HSBCの政治的役割は香港を飛び越えて人民元の国際化にも拡大か

HSBCの政治的役割は香港を飛び越えて人民元の国際化にも拡大か

イギリスの金融グループHSBCの香港への政治的役割は、香港を飛び越えて人民元の国際化にも拡大してきているという内容の記事をLedger Insightsが公開した。

記事によると、現在香港ではHSBCのアジア太平洋地域のCEOピーター・ウォン氏が中国の香港向け国家安全保障法の草案を支持したことが批判の的となっているとのこと。

HSBCは香港ドルの発券銀行であり、中国のデジタル人民元プロジェクトに携わっている側面がある。

HSBCのデジタル人民元への動きを振り返ると、2019年9月にHSBC香港がブロックチェーン技術を活用したトレードファイナンスのパイロットプロジェクトを発表した際に、ブロックチェーンを使った最初の人民元建て信用状取引であることを誇らしげにしていたとのこと。

Ledger Insightsでは、中国が人民元を国際化しドルの優位性を低下させるという、より広範な戦略の一環として、広東省・香港・マカオのグレーターベイエリア(GBA)における人民元建て貿易取引の割合を増やすことを目標としていると伝えられている。

実際に、HSBCの香港・マカオのグローバル貿易・債権金融部門の責任者であるJeanny Ip(ジニー・イップ)氏は 「ブロックチェーンを活用した画期的な取引は、広東省・香港・マカオのグレーターベイエリア(GBA)のビジネス成長の起爆剤としてのブロックチェーンを推進し、貿易通貨としての人民元を強化するものです。HSBCはまた人民元ビジネスの国際的なリーディングバンクとして認識されています。HSBCは50以上の市場で人民元取引を行っており、6大陸で人民元取引を決済した最初の金融機関です」 と2019年のHSBCのプレスリリースにコメントを記載している。

編集部のコメント

香港で大規模デモが行われている要因となっている香港国家安全法に関して、説明をします。

現在香港は中国の特別行政区という立場です。そして香港の憲法に相当する香港基本法では、香港国家安全法の導入や適用に関する解釈権を中国の全人代の常務委員会に委ねられています。2003年に香港国家安全法の立法化に関する大規模デモが現在と同様に行われました。

香港国家安全法には香港にとっての中央政府である中国に対する反逆・国家分裂・反乱の扇動・中央政府の転覆・国家機密の漏えいにつながる行為の禁止に加え、中国大陸で禁じられている組織への規制などが記載されています。

つまり香港は国家として言論、経済の自由が失われることとなります。 今回の論点は、香港の政治的、経済的基盤である香港ドルの発券銀行であるHSBCが中国政府を支持していることにあります。

HSBCがデジタル人民元に関わっていることは確かですが、香港のブロックチェーン関連プロジェクトに関わっているかどうかは定かではありません。

香港関連のステーブルコインのニュースとして、5月21日にセコイア・チャイナ(Sequoia China)の創業者でマネージングパートナーのニール・シェン(Neil Shen)氏が、中国共産党が主催する中国人民政治協商会議で、香港が独自のクロスボーダー・ステーブルコインを発行する提案を行ったことが明らかにされています。

香港独自のステーブルコインとデジタル人民元のどちらの通貨が、香港で主権を握るかによって香港の行く末は大きく変わると考えられます。

コメント:竹田匡宏(あたらしい経済編集部)

(images:iStock/stockdevil・PrettyVectors)

この記事の著者・インタビューイ

あたらしい経済 編集部

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