ヴィタリック、イーサリアム最後のチェックポイント「ザ・スプラージ」解説

ヴィタリックが「ザ・スプラージ」を解説

イーサリアム(Ethereum)の共同創業者ヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)氏が、イーサリアムの未来のアップグレードである「ザ・スプラージ(The Splurge)」の計画について自身のブログで解説した。この解説は10月29日に投稿された「Possible futures of the Ethereum protocol, part 6: The Splurge」にてされている。

「ザ・スプラージ」は、イーサリアムのプロトコルの様々な改善点を統合し、EVMの最適化、アカウント管理の改善、手数料システムの効率化、そして先進的な暗号技術の導入を目指している。

現在イーサリアムが採用しているイーサリアム仮想マシン(EVM)は静的解析が困難で、効率的な実装や形式検証、拡張が難しい状況にある。またアカウント管理システムも改善の余地があり、より安全で使いやすいシステムが求められている。

「ザ・スプラージ」ではEVMの改善を含めた全体的なイーサリアムの細かな修正を行うことが目標となっている。

具体的には、「ザ・スプラージ」が完了すると、以下の改善が実現される。

  • EVMの性能と安定性が向上し、より効率的な処理が可能に
  • すべてのユーザーがより安全で便利なアカウント管理機能を利用可能に
  • トランザクション手数料の最適化によりスケーラビリティが向上
  • 新しい暗号技術の導入により長期的なセキュリティが強化

これらの実装には、EOF(EVM Object Format)の導入、アカウントアブストラクションの実装、EIP-1559の改善、VDF(Verifiable Delay Functions)の導入など、複数の技術的なアップグレードによって実現されるという。また、今後訪れることが予想されている量子コンピューターによる暗号の突破に耐性のある新たな暗号システムの導入も「ザ・スプラージ」に含まれる大きな更新のひとつである。

ただし、これらの実装には技術的な課題があり、特に新しい暗号技術の導入については、十分な研究と検証が必要とされる。また、後方互換性の維持やセキュリティリスクの管理なども重要な課題となっている。

なおEOFはEVMで扱うコードの構造化のフォーマットを変更して最適化するアップグレードで、VDFはランダム性に依存したコードの最適化のためにランダム性の高い関数を実装してセキュリティを向上するアップグレードのこと。

イーサリアムは、今後行う大きなアップグレードおよび目標をいくつかの項目に分けている。具体的には、マージ(Merge)、サージ(Surge)、スカージ(Scourge)、ヴァージ(Verge)、パージ(Purge)、スプラージ(Splurge)の計6つあり、それぞれがイーサリアムを完璧な状態にするためのテーマを持っている。

ヴィタリックは、これらのアップグレードについての解説を行う記事を自身のブログに投稿することを続けている。分散化されたコミュニティで開発が進められているものの、現在でも同氏の意見に大きな影響を受ける状況は続いているため、ブログの内容には大きな注目が集まっている。

参考:ヴィタリックブログ
画像:大津賀新也(あたらしい経済)

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この記事の著者・インタビューイ

田村聖次

和歌山大学システム工学部所属 格闘技やオーケストラ、茶道など幅広い趣味を持つ。 SNSでは、チェコ人という名義で、ブロックチェーンエンジニアや、マーケターとしても活動している。「あたらしい経済」の外部記者として記事の執筆も。