Marco Poloが切り開く、事業会社のための貿易金融〜山田宗俊(SBI R3 Japan株式会社)金タソム(株式会社三井住友銀行)

あたらしい経済とSBI R3 Japan 株式会社の共催オンラインイベント「企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)とブロックチェーンの実用化」の第5セッション「Marco Poloが切り開く、事業会社のための貿易金融」のイベントレポートです。

このセッションでは、前半にSBI R3 Japan株式会社の山田 宗俊氏がサプライチェーンとブロックチェーンを掛け合わせる意義について説明し、後半は株式会社三井住友銀行の金タソム氏がエンタープライズ向けブロックチェーンである「Corda」を基盤に開発した貿易グローバルプラットフォーム「Marco Polo」について説明しました。

SBI R3 Japan 山田宗俊氏によるプレゼンテーション

まず会社の紹介をさせていただきます。SBI R3Japanは元々SBIとR3の2社が1年半程前に日本での合弁会社として設立をした会社です。ここつい先日ですけども、今年の8月に三井住友フィナンシャルグループさんがSBI R3Japanに出資をして頂いて、現在ではこの3社による合弁という形で運営をし始めたという状況です。

R3は「Corda」というブロックチェーンのプラットフォームを開発している開発元です。

そしてSBI R3 Japanが提供しているサービスはCordaのサポートです。Cordaの本番利用できるエンタープライズバージョンに関してはサポートがつきますので、こちらをテクニカルサポートさせて頂いています。プロフェッショナルサービスでは、お客さまが実施されるプロジェクトのメンバーの一員としてサポートさせて頂きます。もしくはCordaトレーニングという形で、これからCordaを始めるお客さまに対してトレーニングを提供する。こういったことをやらせて頂いております。

Cordaについても簡単に説明させて頂きます。Cordaはアメリカの企業であるR3が開発して2016年にオープンソース化した企業向けのブロックチェーンです。

Cordaは企業間取引を想定していますので、CtoCの取引にはあまり使われていません。最大の特徴はプライバシーです。そしてミドルウェアとしての位置付けですので、アプリケーションとインフラを組み合わせてご利用を頂いております。中身はJavaで構成されていますので、非常にエンタープライズでの利用に向いているということでございます。

サプライチェーンとブロックチェーンを掛け合わせる意義

それでは本題に入っていきます。このグラフは、とあるレポートから出したものです。

ここの赤枠のところがサプライチェーンに関するユースケースです。この赤枠の所を全部足すと、なんと世界でブロックチェーンに関するプロジェクトの約半数がサプライチェーン関連のものをやっているのが分かります。

なぜサプライチェーン×ブロックチェーンが注目されているのかを「サプライチェーンで何がやりたいのか」、「ブロックチェーンでは何ができるか」この観点で考えていきたいと思います。

「サプライチェーンで何がやりたいのか」ですが、突き詰めていくと「いかに在庫を減らすか」そして「いかに販売機会のロスを減らすか」ここに尽きるのかなと思います。

ただ問題なのは「サプライチェーン」なので、自社だけですべてこれをコントロールすることはできません。他社のサプライヤーさんやバイヤーさんに依存する部分があるということです。

他社については、もちろん自社だけでは全てコントロールすることはできません。なので自社と他社をうまく連携してサプライヤー、バイヤー間の調整を取っていくのか。このあたりがこのテーマに繋がっていくのかなというところです。

一方で「ブロックチェーンで何ができるか」ですが、前提としてブロックチェーンというのは「データに原本性を与える」機能がございます。

ブロックチェーンを使う前と後ではどう変わっていくのか。

まずbeforeブロックチェーンの世界です。ABCという形でサプライチェーンを表現しています。現状はA社B社C社それぞれが別々のシステムを使って、自社のサプライチェーンに関する情報を管理しています。それぞれが別々のシステムを使っていますので当然データの共有はリアルタイムでは出来ませんし、別々の人が記帳をしていますのでデータに不整合が発生します。で、結果として情報が連携されずサイロ化してしまいます。

