伊藤忠とマーキュリアの共同ファンドがティム・ドレイパー氏主導の投資案件である不動産取引プラットフォーム提供の米プロピーへ出資

伊藤忠とマーキュリアの共同ファンドがティム・ドレイパー氏主導の投資案件である不動産取引プラットフォーム提供の米プロピーへ出資

株式会社マーキュリアインベストメントが、同社の戦略株主である伊藤忠商事株式会社と共同で組成したファンド「マーキュリア・ビズテック投資事業有限責任組合(BizTechファンド)」にて、不動産取引をブロックチェーン上で完結させるための取引プラットフォームを提供する米プロピー社(Propy, inc)に出資を⾏ったことを11月16日発表した。なお出資額については非公表となっている。

BizTechファンドは不動産・物流業界の変革に挑戦する企業の支援を目的に2019年7月に設立された企業である。組成発表時のリリースによると同ファンドは総額30~50億円のファンドサイズを目指し、主にミドルステージ以降のスタートアップ、新規事業を立ち上げる既存事業会社のカーブアウト、外資企業による日本進出時の日本法人、国内企業の海外進出時の現地法人等を投資対象に想定しているとのこと。

またプロピー社は米国を中心にオンライン不動産取引の取引管理ツールを提供する不動産テック企業だ。リリースによるとプロピーが提供する不動産取引のブロックチェーンオンラインプラットフォームは、近年インターネット詐欺(cyber fraud)被害に悩まされている米国の不動産取引において、安全な購入体験を提供するとともに取引1件につき10時間のペーパーワーク削減に貢献しているとのことだ。またこのプラットフォームは米国のサウス・バーリントン市との、ブロックチェーンを活用した不動産登記の実証実験も完了させているとのこと。また日経新聞の報道によるとプロピーはこのプラットフォームを使って、米国などで2020年は既に420億円超の不動産取引を行ったとのこと。

マーキュリアによると今回のプロピー社の資金調達は、ビットコイン投資家として有名なティム・ドレイパー(Tim Draper)氏が率いるドレイパーアソシエイツ(Draper Associates)がリード・インベスターを務めており、先に出資している全米不動産協会とあわせプロピー社への不動産業界のブロックチェーン実装に向けた手厚い支援が期待されるとのこと。

またプロピー社は日本展開においては、既に不動産取引の外部業務委託のBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)とエスクロー事業を行う株式会社エスクロー・エージェント・ジャパンがプロピーと協業を開始しているが、マーキュリアは、これに加えて同社及びBizTechファンドのLP(有限責任組合員:Limited Partner)投資家ネットワークを活用し、より強固な支援体制を築いていくとのこと。

マーキュリアは今後も不動産・物流業界において、次世代技術やユニークなアイデア・ビジネスモデルによる業界革新を目指す企業に対する成長投資を行い、ハンズオンの支援で企業価値の最大化を図るとともに、業界の活性化や生産性向上に貢献していくとのことだ。

編集部のコメント

プレスリリースによるとプロピー社の不動産取引プラットフォームを活用することで、不動産仲介企業やエージェントと呼ばれる個人仲介事業者は、不動産取引における当事者のみがアクセスできるクラウドの取引空間上で、取引にかかる全てのプロセスを完結できるとのことです。また部外者は取引空間に介入できないため、電子送金詐欺等の不正被害を防ぐことが可能であるとのことです。さらにこのプラットフォームでは、取引のプロセス上必要となる当事者間の書類確認や署名はブロックチェーン上で行われるため、改ざん耐性の高い状態で保存・管理されるとのことです。

昨年より開始している株式会社エスクロー・エージェント・ジャパン(EAJ)とプロピー社の協業では、国際的なプラットフォーム構築を目的とし日本国内における「曜日/時間を問わず法務局への登記申請にかかるタイムラグのリスク」を補完し、「不動産取引決済の24時間365日化」の実現を目指しています。またプロピー社の不動産取引プラットフォームの日本版ローカライズへの支援とEAJのもつ不動産取引保証等のトランザクションマネジメントサービスのAPI連携を通じて、日本における事業展開に必要な機能を双方で共同開発し、日本におけるサービス開始を早期に目指すとのことでした。

今回のプロピー社への出資により同社の日本展開が加速するものと思われます。

コメント:大津賀新也(あたらしい経済)

(images:iStock/null)

この記事の著者・インタビューイ

あたらしい経済 編集部

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