double jump. tokyoがスクウェア・エニックスとNFTコンテンツ開発で協業
ブロックチェーン技術を用いたアプリケーションやゲーム開発を行うdouble jump.tokyo株式会社と国内ゲーム開発販売大手である株式会社スクウェア・エニックスが、ブロックチェーン技術を活用したコンテンツ開発での協業を開始することを3月17日発表した。
両社は今回の協業により、NFT(ノンファンジブルトークン:代替不可能トークン)を活用することでコンテンツの価値最大化につながるような事業の開発を模索していくとのことだ。そして協業の第一弾としてのスクウェア・エニックスが提供する「ミリオンアーサー」に関するIPを活用したNFTデジタルシールの販売とシステム開発をdouble jump.tokyoが行うとのことだ。
double jump.tokyo株式会社 CEO 上野広伸氏インタビュー
今回スクウェア・エニックスとNFTコンテンツ開発で提携を発表したdouble jump.tokyoのCEO上野広 氏に「あたらしい経済」は緊急取材を実施。提携の狙い、ブロックチェーンゲームやNFTが切り開く未来について語っていただいた。
-スクウェア・エニックスさんとの提携ですが、まず率直に今回の提携のねらいは何でしょうか?
上野広伸氏(以下:上野):今回の狙いは、日本の会社としてブロックチェーンに携わっている以上、日本にあるゲームやアニメや漫画といった作品をNFTを通して世界に届けたいという思いがありました。スクウェア・エニックスさんとは長い検討を経て今回提携に至りましたが、本件の実現は日本のブロックチェーンゲーム界にとって大きい第一歩になると考えております。
-具体的にスクウェア・エニックスさんとdouble jump.tokyoは何をやっていくのでしょうか?
上野:基本的には、スクウェア・エニックスさんがNFTを通してコンテンツに新たな価値や面白さを付加する試みをしていただくことを軸に、私たちは今までブロックチェーンゲームを運用してきた技術や運用のノウハウでサポートさせていただく形となります。具体的にNFTをどう扱っていくかは、スクウェア・エニックスさんと様々な観点で検討しています。
-今回のスクウェア・エニックスさんとの提携でミリオンアーサーのIPを活用したNFTデジタルシールの販売とシステム開発を行っていくとのことですが、具体的にどのようなことができるのでしょうか?
上野:私たちが今回出させて頂くNFTはデジタルシールという表現をしています。そこに対する思いとしては、僕の小学生時代に流行ったビックリマンシールのようなイメージがあります。みんなで駄菓子屋を探し回って買って、見せあいっこして、交換してみたいなそういう楽しい思い出。そういうコンテキスト(文脈)をデジタル上でも表現したいなと思っています。
-スクウェア・エニックスさんはブロックチェーンゲームというのをどのように捉えているのでしょうか?
上野:スクウェア・エニックスさんが関心を持っているのは、まずはブロックチェーンゲームというよりもNFTに関してです。NFTはブロックチェーン上で表現されるデジタルアイテムで、それは所有もできるし、譲渡や取引もできるようなもの。このNFTを今後どのように活用していけばゲームとしても新たな体験を生み出せるかについては、次のフェーズになっていくと考えています。
-過去に一般のゲーム開発企業はブロックチェーンゲームに対して法規制が定まらない中、参入に二の足を踏んでいるように感じました。現状ではそういった企業はブロックチェーンゲームについてどのように思っているのでしょうか?
上野:ブロックチェーンゲームの市場規模がどれぐらいになるかという様々な予測がありますが、それなりの規模感で海外を中心に市場が拡大していくことはもう事実です。そして様々な法規制が定まってない中でも別に何もできないというわけではありません。法規制に対しどのように取り組んでいくのか、どのようにに取り組んでいけば自分たちのコンテンツをもっと世界中の人に伝えられるのか? 楽しさを提供できるか? という観点で、徐々に各社が動きはじめている段階です。
今世界で非常に注目のワードになっているNFTですが、そこに載せるデジタルアイテムにも、ナラティブというか、みんなが価値があると思えるものを載せていかないとなかなか発展しないと思っています。そういう意味では日本のIP作品というのは世界から認められているものです。ここから日本が巻き返していく、NFTの世界にも日本の多くの企業の人たちが飛び込んでいくんじゃないかと思っています。
-日本発のIPやコンテンツには現状どんな課題が存在しているとお考えでしょうか?
上野:NFTのリーガル面での取り扱いは定まっています。そういう面での課題はクリアですが、有名な日本発のIPやコンテンツをNFTとして出した際にどのような反応が起きるかは実際にやってみないとノウハウ化しにくいです。今回の提携でもまずはそこに踏み出してノウハウを貯め、次のステップに向かっていければ良いなと考えています。
-NFTといえば、先日デジタルアーティストのビープル(Beeple)のデジタル作品が約75億円で落札されましたが、どのようにお考えでしょうか?
上野:そうですね。市場がというよりもデジタルなアイテムもリアルなアイテムと同等の価値が認められたという意味で、凄まじいターニングポイントだと感じています。
アートはそもそもナラティブというかコンテキストの要素も含めた言葉でもあると考えています。NFTという概念的なものと、アートという概念的なものは結構マッチしやすい。アート以外のNFTについても、今回の件を起点にして様々なデジタルアイテムとしてのNFTが発展していくものと考えています。
-ブロックチェーンゲームの未来はどうなるのが理想的なのでしょうか?
上野:私たちdouble jump.tokyoで理想として思い描く世界は、スティーブン・スピルバーグ監督の映画『レディ・プレイヤー1』の世界です。ゲームの中でみんなが手に入れた装備品や気に入ったキャラクターを、自分が行きたい世界の中に投影して、そこで楽しむというような世界観をNFTを通して作り上げていければ面白いと感じています。
Beepleの一件で、デジタルアイテムがリアルと同じような価値を持つことが認知されたのが転換点だとお話しましたが、個人的には、近い将来デジタル世界の方がリアル世界よりも巨大な市場になるのは確実です。巨大な市場というか、巨大な世界になります。そうなれば、よりNFTの価値というのは広く認められていくでしょう。
-反対にデジタルな世界がもの凄く発展していって、もし私たちの世界がデジタル主体になっていったらリアルの世界はどうなるかというのは考えたりしますか?
上野:そういう意味ではデジタルの中でさまざまな世界が作られていくと思いますが、リアルの世界はその中の一つになっていくでしょうね。今でも各種SNSのアカウントと実際のリアルの自分というのが別人格を演じてる人もいると思うんですよ。VRやARも発展してくると、リアルとデジタルに本当に境目が無くなっていく。そうなると、リアルの世界はさまざまな世界がある中の一つ、という認識になっていくという感じがします。
今回の提携も本当にまだ第一歩ですが、こういった世界になるのは意外に早いという感触がありますね。もう本当に数年で変わると思います。
取材/編集:大津賀新也・竹田匡宏/設楽悠介
撮影:大津賀新也
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