イーサリアム(ETH)は、インフレ? デフレ?
今や時価総額で2位のイーサリアムですが、その価格の上昇にはイーサリアムの手数料の一部をバーンすることでデフレを引き起こす仕組みが良い役割を担っています。しかし最近ではこの仕組みが上手く機能せずインフレになることもしばしば。今回はこのトピックについてまとめます。
イーサリアムは発行される枚数が多く、供給量が増えていくインフレのモデルであったことから、ビットコインと比べ値上がりしづらいという課題を抱えていると言われていましたました。
そこで導入されたのが、手数料構造を変えるEIP-1559です。これは2021年8月に「London」アップグレードで実装されました。
このアップグレードでイーサリアムは、利用時に使用するガス代の仕組みを変更し、基本手数料であるbase feeをバーン(焼却)するようになりました。
これによりバーン量が多い時にはETHの枚数が減少していくという仕組みを採用することになりました。そのためETHの価格はそれ以前に比べて上昇しやすくなり、イーサリアムの需要を判断する指標として、ETHのインフレ率を見るというユーザーも出現しました。
なお、その後PoSに移行し、発行枚数がさらに減ったことで安定してデフレモデルを維持するエコシステムになりました。
そんなイーサリアムですが、3月に完了した大型アップグレード「Dencun」で実装されたガス代を大きく引き下げる仕組みにより少し状況が変わりました。ガス効率が良く、高速なメモリ領域を使ったトランザクションがサポートされたのです。
このトランザクションはガス効率を大幅に引き上げる代わりに、バーンされるbase feeを予想以上に減少させてしまいました。そのため、バーンされるETHの量が発行される枚数より少なくなってしまい、緩やかなインフレ状態になってしまったのです。
デフレモデルであることが価格上昇に対して良い影響を与えていることが分かっていたため、ETHの価格下落を心配する意見がSNSで出現しました。
しかし実際には供給インフレ率はそれほど高くなく、実際は年間0.5%ほどであり、大きな問題にはなりませんでした。
これはEIP-1559で実装されたバーンメカニズムのおかげであり、実装以前の供給インフレ率が約1.1%だったことを考えるとインフレを大きく軽減できていると言えます。そういった背景もあり、実際にはそれが原因で大きな価格下落を見せることはありませんでした。
またイーサリアムの利用者が増えれば再びデフレに移行する仕組みであり、一時的なインフレモデルへの移行であることも大きな価格下落を引き起こさなかった要因と言えるでしょう。しかし今後もこのETHのインフレ率は価格に影響を与える重要な指標として見られることに変わりはありません。
ガス効率の向上よりユーザビリティを良くしていくことと同時に、適切にトークンの価格を上昇させていくことが求められているという視点でブロックチェーンを見てみると、また違った発見があるかもしれません。是非参考にしてみてください!
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