暗号資産(仮想通貨)取引で、知っておきたい「税金の基本」
ビットコインをはじめとする暗号資産(仮想通貨)は、2020年〜2021年の価格高騰や、DeFiやNFTといった新しい分野の大きな盛り上がりによって取引を行う投資家が年々増加しています。2021年から暗号資産取引を開始した投資家も多いのではないでしょうか。
中には数倍、数十倍…と大幅に値上がりした通貨もあり、大きな利益を得た方も少なくありません。しかし、嬉しい思いも束の間、利益が出たら忘れてはならないのが税金です。
この記事では、暗号資産取引を行う上で必ずおさえておきたい税金の基本を解説していきます。
暗号資産取引により所得が発生したら確定申告が必要
暗号資産取引を行うにあたり「儲けが出たら税金はかかるのか?」「確定申告は必要なのか?」といった疑問をお持ちになる方も多いのではないでしょうか?
結論から述べると、暗号資産取引により発生した所得には税金はかかります。そのため、取引で一定以上の利益が出た場合は確定申告を行い、納税する必要があります。
暗号資産による所得は雑所得。20万円が確定申告の検討ライン
暗号資産取引によって得た所得は、原則として雑所得に区分されます。
個人の税金をつかさどる所得税法では、所得は10種類に分類されています。「雑」という言葉からも想起されるように、雑所得とは他の9つの所得のいずれにも該当しない所得のことを指します。
給与所得のみを得ている一般的な会社員の場合、雑所得の金額が20万円を超えると確定申告が必要になります。暗号資産取引で利益が20万円を超える方は確定申告が必要になるかどうかチェックしましょう。
また、株式やFX投資と異なり、暗号資産取引は投資家自身が損益計算を実施しないと税務上いくらの所得があるかを把握することができません。また、計算された損益額が体感の損益額と大きく乖離することも少なくありません。確定申告義務の有無を判断するためにも、損益計算は毎年実施するようにしましょう。
雑所得の特徴
先述の通り、暗号資産取引による所得は原則として雑所得となります。
雑所得の特徴には、大きく「①総合課税で所得が大きくなるほど税率が高くなる」「②損益通算の禁止」「③損失の繰越控除が禁止」の3つが挙げられます。
①総合課税で所得が大きくなるほど税率が高くなる
まず、暗号資産の雑所得は、他の所得と合算した金額に課税される「総合課税」の対象です。例えば、会社員として年間500万円の給与所得があり、副業の暗号資産取引で年間100万円の所得がある場合、合計した600万円に対して税率がかけられます。
また、所得が大きくなるほど税率が高くなる累進課税で、所得に応じて5〜45%の税率がかかります(住民税も含めると最大で約55%)。
一方、株式投資やFX(外国為替取引)による所得は分離課税にあたるため、他の所得金額と合算せず、一律で約20%の税率が課せられます。
②損益通算の禁止
雑所得とその他の所得とで損益通算は禁止されています。例えば、暗号資産取引で損失が発生したとしても、給与所得や事業所得による利益と相殺することはできません。
一方、雑所得となる取引の枠内なら損益通算は可能です。例えば、ビットコインの売買で100万円の利益が発生していても、年内に他の暗号資産で100万円の損失が出た場合の雑所得は0円となります。同じように暗号資産取引で100万円の損失が発生しており、副業で行なっているアフィリエイトによる100万円の利益がある場合も、雑所得は0円となります。
③損失の繰越控除が禁止
暗号資産の取引で発生した損失は翌年以降への繰越控除ができません。
例えば、2020年に100万円の損失が発生し、2021年は110万円の利益が発生した場合に、2020年の損失を翌年に繰り越し、2021年の利益を「110-100万円=10万円」にすることはできません。
なお、上場株式やFXの売買によって生じた損失は3年間繰り越すことができます。
暗号資産取引で利益発生のタイミング
暗号資産にかかる税金について、確定申告義務の判定基準と雑所得の特徴について説明しましたが、「暗号資産取引ではどのタイミングで利益が発生するのか?」という疑問を持った方もいるのではないでしょうか?
