bitFlyer Blockchainがブロックチェーン投票サービス「bVote」を開発し、6月26日の株主総会で活用予定
株式会社bitFlyer Blockchainが、日本政府が普及を目指すマイナンバーカード認証を活用した「なりすまし防止機能付き」のブロックチェーン投票サービス「bVote(ビヴォウト)」を開発したと6月10日発表。
なお6 月 26 日(金)に開催する株式会社 bitFlyer Holdingsの臨時株主総会にて「bVote」を利用したバーチャル株主総会を開催するとのこと。
「bVote」の開発背景として、ハイブリッド出席型バーチャル株主総会の需要が高まりつつも、セキュリティ要件が未成熟であったことが挙げられている。そこでbitFlyer Blockchainは「bVote」を開発し、セキュリティを担保した投票システムや本人確認ができるシステムの導入を実現できるようにしたとのこと。
具体的にハイブリッド出席型バーチャル株主総会は、bitFlyer Blockchainが開発したマイナンバー認証を活用したブロックチェーンIDサービス「bPassport」によって投票者のなりすましを防止する機能と「bPassport」上で機能する「bVote」により表や集計結果の改ざんを防止する機能を組み合わせることによって実現できるとのことだ。
あたらしい経済編集部は、bitFlyer Blockchain 代表取締役の加納裕三氏へと質問をした。
ー他の技術との相違点を含め、ブロックチェーンを使うことによるハイブリッド出席型バーチャル株主総会実現への利点は何でしょうか?
下記の理由から、ブロックチェーンを使うとより公正な株主総会の開催を実現できると考えています。
株主総会決議で求められている主な要件は以下の2つです。
①正規の権利者が議決権を行使していること
②投票及び集計結果に不正がないこと
これがバーチャル株主総会では、通常の委任状がない状態であるので代表印と同じ効果を求める必要があります。
①に関しては、以下の2つの不正を検討する必要があります。
X:委任状が改ざんされている(偽造)
Y:委任状は改ざんされていないが、知らない第三者が署名した
ブロックチェーンは当事者の間では内容が見られますし、変更履歴も改ざん不可能な形で保存されます。
従来型の電子投票システムは、権利者が「この委任状は改ざんされている」と主張した場合(主張X)に、そうでないことを証明することが大変です。
ブロックチェーンであれば改竄不可能であるので主張Xは成立しません。
主張Yについてですが、ブロックチェーンであれば過去の委任状行使の状況が書き込まれています。
毎回同じ電子署名を使っているのに、今回だけ第三者が署名したとなりそれは成り立ちません。
主張Yが成立するためには過去すべての委任状において、知らない第三者が同じ電子署名で投票行為を行っている状況でなければならず、ブロックチェーンでは成立しません。
②(投票及び集計結果に不正がないこと)の集計結果の透明性についても、ブロックチェーンに投票結果を記録することで、事後に不正の疑義があった場合に監査をすることが容易になります。
バーチャルで株主総会を行う場合に実開催より厳格な「不正防止」や「なりすまし防止策」が必要です。
ブロックチェーンを使用しない場合は、第三者に不正が指摘され株主総会の無効請求が提出された場合において、①ーX、①ーY及び②について証明することが非常に困難です。
ブロックチェーン投票サービスのbVoteはマイナンバーと連携してさらに本人確認を厳格化していますが、厳格な本人確認がない状態でもより公正な株主総会を開催するためには、データが改竄不可能なブロックチェーン技術は必須だと考えています。
ーbitFlyer Blockchainとして、自社の事業戦略を考慮しながら、なぜハイブリッド出席型バーチャル株主総会サービスを始めようと考えたのでしょうか?
今回発表したブロックチェーン投票サービス「bVote」は、昨年10月に構想を発表して当社が独自開発を続けているブロックチェーンIDサービス「bPassport」を基盤とした1つの機能です。
皆さんは銀行や病院など様々な場所で何百回と名前や住所を書いて本人確認をしていると思います。まず、この重複した無駄な作業を無くしたいと思っています。
また、SNSではなりすましが横行しており、自分自身が本人であることを証明することも難しい現状があります。(先日、私のInstagramなりすましアカウントが存在したため削除要求をしましたが、私自身が本人であることの証明に大変苦労したところです)
「bPassport」の構想は、例えば銀行などの事業者にKYC(本人確認)してもらった実績を、自分のブロックチェーンIDに紐づけて、長期間にわたって本人であることの信頼を蓄積・証明するものです。これにより、本人であることを自分自身で簡単に証明できるようになります。
さらに、本人性と本人データの真正性を基本的に(秘密鍵が盗まれるとNG)保証できるので、過去の自身に紐づく履歴も捨てデータではなくなり利活用ができようになります。
このような「bPassport」の構想は、リモート投票を行うハイブリッド出席型バーチャル株主総会にも適用できると考え、誕生したのが「bVote」です。
根底には「bPassport」があるので、今後は株主総会における投票のみではなく、様々な会議体での投票や電子署名、自治体などでの各種選挙などブロックチェーンIDを基盤とした利便性のある意見集約サービスに適用していきたいと考えています。
編集部のコメント
昨日、コインチェック社がSaaS型の株主総会業務支援事業の検討を開始したことをプレスリリースで発表したことに続いてのニュースです。暗号資産(仮想通貨)取引所事業を持つ企業が株主総会業務支援のプロダクトを開発するということは、現事業とのシナジー効果が大きいからではないでしょうか。
資本家、投資家が集まる場所である株主総会を支援することで、投資家のニーズをより具体的に掴むことができ、新たな金融商品の開発やUXの改善ができるようになることを目指しているのかもしれません。
コメント:竹田匡宏(あたらしい経済編集部)
(images:iStock /maystra・antoniokhr)