NTTデータがブロックチェーンを活用した新型コロナのPCR検査結果認証プロセスの効率化を図る実証実験開始
株式会社NTTデータと株式会社LSIメディエンスが新型コロナウイルス感染症におけるPCR検査結果の電子証明書発行サービス提供に向けた実証実験を9月1日から9月18日の間で実施することを明らかにした。
この実証ではPCR検査依頼から結果報告書発行までの一連の業務について、業務フローとそれを支えるICTシステムの有用性を評価・検証するとのこと。そして今後の利用拡大を見込み、広く導入するための倫理的な課題や社会的な課題の抽出を行うとのことだ。このサービス利用企業側の評価として、NTTグループの従業員(組織管理者、人事部門、健康管理部門等)の協力のもと、検査実施に対する職場の事情・考え方をヒアリングし、検討を深めていくとのこと。
実証実験の目的は新型コロナウイルス感染症の影響で、企業の従業員の安心・安全の確保や企業活動の活性化を目的にPCR検査の需要が高まってきている一方、PCR検査は企業内の自社診療所・健康管理センター・トラベルクリニック等に限られていて紙での証明書発行に時間を要している現状があり、それを改善することだ。
ブロックチェーン技術は、受診者基本情報登録、問診情報登録検査依頼、検査結果情報登録・報告、証明書発行、証明書有効確認に利用されるとのこと。ブロックチェーン技術を利用する理由は、検体採取から証明書発行までの時間短縮・証明書の信頼性担保(偽造や改ざんの検知、有効確認)を行うためとのことだ。
NTTデータとLSIメディエンスは2020年度末までのサービス提供開始を目指し、ウィズコロナ時代における日本企業の発展に貢献していくとのことだ。
追記:9月9日午前8時
あたらしい経済編集部は、株式会社NTTデータ第二公共事業本部ヘルスケア事業部健康ソリューション担当池孝弘課長と西村俊之課長代理へ取材を行った。
NTTデータ第二公共事業本部ヘルスケア事業部健康ソリューション担当池孝弘課長と西村俊之課長代理へ取材
ーなぜブロックチェーンを活用しようと思ったのでしょうか。
海外渡航を行うに辺り、陰性証明書が渡航先の国により様式や内容が異なり、かつ紙での発行が一般的との認識です。実際に改ざんされた事象があったかは把握できていませんが、紙の証明書の場合、氏名や有効期限(検査実施日)等を書き換えて、偽造する、改ざんすることは容易です。
企業が陰性証明書等を活用するにあたり、偽造や改ざんが容易なままでは、その有効性を疑われることになります。紙の証明書と電子証明書の耐改ざん性を確保するためにはブロックチェーン技術の活用が有益であると考えています。紙の証明書の偽造・改ざんを防止する事は難しい為、紙の証明書とデジタル技術の証明書を突き合わせる事によって確認出来るようにする。
その為、企業等からのPCR検査の依頼から陰性証明書の発行、活用までの一連のデータをブロックチェーン技術を活用して管理します。証明書の発行に必要な複数の関係者を通じた必要なデータが時系列に並び、タイムスタンプの付与、ハッシュ値でつなぎ合わされることで高い改竄耐性を実現出来ると考えています。
ー医療データについてはセキュリティーについての課題等あると思いますが、どのようにカバーしていくのでしょうか。
医療データのセキュリティーついて弊社でも課題があると認識しており、NTTデータではヘルスケア分野での様々なシステム提供を行っている中で医療機関と臨床検査会社をセキュアに結ぶネットワークの「L-AXeS(エルアクセス)」(参考:http://www.l-axes.info/)を提供しています。
L-AXeSは、厚生労働省のガイドラインに定められる高いセキュリティレベルを備えたネットワークサービスとなっており、2015年の提供以来、2000以上の医療機関、約30社の臨床検査会社等に利用いただいています。
診療報酬請求等に使われているのと同じ仕組みのセキュアな通信サービスであるL-AXeSと医療情報を扱うことができるクラウドサービスを利用した、ブロックチェーン技術は、高い可用性と高い改竄耐性を実現する技術であり、これらを総合して高度なセキュリティにて提供したいと考えています。
編集:竹田匡宏(あたらしい経済編集部)
(images:iStock/inkoly)