レシカとジャパンインポートシステム(JIS)がブロックチェーンを活用した蒸留酒の樽管理サービス「UniCask」発表
株式会社レシカと株式会社ジャパンインポートシステムがブロックチェーン技術を活用して、蒸留酒の樽をスマホ一つで簡単に売買・保有・管理できるサービス「UniCask」を1月7日発表した。
「UniCask」は2021年春にリリースの予定とのことで、リリース時点から日本の蒸留所が作るウイスキーの樽を取り扱い、今後のサービスの拡大とともに日本各地の蒸留所と提携をするとのことだ。
リリースによると世界でのウイスキー年間売上が2023年には10兆円を超える見込みである蒸留酒市場の成長とは裏腹に、蒸留酒を樽で保管したまま(年代物として価値を上昇させる状態)での売買や保有などは現在知り合い同士や限られた地域などの小さなコミュニティのみでしか行われておらず、一般のコレクターや愛飲家では非常に難しく実質的に不可能であるとのこと。また既存の書類によるアナログな管理方法では蒸留所内での保管の管理や樽の所有者を確認するための処理が煩雑であるため、製造した蒸留酒の樽の保有者や売買の履歴を管理することが難しく、日本の蒸留所の樽を海外のコレクターや愛飲家が購入することもほぼ行われていないという。
両社はこれらの課題解決にあたり「UniCask」の開発を行ったとのこと。「UniCask」を活用することで、煩雑だった樽の所有権の証明及び移転登記やオンラインでの売買履歴の管理などを容易に行えるとのことだ。
なおレシカとジャパンインポートシステム(JIS)は、「UniCask」の運営のため合同で株式会社UniCaskを設立している。
株式会社レシカ 代表取締役社長 クリス・ダイ氏コメント
以下2021.1.8 13:30追記
あたらしい経済編集部は株式会社レシカの代表取締役社長であるクリス・ダイ(Chris Dai)氏に「UniCask」ついて取材を行った。
―株式会社レシカ様は医療×ブロックチェーンの取り組みが強いように思っておりましたが、どういった経緯で「蒸留酒」へのお取り組みをされるのでしょうか?
レシカは今までブロックチェーンを使ったPoCのプロジェクトが多かったのですが、ブロックチェーン技術だけではビジネスの成長が難しいと分かり、一緒に長期的な事業として運営していける別業界のパートナーを探しておりました。
2019年にJISの田中社長と出会い、樽で取引するウィスキーのニッチなマーケットが海外に存在することを知って、まさにこれはブロックチェーンを使うべきユースケースだと思いました。JISの田中社長の言葉を借りると「ブロックチェーンで(ウィスキーの)時間の価値を記録している」ということです。
世の中はDXですべてをデジタル化する方向性に向かっていますが、一方で「UniCask」はデジタル技術であるブロックチェーンをお酒というアナログな商品に使うことにより、もっと多くの方にアナログの良さを体験できるように目指しています。
レシカの技術でバーチャルとリアルを融合し、アナログでローカルな酒類産業をデジタルでグローバルな舞台に押し上げ、地方経済を活性化させることがこのコロナ禍だからこそ必要なのではないかと我々は考えています。
―「UniCask」にはブロックチェーン基盤として何が利用される予定でしょうか?また、そのブロックチェーンは今までの医療分野で利用されていたものとの関連性はあるのでしょうか?
「UniCask」や医療分野のシステムを含むレシカが開発するすべてのアプリケーションは、自社開発のミドルウェアでサポートしています。ブロックチェーン層では、「UniCask」はイーサリアムのパブリックブロックチェーンを使っていますが、ほかのアプリケーションはそれぞれのユースケースのニーズに合わせて異なるブロックチェーンも組み合わせて使っています。
編集部のコメント
株式会社レシカは分散型台帳DLTのシステム開発やビジネスコンサルティングを行っている企業です。同社は以前に千葉大医学部附属病院とブロックチェーンを活用した医療データ共有プラットフォームの開発を行ったり、株式会社エムネスとインバウンド向け遠隔画像診断支援クラウドサービスとクラウド電子カルテをブロックチェーンを利用して開発をしています。
また株式会社ジャパンインポートシステムは専門性の高いファインスピリッツと高級ワインの輸入・卸売を行っている企業です。
リリースによると近年、熟成に長い時間を要する蒸留酒の価値は右肩上がりで、多くの年代物の蒸留酒が高額で売買されているとのことです。実際に2020年には日本の著名なウイスキーである「山崎 55年」がオークションにて8,500万円で落札されたり、蒸留酒を専門に取り扱う中国のメーカー「茅台(マオタイ)」 の株式時価総額が日本で最大の時価総額を誇るトヨタ自動車株式会社を超えるなど、蒸留酒やそれを取り扱う企業に非常に多くの注目が集まっているとのことです。
コメント:大津賀新也(あたらしい経済)
(images:iStock/Igor-Korchak・Lazy_Bear)