ヴィタリックが「d/acc」についてブログを更新
イーサリアム(Ethereum)の共同創業者ヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)氏によって昨年提唱された「d/acc」について、1年経った現状を踏まえたブログを同氏が1月5日に投稿した。このブログでは、「d/acc」の背景や進捗、そして技術革新における責任の在り方についての考察が詳述されている。
「d/acc」は、シリコンバレーで流行した一種のミームである「e/acc」を元にした、防御的かつ分散型の技術革新の加速を目指す考え方である。「e/acc」とは、テクノロジーの進歩を迅速化し、利益を最大化することに主眼を置いたアプローチであり、ベンチャーキャピタルやテクノロジー業界でSNSのアカウント名の末尾につけるなどのミームとして広まった。
一方で「d/acc」は、分散型システムやリスク管理に重点を置き、進歩の持続可能性や安定性を重視している。例えば、「e/acc」が集中管理型のAIや効率を優先したデータ活用を推進するのに対し、「d/acc」は分散型の運営を推進しており、自律的なエージェントとしてではなく人間が利用する「ツールとしてのAI」の開発を求めている。
ヴィタリックは、以前から技術進歩を防御的に進めることで、人類の繁栄と技術の発展を共存させ、紛争を防ぐべきだと述べていた。「d/acc」はこの考え方を体現したものであり、今回投稿されたブログでは、具体例としてコロナウイルスにおける分散型ID(DID)の応用が紹介されている。これらの技術が「d/acc」の枠組みで進化することで、権力集中やシステムの脆弱性を回避できる可能性が示されている。
現在、ブロックチェーン業界では「AI Agent(AIエージェント)」の構築や利用が広がりを見せている。「AI Agent」とは、特定のタスクの自動化や効率化を目指してAIを組み込んだサービスやツールを指す。具体例として、AIが自律的に暗号資産(仮想通貨)のトレードを行うトレーディングボット、分散型金融(DeFi)プラットフォームでの担保管理ツール、さらには資産運用ポートフォリオを提案するアドバイザリーツールなどがある。これらのサービスは、AIを用いた暗号資産価格予測やベンチャーキャピタル業務、資産運用の代行にまで広がり、多岐にわたる活用が進んでいる。
しかし、「AI Agent」に対する規制は現在のところ整備されておらず、企業や個人が行えば違法となる行為を実行する「AI Agent」の出現も問題視されている。例えば、無許可での金融取引や顧客データの不適切な利用など、AIが自律的に違法行為を行うリスクが懸念されている。
ヴィタリックのブログでは、こうした課題を踏まえ、AIによる行動の「責任」について議論が展開されている。なお同ブログでは、AIの行動における責任の所在について次のような具体的なテーマが取り上げられている。「1.AIが違法行為を行った場合、責任はデプロイした開発者やその利用者が負うべきか、AI自体が独立したエンティティとして責任を負うべきか」、「2.AIの暴走に対応するための一時的な緊急停止装置の実装」。
d/acc: one year laterhttps://t.co/pM3eVtJ1BU
— vitalik.eth (@VitalikButerin) January 5, 2025
参考:ヴィタリックブログ
画像:PIXTA