G7財務大臣・中央銀行総裁会議がFacebookらのLibra計画に対し適正な規制導入がなされるまでは反対する姿勢を表明
主要先進7ヶ国(G7)が財務大臣・中央銀行総裁会議にて、Facebookが発行準備を進めているステーブルコインLibraに対し適正な規制が導入されるまでは計画を反対すると表明したことをロイター通信が10月13日報じた。
ロイター通信によるとこの共同声明の草案には「デジタル決済が金融サービスへのアクセスを改善し非効率性とコストを削減する可能性がある」としているが、一方で「デジタル決済は金融の安定性、消費者保護、プライバシー、課税、サイバーセキュリティを損なうことがないように適切に監視および規制をする必要がある」と記載されているとのことだ。
G7は「適切な規制がなければ暗号資産がマネーロンダリング、テロ資金供与に利用され、市場の安全性やガバナンス、法的確実性を損なう可能性がある」とし「関連する法律、規制、監視要件に適切に対処できるまでは、いかなるグローバルステーブルコイン・プロジェクトの運用は開始してはならないと主張する」と表明をしているとのことだ。
またこの声明の草案には、新型コロナウィルス感染症の影響でオンラインによる経済活動にシフトしたために増加したランサムウェア攻撃についての懸念も記載されており「これらの攻撃は、暗号資産での支払いを伴うものであり、我々の安全と繁栄に繋がる本質的な機能を危険に晒すものである。この脅威と戦うために、個別ではなく、集団で取り組むことを表明する」と述べられているとのことだ。
編集部のコメント
金融安定理事会(FSB)のレポートによるとグローバルステーブルコインについての必要な要件として、
・包括的に規制および監督されていること
・リスクに応じて規制されていること
・監督のギャップを防ぐために、法域の調整を通じて国際的に規制されていること
・包括的で説明責任を明確にするガバナンスの枠組みを有していること
・準備金、オペレーショナルレジリエンス、サイバーセキュリティ、AML/CFTのための効果的なリスク管理を有していること
・データの保護、管理、保管のための堅牢なシステムを有していること
・リカバリープランを有していること
・安定化メカニズムを含む機能について透明性のある情報を提供していること
・償還権の執行可能性について法的に明確にしていること
・営業前に法域のすべての規制、監督、および監督の要件を満たしていること
以上が挙げられています。
G7がグローバルステーブルコインとしてLibraを警戒する理由は、Libraを「継続的」に統制するための規制が存在していないことが最も大きな理由だと考えられます。Libraを運営するLibra協会も規制面に関する課題は重々理解していると思われ、このことは投資銀行のHSBCの元最高法務責任者であるスチュアート・リービー(Stuart Levey)氏をLIbra協会の初代CEOに任命していることからも伺えます。その他にも既存の金融機関に属していた規制設計のスペシャリストをLibra協会は採用しています。Libraがローンチするまでに予想よりも時間がかかるとは思いますが、着実に前進しているのではないかと思われます。
なお今回行われた財務大臣・中央銀行総裁会議では、中央銀行デジタル通貨(CBDC)についての共同声明もまとめられており、法の順守や透明性、健全な経済統治がCBDCについて必要な3つの要素であることを明示したとのことです。 各社報道によるとこの共同声明は、中国が今月12日から実証実験を始めた「デジタル人民元」の取引データが、中銀当局に筒抜けで国家体制の維持や国民の行動把握に利用される恐れがあるとして、「デジタル人民元」を中国が恣意的な利用を行うことへの懸念に対し牽制をする構えであるとのことです。
麻生太郎財務相は13日夜に行われた記者会見にて「デジタル人民元」について「中国の透明性は大丈夫かという話だ。どなたでも条件を満たしていない限りはだめだと理解してほしい」と指摘したということです。
編集:大津賀新也(あたらしい経済)
コメント:竹田匡宏(あたらしい経済)
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