暗号資産マーケットレポート 9/22
9月20日のビットコイン(BTC)相場は-4,200ドル以上の(-8.98%)大幅な下落を見せました。価格は43,000ドルでクローズ。これは8月上旬以来の低水準です。
暗号資産だけではなく株式市場でもリスクオフの動きによる売り圧力が見られます。これは概ね中国の不動産大手、恒大集団(Evergrande)の経営悪化への懸念の高まりから来るものと見られています。一部では「中国版リーマン・ショック」が来ると警鐘を鳴らすメディアもあります。
なおこれについてはメディアが恣意的に市場の恐怖心を煽っているではないかという見解もあります。MEESARIのMira Christanto氏はTwitterで恒大集団と過去事例の規模を比較し、暗号資産市場への影響は少ないと説明しています。参考:Mira Christanto Twitter
また、米国時間21日にFOMC(連邦公開市場委員会)を控えており、政府の方針がはっきりとするまで買いが控えられているという見方も出来ます。FED(連邦準備制度)による緩和施策が引き続き取られるのか、注目が集まります。
マーケットデータ
次にマーケットデータを見ていきましょう。
今回の価格下落によるロスカット・ボリューム(Liquidation)は9月7日の下落時に比べ、3分1程度の数値となっています。これは短期トレーダーの仕込みが完了していない、もしくはレバレッジがまだ低水準にあると判断できます。
ファンディングレート(資金調達率)を見ても、8月末から9月上旬の高水準から通常水準に落ち着きを取り戻しており、7月末から続いた上昇サイクルが「一段落」したことが分かります。
こうした市場展開では、次のサポートラインがどこに設定されるのかを慎重に見極めなくてはいけません。ボラティリティは8月以降、高水準にあり、リスク管理がとても重要となります。
ブロックチェーンデータ
中期的な市場動向を判断するために、ブロックチェーンのデータを見てみましょう。
大きなトレンドを2つ紹介します。1つはCoinbaseなどの取引所に預けられているアセットの引き落としが、7月末以降続いているということ。これは主に売り圧力の中長期的な低下を意味します。
もう1つはビットコインネットワーク全体で、流動性の高いアドレスが減っているということです。上記のトレンド同様、こちらも中長期的な売り圧力の低下を意味します。
テクニカル指標
最後にテクニカル指標を確認していきます。
MA(単純移動平均線)は 200日移動平均線を明確に割り込んでおり、上昇トレンドは見えません。またRSI(相対力指数)は50を割り込んでおり、こちらもMA同様に売り優勢のゾーンに入っています。 MACD(移動平均収束拡散手法)では売りシグナルとクロスして以来、下落トレンドにあります。
テクニカル指標を見るだけでは楽観的になれない状況ですが、マーケット情報やブロックチェーンなどを分析すると中長期で市場構造が改善されつつあることが分かります。
マクロの経済環境と価格のサポートがどこで設定されるかがより、今後のトレンドが決まってくるでしょう。
Haegwan Kim /キム ヘガン(Coinbase Japanマーケティング部長 兼 事業戦略リード)
著者プロフィール
Haegwan Kim (キム ヘガン)
Coinbase Japan マーケティング部長 兼 事業戦略リード
2010年、英国Warwick大学に在学中、ウェブメディア「Law of Success 2.0」を創刊。ノーベル賞受賞者やForbes500企業CEO含む著名人へのインタビューを実施、世界的注目を集める。Square, Revolutなど国際的なFintech企業の日本市場戦略・マーケティングにおけるマネジメント職を経て、Coinbase Japanに2020年より参画。同社GTM・事業成長戦略、マーケティング、PRなどを統括。Bitcoin開発の世界的ニュースレターBitcoin Optechのアジア担当。
top image/iStock:SlavkoSereda