我々はこの辺はTerraformでですね、インフラは全てテキストで動かすという方針のもと開発を進めています。またぜひそうした方がいいという風に考えております。
あとアプリケーション開発ですがピュア分散システムですので、例外処理が複雑かつ多量となります。ですので分散システムの知見がある技術者の確保をおすすめしたいなと考えています。あと開発手法が確立されていないため、コンピュータサイエンス・ソフトウェア工学に精通した技術者の確保もおすすめしています。
最後に、分散システムの例外処理の面倒さについて、なかなか説明するのは難しいんですけど、Amazonの技術者がペーパを出しています。
Amazon Builderr’s Libraryっていうのがあるんですが、そこでJacob Gabrieisonさんがですね、分散処理の面倒くささ、特に例外処理の面倒くささに関するペーパーを出されています。ブロックチェーンのために書かれていたものではないので、一致しないものもあるんですけど、分散処理でどういったところが面倒臭いのという時にはそういったものが1つ事前に参考になるんじゃないかなと思います。
機能支援システムについても留意とありますが、普通のデータベースシステムRDBMSとはかなり違いますので、RDBMSで簡単にできることが、なかなか難しいよというところもお気をつけになられた方がいいと思います。
あとあえて今ブロックチェーンを利用したビジネスに今取り組むということに関してですが、基本的には可能性のある基盤システムブロックチェーンにしろ、Cordaにしろ、非常に可能性のあるものだと我々考えています。
ただビジネスプランニングにもシステム構築にもノウハウが非常に必要になりますので、実ノウハウ蓄積と人材育成が重要になるのかなと考えています。そういう意味ではブロックチェーンの将来性を信じられるのであれば、他社に差をつけられる今、取り組むべきじゃないかなということで、今取り組むと非常に大変です。我々もやはり辛い思いをしながら、今構築しておりますが、ぜひ皆様も興味おありになるのであったり、ブロックチェーンにかけたいという部分があるのであれば、ぜひ今取り組まれることをおすすめしたいと思います。
3番目が経営層の理解についてなのですが、これについて私は必ず話しています。ブロックチェーンの将来性についてですね、経営層の理解がないとなかなか難しいかなと思います。なぜならコストのかかり方とか、運用の仕方とかもですね、今までの中央管理システムとかなり違いますので、なんでこんな所にこんなお金がかかるのとかですね、なんでこんな所にこんな時間かかるのとかですね、経営層の理解がないとなかなかプロジェクトが進まないかと思うからです。
なのでしっかりとですねブロックチェーンの将来性、こういうメリットがあります、ただここは技術的に確立されていないので、この部分は余分にかかってしまいますということをですね、経営層に理解していただいた上で、進めないとなかなか大変なのかなという風に考えております。
ブロックチェーンビジネスを進める上でポイントとなる考え方と人材
纐纈氏のプレゼンテーションが終わり、あたらしい経済編集長の設楽とウェビナー参加者からの質疑応答が始まった。
「DX取引基盤は契約書の管理から始まり、具体的にどのように展開してくのでしょうか」とあたらしい経済設楽は質問した。それに対して纐纈氏は「どんどん広げていかないとブロックチェーンのメリットは出てこないんじゃないかなと考えていますんで、どんどんアイデア出して広げていきたいという風に考えております」と答えた。
続いてウェビナー参加者から「BigQueryなどブロックチェーン・DLT以外の基盤との比較はいかがでしょうか」と質問が出た。
纐纈氏は痛いところを突かれたと言いながら「やはりですね、現時点ではブロックチェーンの方が劣っている部分というか、まだ追いついていない部分が多分にあります。最初に話したようにブロックチェーンの将来的なメリットにかけてですね、取り組んでいるという部分が多いですので、現時点ではBigQueryであったりいろんなNo SQLで分散システムを作られた方が楽は楽です。ただ将来はブロックチェーンの方が花を開くという風に信じて我々は進めております」と答えた。
纐纈氏の答えに対して、設楽は「ブロックチェーンは暗合資産を活用できることが大きな特徴である」言及した。それに対して纐纈氏は「おっしゃる通りだと思います。そういう意味では暗号資産の活用、有効活用を見据えないとブロックチェーンのメリットって出ない可能性もあるので、そこは非常に重要になるかと思います」と答えた。
そしてウェビナー参加者から「ブロックチェーンの構築に必要な育てるべく必須となる人材の専門分野はなんでしょうか」と質問が。
纐纈氏は「そういう意味では、点の話で分散システムの専門家とか、Kubernetiesとかの話をしたんですけど、本当のことを言うと、そこのシステムもわかっている、ビジネスもわかっている、ブロックチェーンをわかっているというのを網羅的に見える、やや専門的なジェネラリストが1人いないとですね、これはブロックチェーン技術の適用ってかなり難しいなと言う風に考えています。だからまず一番最初に育てるべきと言うか必要になってくるのが、ブロックチェーン、ビジネス、技術を前半見えるジェネラリストだと思います」とコメントした。
纐纈氏の意見に対して、設楽は「エンジニアとかと言われがちですけど、実はそこ横断できる人が大事になってくるっていうのは、ちょっと難しそうだなと思う方にも、チャンスはあるかもしれないですね」とコメント
そして纐纈氏は「その通りだとも思います。今私エラそうにはなさせていただいておりますが、ブロックチェーンを組めと言われたら、なかなか難しいんですけど、ビジネスとかなんとか全般を見れていますし、構造自体わかるので、ブロックチェーンに完全に特化というよりは、ブロックチェーンの概要は理解した上で、全部みれるっていう方がいて、初めてビジネスにできると思います」と答えて、セッションは幕を閉じた。
(この記事はイベント内容を編集したレポートです)
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プロフィール
纐纈晃稔
豊田通商システムズ株式会社/ブロックチェーンビジネス担当主幹。2000年入社。入社以来、HR-Tech分野、デジタルガバメント対応分野等新分野でのITビジネス企画、構築を担当。現在はブロックチェーンビジネス担当として、ブロックチェーンサービスの構築とブロックチェーンを実ビジネスに活用する上での課題調査、その解決策の研究を行っている。日本人工知能学会優秀賞受賞。