暗号資産取引の利益が発生するタイミングを理解していないと、本来申告すべきところで申告漏れをする可能性があるため注意が必要です。ここからは、暗号資産取引における損益(利益または損失)が発生するタイミングについて説明していきます。
「暗号資産を日本円に変えて出金」ではない
暗号資産取引による損益認識のタイミングについてよくある誤解は、「取引所から暗号資産を出金し、日本円として銀行に振り込まれたとき」と考えるケースです。
取引所からの日本円の出金は損益額に影響せず、暗号資産の取引種別ごとに、別々のタイミングで損益が発生します。以降では、代表的な暗号資産取引の損益が発生するタイミングについて紹介します。
暗号資産の売却
まず、暗号資産を売却した場合、売却時点で損益が発生します。
たとえば、国内の取引所で100万円分のビットコインを購入したとしましょう。そして、価格が高騰し130万円になった時点で売却をした場合、「130万円(売却価格)-100万円(取得価格)」で30万円の利益となります。
暗号資産での決済
次に、暗号資産による商品またはサービス代金の支払いでも損益が発生します。「決済の時点で暗号資産を一度売却し、換金した日本円で購入する」と考えると理解がしやすいかもしれません。暗号資産で決済した時点の価格が購入時よりも上昇していれば、差額が利益となります。
暗号資産で決済可能な店舗やサービスは今後も増加すると考えられます。決済が所得発生のタイミングである点をおさえておきましょう。
暗号資産同士の交換
多くの方が見落としがちですが、暗号資産同士の交換も所得が発生するタイミングの一つです。
多くの海外取引所では日本円で暗号資産を購入することができないため、国内取引所で購入した暗号資産を海外取引所に送金し、その暗号資産で他の暗号資産を購入する方が多いと思います。この場合でも、暗号資産の決済と同様に、暗号資産を一度売却して別の暗号資産を購入したとして利益の計算をします。
そのため、暗号資産の交換時点での価格と購入時点での価格差が所得となります。
レンディング・マイニング等の報酬
前述した3つの取引は、いずれも暗号資産を手放すことで損益が発生する事例でしたが、暗号資産取引における損益認識のタイミングは、暗号資産を手放したときだけではありません。
レンディングやマイニング、ステーキング、エアドロップなどでは、報酬等として特定の通貨を受け取った時点で、時価がそのまま利益となります。さらに、受け取った通貨の価格が上昇し、その後売却する場合は再度利益が発生するため、注意が必要です。
例えばレンディングの報酬として10万円分のビットコインを受け取った場合は、その時点で10万円の利益が発生します。その後、ビットコインの価格が上昇し、15万円となったタイミングで売却した場合は「15万円(売却価格)ー10万円(取得価格)」で5万円の利益が発生します。
利益額の計算を行い確定申告が必要かどうか判断する
暗号資産取引では取引種別によって様々なタイミングで損益が発生します。それぞれのタイミングを理解した上で年間の所得額を計算し、20万円を超えているかどうかを確認する必要があります。
損益額の計算は複雑になることも多いですが、Aerial Partnersが提供するGtaxなどの損益計算ツールを利用することや、税理士への依頼などで比較的簡単に損益額を算出することが可能です。利益が出ているかもしれないと感じている方は、これらの方法で計算することを検討してみることをおすすめします。
暗号資産取引で一定以上の利益が出たら確定申告を
本記事では、暗号資産の税金について基本的な知識を紹介しました。
暗号資産取引にかかる税金は所得額によっては高くなる場合もありますが、税金を払いたくないからといって申告を怠ると、税務署から申告漏れを指摘され、加算税や延滞税などのペナルティを受けることがあります。そうならないためにも、取引で一定以上の利益がでたら、損益計算を行なった上で適切に確定申告を行いましょう。
次回は、暗号資産の確定申告の具体的な流れについて紹介していきます。
(つづく:次回は「暗号資産の確定申告の流れとポイントを解説」)
寄稿
この記事は株式会社Aerial Partners(エアリアル・パートナーズ)の寄稿記事です。暗号資産(仮想通貨)の損益計算ツール「Gtax」はこちらから↓
image/iStock:Photoplotnikov・kazuma-seki