日本銀行が「中銀デジタル通貨が現金同等の機能を持つための技術的課題」と題するレポートを公開
日本銀行が「中銀デジタル通貨が現金同等の機能を持つための技術的課題」と題するレポートを公開した。
レポートで中央銀行デジタル通貨(CBDC)が現金同等の機能を持つためには「ユニバーサルアクセス(Universal access)」と「強靭性(Resilience)」という2つの特性をどのように備えさせるかを議論・実証することが極めて重要だと記載されている。
ユニバーサルアクセスとは誰もがいつでも何処でも、安全で確実に利⽤できる決済⼿段であること、強靭性とは通信・電源の途絶への耐性も備えられていることだと、レポートでは記載されている。
そして中銀デジタル通貨(CBDC)は管理主体、情報の記録方法、情報の管理場所の3つの項目によってそれぞれ特性があるとのこと。管理主体は中央管理型、分散管理型の2パターン。情報の記録方法は口座型、トークン型の2パターン。情報の管理場所はリモート型、ローカル型に分けられるとのこと。
レポートではオフライン決済について詳しく議論され、記載されている印象をがある。なおオフライン決済の具体例としてケニアのパイロットプログラム「DigiTally」の考察も行われている。
オフライン決済について議論されていた理由は、既存の民間セクターの決済システムがオンライン決済のみに対応されているケースが多いからだ。オフライン環境下では台帳管理者が取引を確認できないため、ユーザーの端末を用いて決済ファイナリティをいかに安全、確実、速やかに確保するか、その仕組みが重要になるとのことだ。
そしてオフライン決済に必要な機能として、⾦銭的価値の安全な保蔵、ユーザー間の情報伝達、保有者と端末の認証、決済指⽰、電⼒の確保の5つがレポートに上げられている。ただCBDC のオフライン決済の実⽤化に当たっては、実装⾯における技術的な課題だけではなく、セキュリティ確保のためのセーフガードなどCBDC の設計・ 運⽤上の課題、さらにはプライバシーの確保やAML/CFT(マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策)への対応といったコンプライ アンス上の課題も重要になるとのこと。
今後⽇本銀⾏としては実証実験等を通して、技術⾯からみた実現可能性(フィージビリティ)を確認していくとともに、海外中銀や内外の関係諸機関と連携をとりながら、CBDCに関して検討を進めていく⽅針とのことだ。
編集部のコメント
「中銀デジタル通貨が現金同等の機能を持つための技術的課題」と題するレポートは網羅的で、具体的に深く考察されていて素晴らしいものでした。日本銀行による中央銀行デジタル通貨(CBDC)の実現可能性の高さを感じされる内容でした。
コメント:竹田匡宏(あたらしい経済編集部)
(images:iStock/stockdevil・antoniokhr・PrettyVectors)