オンラインサロンの産みの親が語るトークンエコノミーの可能性/田村健太郎

「mint」が自律分散していく過程 

―応援してくれる人に自分オリジナルのトークンが配れる「mint」が、どのように広がっていくイメージですか?

自分が気に入ったものって、人に紹介したくなるじゃないですか。もっと盛り上がってほしいし、売れてほしいと思うんですよね。例えばですが「mint」では、その人の熱い応援で新しいお客さんを連れてくることができたら、お礼でトークンがもらえたり、常連さんとして優遇してもらえたりする仕組みを作ることができます。

そういう仕組みの中でそのコミュニティのメンバーは、好きなものを応援しているチームの一員として活躍するような実感も持て、居場所を得ることもできるようになります。

もちろん現在のオンラインサロンでも、そのような状況はいろいろな仕組みで作れますが、そこにトークンのようなインセンティブがあることは、とても重要であり、そのコミュニティの活性化に繋がると思っています。この機能は前述のコミュニティ運営の課題であった、双方向のコミュニティをつくるのに大きく寄与できると思います。

トークンって、コミュニケーションの度合いや周囲へのいい影響など目に見えない価値の数値化だと思っています。そういった、あらゆる価値をトークンという形に変換して、プログラム管理して、数値で交換するということができれば、いい行動をして、正しく生きていれば、数値で評価されて、恩恵を受けることができます。そういう流れが必ず来ると思っています。

事業者とファンの間のコミュニケーションをトークン化しているのが僕らのサービスですし、それ以外に、まだトークン化されてない価値ってたくさんあると思います。

日本でトークンエコノミーは浸透するのか?

―日本では、まだトークンエコノミー化が進まない印象がすごくあるのですが、その発展の必要なことは何だと思われますか?

トークンエコノミーの活性化に必要なことですが、まず1つ目は、そのトークンをやりとりするコミュニティがどこを目指していくのか、このプロジェクトは、何のためにやっていて、どういう世界を実現するのかっていう「共通の目標」を持たせることだと思います。この辺りはオンラインサロンのコミュニティ運営と近い部分です。

2つ目は、そのコミュニティにおいて、評価される行動が何かっていうのが可視化されていること。つまりトークンの目的と何をすればトークンがもらえるのかというルール設計が必要です。

この2つがちゃんと設計できれば、それだけでトークンエコノミーは勝手に回ると思っています。例えば、事業を運営する時に、こういうことで困ってるんだよね、って言うだけではなかなか動き出しませんけど、共通の課題や報酬があれば、皆タスクをこなしながらゴールが見えてくると思うんです。

コミュニティの中で、タスク、価値、トークンのやりとりがぐるぐるシンプルに回っていくことが重要です。

生活必需品のような誰でも買えるものは、みんなが使えるコインが必要なので、それは従来通り国が保障する法定通貨の領域だと思います。一方、生活必需品以外に関しては、このようなトークンエコノミーで機能していく可能性が高いと思っています。

例えばオリジナルの体験などです。こういったものは、特定の人から購入することで意味合いができたりしますので、独自に貨幣のようなもの、つまりトークンが回りやすいのではないでしょうか。

ただトークンに関しては、新しい概念ですので、普及するのにたぶんもう少し時間がかかると思っています。おそらく自然にトークンエコノミーが私たちの生活に馴染んでくるのは、5年から10年ぐらいの時間がかかるのではないかと思っています。

だからこそ僕たちは「mint」というサービスを、まずは今コミュニティを運営している人や、これから運営しようとしている人たちが、いち早くそのトークンエコノミーを体験してもらえる「場」にしていきたいと思っています。

今は本当に個人力が発揮される時代になってきました。たくさんの個人事業者や小さな法人に対して、熱量が高いファンの方が応援する小さい経済圏が多数できつつあります。そういう方々がオーナーとファンというより、オーナーとサポーターという形で相互にやりとりをしながらコミュニティを形成していける、トークンエコノミーにはそういう流れを盛り上げられる可能性が秘められていると思っています。

 

自分だけのオリジナルトークン(ポイント)をファンに送れるアプリ・mint(ミント)
http://themint.jp/

 

images:iStock / arthobbit

この記事の著者・インタビューイ

田村健太郎

1986年、神奈川県出身。一橋大学在学中にモバキッズ社を創業。モバイル向け受託開発、各種コンテンツ配信サービスの開発、運営・制作などを経て、2012年にオンラインサロンのプラットフォーム「シナプス」を立ち上げる。2017年にシナプスをDMM.comに売却。
現在は応援してくれる人に 感謝の気持ちをポイントで伝える「mint」のアプリサービスを運営。

1986年、神奈川県出身。一橋大学在学中にモバキッズ社を創業。モバイル向け受託開発、各種コンテンツ配信サービスの開発、運営・制作などを経て、2012年にオンラインサロンのプラットフォーム「シナプス」を立ち上げる。2017年にシナプスをDMM.comに売却。
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