(中谷一馬議員へ取材)立憲民主党青年局が政府のデジタル改革推進へ提言した背景とは

立憲民主党青年局が新型コロナウイルスのさらなる感染拡大を防ぐことを最重要目的として、国会、行政そして政党にかかるデジタル改革の推進についての提言をした。

福山哲郎幹事長への提案書の手交には、幹事長部局から幹事長代理の大串博志衆議院議員が同席し、青年局からは青年局長の中谷一馬衆議院議員に加え、落合貴之、篠原豪、道下大樹各衆議院議員、塩村あやか、須藤元気、田島麻衣子各参議院議員、西沢圭太東京都議会議員も同行した。

そして4月27日15時に提言内容に関して、Zoomで記者向けに説明が行われた。

提言内容の中には「日用品や食料品に関する物流情報データの見える化」などサプライチェーン領域の改善案、「日本銀行のデジタル通貨発行に関する研究検討の加速」などの案が含まれていた。

日用品や食料品に関する物流情報データの見える化の背景

提言書には、台湾ではデジタル担当のオードリー・タン大臣のリーダーシップによりマスク不足の混乱を回避するための在庫マップを公開し、市民が安心してマスクを確保している現状が世界的に話題になった。と記載されている。

日本においては緊急事態宣言を受けて日用品や食料品などが不足するのではとの情報が広がり、国民の混乱を招いた。今後そういったことを避けるために日用品や食料品などの流通状況データが客観的に可視化さる情報発信の仕組みを実装することを国に提案したとのことだ。

現在、 新型コロナウイルスによるサプライチェーンの崩壊が問題視されてる。その背景には既存のサプライチェーンに可視性や透明性が不足していたため、代替サプライヤーを準備できないことがある。この問題に関しては世界経済フォーラムの45日のレポートでも共有されていた内容だ。

「あたらしい経済」編集部は立憲民主党中谷一馬議員へ「具体的にどのよう見える化した物流情報データシステムの開発を提案したのか」について取材した。

質問に対して中谷氏は以下のようにコメントをくれた。

「台湾のオードリ・タン氏は物流データの全てではなく、国民が不安を抱くと考えられる物資(マスクなど)に関するデータを公開する動きを取りました。そして政府が本来やるべきことは、担当大臣がリーダーシップをとって必要なデータを企業間で共有する動きを取りまとめ、加速させることです。

つまり、政府にはサプライチェーンで企業が持つデータを標準化していただくための動きが求められていると考えています。

その動きとはブロックチェーンのように初期段階で扱うのが難しい技術を導入するというよりも、企業が共有しやすいデータをリアルタイムで共有していただき、それをアプリケーションへ落とし込んでいくというシンプルかつ実効性の高い仕組みの流れを生み出すことです。その次の段階としてブロックチェーンやスマートコントラクトが非常に有用だと考えています」

「日本銀行のデジタル通貨発行に関する研究検討の加速」の背景

また提言書には、世界各国の中央銀行が発行するデジタル通貨(CBDC)に関する議論が進んでいること、そして新型コロナウイルスの感染拡大を受けて現金やクレジットカードなど頻繁に触れる物体を通じた感染拡大に対する懸念を踏まえてCBDCの議論が加速していることも記載されている。

そして立憲民主党青年局は、日本においても日本銀行が発行する日本銀行券、及び造幣局が製造し政府が発行する貨幣 (硬貨)といった法定通貨をデジタル通貨へと段階的に切り替えることは、決済手段の 利用管理に伴うコストの削減、ユーザー利便性の向上、金融包摂の進展、金融政策の有効性確保、シニョレッジ(通貨発行益)減少防止にも繋がり得ると考えるので、発行に向けた更なる研究・検討を進めてもらうことを提案した。

このような背景を踏まえて、「あたらしい経済」編集部は中谷氏へ「立憲民主党青年局として日本の中央銀行デジタル通貨(CBDC)をどのように捉えられているのでしょうか」と質問をした。

その質問に対し中谷氏はこのようにコメントをくれた。

提言書でも記載したように、FacebookのLibra、中国のデジタル人民元(DCEP)、スウェーデンe-kronaなどの構想が台頭したことによって、国際的にもCBDCの議論が加速しています。

さらに現金やクレジットカードによる新型コロナウイルスへの感染リスクも議論されているので、この議論は加速する一方だと思います。実際に日本銀行も欧州中央銀行(ECB)など6つの中央銀行と具体的な研究を始めています。

そのような背景を鑑みて、立憲民主党青年局としても20年後から30年後の未来を考えたときに、むしろ紙のお札や硬貨を使わない生活が主流になっていることを想定し、ムーンショット型で未来から逆算した政策を打ち出していくことが必要だと考えました。

デジタル経済時代におけるプラットフォームをGAFAGoogleAmazonFacebookApple)やBATHBaiduAlibabaTencentHuawei)などに席巻され、我が国の企業が存在感を示せない中で、フィンテック時代を牽引すべく、近い将来にもし日本銀行がCBDCを発行して流通させることができたならば、多額のコストと手間がかかっていた従来の送金や決済がより簡単かつ安価になります。

この進化は、世界中で貧困などが原因で銀行等にて提供されている基本的な金融サービスを現在も受けることのできていない約17億人にも人々にも恩恵を行き渡らせる金融包摂(Financial Inclusion」の促進に繋がります。

その結果、消費者にも多大なメリットを与え、経済活動に大きなインパクトを与えることが期待されており、カナダ中央銀行職員がCBDCの導入を行った場合に、カナダでは消費が0.64%、米国では1.6%それぞれ最大で上昇するという趣旨の論文を発表し、経済的利益に対する考察がされています。

さらに新型コロナウイルスにより様々な問題が浮き彫りになっている今だからこそ、大きな変革を起こせるチャンスだと思っています。ボトムアップ、トップダウンいずれの観点からもCBDCの議論、研究、実証、実装と段階的にフェーズを前に進めていければと考えています」とコメントしてくれた。

政府・政治のデジタル改革推進に必要なこと

新型コロナウイルスは、私たちに改めて「政府とは何か、政治とは何か」ということに向き合う機会を与えている。そして今後政府や政治が発展していくためには、テクノロジーの活用は不可避であり、そのテクノロジーの活用にはさらなる官民双方の協力が必要だ。

今回の立憲民主党青年局の提案のようなアクションを今後も「あたらしい経済」は応援していきたい。

立憲民主党提言書:国会、行政、政党におけるデジタル改革の推進に関する提言書

この記事の著者・インタビューイ

竹田匡宏

兵庫県西宮市出身、早稲田大学人間科学部卒業。 「あたらしい経済」の編集者・記者。

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