世界経済フォーラム(WEF)とデロイトがブロックチェーンの相互運用性に関するホワイトペーパーを発表
世界経済フォーラム(WEF)が、デロイトとの共同研究で執筆したブロックチェーンの相互運用性に関するホワイトペーパー「Inclusive Deployment of Blockchain for Supply Chains: Part 6 – A Framework for Blockchain Interoperability」を発表した。
このホワイトペーパーでは、ブロックチェーンの相互運用性について「2つの異なるブロックチェーンネットワークがお互いに接続すること」としている。一般的な相互運用性の説明ではAPIを使って実現させるシステム連携とされているが、ブロックチェーンの場合はそれが最適ではないとのこと。
さらに、ホワイトペーパーではブロックチェーンの相互運用性には2つの意味があると説明されている。1つは共通のデジタル資産が交換できる設計であること。その背景には、決済リスクを消失させることが挙げられている。2つ目は共通のデータが交換できる設計であること。これは典型的にはサプライチェーンや保険領域で活かされると説明されている。
ホワイトペーパーには相互運用性に関して、ビジネス、プラットフォーム、インフラストラクチャの3つの側面における課題が記載されている。
ビジネス側面での課題は、ブロックチェーンのガバナンスと2つのネットワーク間の信頼、データの標準化に関するもの。
プラットフォームの側面での課題は、ブロックチェーンプロトコル、コンセンサスメカニズム、スマートコントラクト言語、ユーザーがどのように認可され、許可されるかに関するもの。
インフラストラクチャの側面での課題は、ハイブリッドクラウドでのサーバーのホスティング、管理されたブロックチェーン、相互運用性を阻害する可能性のある独自のコンポーネントの発見方法に関するもの 。
最後にこのホワイトペーパーでは、相互運用性を実装するさまざまなプロジェクトが探索されているがそのほとんどはパブリックブロックチェーンのためであり、コンソーシアムブロックチェーンのためのプロジェクトは不足していることを言及されている。
ちなみに、WEFとデロイトがコンソーシアム型のブロックチェーンで一定の評価をしているものが、RippleのオープンソースプロジェクトHyperledger Quilt、Cordaとなっている。
編集部のコメント
WEFは、ブロックチェーンに関するリサーチが盛んです。これまでの論文には、ブロックチェーンの価値を測定する方法、プライベートとパブリックのブロックチェーンの選択方法、UAEの豊富な経験に基づいたブロックチェーン展開の課題を探ることなどが存在しています。
そして、WEFはブロックチェーンイニシアチブも立ち上げています。そのイニシアチブは2種類あって、サプライチェーンを対象としたブロックチェーンイニシアチブとサステナビリティのためのトレーサビリティ・プラットフォームに関するイニシアチブです。
世界横断の組織であるWEFがブロックチェーンを推進していく意義は非常に大きいと、あたらしい経済編集部は考えています。WEFが共有する論文や記事を元に、各国そして企業がブロックチェーンをうまく実装していく世の中になることを期待したいです。
コメント:竹田匡宏(あたらしい経済編集部)
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