そしてafterブロックチェーンにはどういう世界が待っているかと言いますと、ひとつはまず共通なアプリケーションを使うことです。理想的には共通の標準化されたデータでアプリケーションを共通化することです。ただしデータベースを別々に持ちます。まさに分散型で情報を持つので、プライバシーの問題は発生しないようにします。この仕組みができると、データの共有がリアルタイムでサプライヤーとバイヤー間でできますし、当然同期もとれます。すなわちA社B社C社が必ず同じデータを見ることができます。こういったことがブロックチェーン技術で実現できてくるということです。

キークエスチョンの「なぜサプライチェーン×ブロックチェーンは注目されているか?」に戻ります。

サプライチェーンで何がやりたいかというと、適正在庫の維持と販売ロスの削減をしたい。なのでこれをする為に、他社と色んな意味でのデータ共有ができると嬉しいですよね。

ブロックチェーンが出来ることはデータに原本性を与え、データを分散型で別々に保存することができます。

その結果リアルタイムかつ安全にデータ共有ができる。なのでこの二つを掛け合わせる事によって、サプライチェーンを構成する企業間で、ブロックチェーンはリアルタイムかつ安全にデータを共有できる技術であり、だからサプライチェーンとブロックチェーンは相性が良く、世界中で約半数のブロックチェーンに関するユースケースがサプライチェーン関係のものになっているということです。

こういう考え方をすると「なぜサプライチェーン×ブロックチェーンは注目されているか?」について、なんとなく理解が深まってくるのではないかなと思っています。

サプライチェーン×ブロックチェーンにおける検討テーマには色々なテーマがございます。

たとえば商流にブロックチェーンを掛け合わせます。商流というのは発注書を書くとか請求書を送るとか。こういった商取引に関する流れの事を商流といいます。この商流にブロックチェーンを掛け合わせますと、端的に契約書類が企業間で安全に共有できます。なので、ここにかける労力が少なくなってきます。もしくは迅速に契約締結に結びつきます。

2つめは商流、物流×ブロックチェーンにさらに金融を掛け合わせることで、迅速なファイナンス機会の提供につながります。何故ならブロックチェーン上に記載されているデータはサプライヤー、バイヤー間でもちろん信頼が出来ます。つまりこのデータを信頼できるということは第三者である金融機関に共有しても、このデータは信用ができるということです。そうなると金融機関にとってはそこにファイナンスの提供機会が見つけられるということになります。

それから3つめの物流×ブロックチェーンです。これは端的にはトレーサビリティの話です。企業内でトレーサビリティをちゃんと確認していても、トレーサビリティに関する情報が企業を跨ぐことがあります。自分たちでコントロールできないデータが出てきてしまいます。なのでこのコントロールできないデータをを繋いでいく技術としてブロックチェーンを使うことで、サプライチェーン全体を通じてトレーサビリティを実現できるんじゃないかといったテーマもございます。

さらにこの物流×ブロックチェーンに保険の要素をかけることによって、物の流れをリアルタイムに記録して、そこにまつわる損害リスクも精緻に把握できるようになります。物流×ブロックチェーンに保険を提供することによって、例えばダイナミックプライシングで保険を提供する機会も出てくることもあるかと思います。

そして本日お話しするのは、商流、物流×ブロックチェーン×金融の分野です。色んな信用状取引のソリューションがあるなかで今日はオープンアカウントに特化した「Marco Polo」というソリューションについて三井住友銀行の金さんからご紹介頂きます。

この記事の著者・インタビューイ

あたらしい経済 編集部

「あたらしい経済」 はブロックチェーン、暗号通貨などweb3特化した、幻冬舎が運営する2018年創刊のメディアです。出版社だからこその取材力と編集クオリティで、ニュースやインタビュー・コラムなどのテキスト記事に加え、ポッドキャストやYouTube、イベント、書籍出版など様々な情報発信をしています。また企業向けにWeb3に関するコンサルティングや、社内研修、コンテンツ制作サポートなども提供。さらに企業向けコミュニティ「Web3 Business Hub」の運営(Kudasaiと共同運営)しています。

これから「あたらしい経済」時代を迎える すべての個人 に、新時代をサバイバルするための武器を提供する、全くあたらしいWEBメディア・プロジェクトです。

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