EY Japanが日本酒などの偽造品流通を防ぐため「Sake Blockchain」を開発
EY Japanが、日本酒と果物に関するブロックチェーントレーサビリティーシステム「Sake Blockchain」を開発し、アジア展開の計画を立てていることが、Nikkei ASIAN REVIEWの報道によって明らかになった。
Sake Blockchainは、日本酒と果物の原産地と配達記録を含む情報を海外の消費者と共有する目的があるとのこと。特に日本酒に関して、共有されるデータには、成分、醸造場所に関する情報、温度記録を含む流通経路に沿った品質管理の詳細まで含まれる。
消費者は、日本酒のデータを日本酒のボトルにあるQRコードをスマートフォンでスキャンすることで確認することができる。さらにQRコードには、その日本酒とペアリングすべき食品の情報も示される。
EY Advisory&Consultingのパートナーである梶浦英明氏は「日本酒の生産と起源のストーリーを海外消費者に伝えることができれば、偽製品と区別するのに役立つと思います。さらに、日本酒に関しては海外で間違った情報が流通してしまっている現状があります。それは、日本酒を良好な状態に保つのに最適な温度は5度と言われているにも関わらず、日本酒が海外に流通する場合、ほとんどのレストラン、小売業者は、日本酒の温度管理など、取扱方法を、情報不足のため知らない現状なのです」とコメントしている。
白鶴酒造の関係者は「日本酒の偽造品は高級品と安価なお酒の両方で入手可能となっています。さらに日本酒のボトルのデザインをよく見ると、それらは本当に緻密に作られています。だから、現状として、顧客からの問い合わせなしに、日本酒の偽造品を発見することが難しい状態なのです」とコメントしている。
EY Japanは、コロナウイルスの影響が収まったあと、Sake Blockchainを香港やシンガポールを起点に展開していくとのことだ。
編集部のコメント
日本からの日本酒の輸出は、グローバルで日本料理に対する関心が高まった影響で、増加しています。財務省のデータによると、2019年に日本酒の輸出額は前年度5.3%増加の234億円になっています。監査法人が食料品のトレーサビリティーシステムを開発し、運用するケースが増えていると考えらえます。例えば、オーストラリア政府と監査法人KPMGがワインの偽造品の流通を防ぐため、KPMG Originというシステムを開発し、運用しています。
Nikkei ASIAN REVIEWでは、トレーサビリティーブロックチェーンが偽造品を防ぐ目的だけでなく、中小企業である日本酒製造企業などのマーケティング戦略の一助になるとも記載しています。なぜなら、中小企業が今までコストをかけられなかった1人の消費者の情報を取得でき、マーケティングキャンペーンや製造量などの調整を行うことが可能になるからです。
このように、偽造品を防ぐことができ、マーケティングの一助になるということで、このブロックチェーンは、中小企業をエンパワーメントする上で、重要な存在となると、あたらしい経済編集部は考えています。
コメント:竹田匡宏(あたらしい経済編集部)
イメージ(Arkadivna)