債権者への資金返済のため
破産した暗号資産(仮想通貨)取引所FTXが、債権者への資金返済のため、自社で保有するワールドコイン(Worldcoin:WLD)を競売にかけるようだ。関係者の話として、メディア「ザ・ブロック(The Block)」が10月2日報じた。
再開を断念したFTXは、2022年11月に破産申請した際に暗号資産預金をロックされた顧客への全額返済のため、資産の整理に注力している最中だ。
報道によれば購入希望者は、10月2日の20時(東部標準時:日本時間の10月3日10時)までにWLDトークンの入札行う必要があり、入札が受理された場合は10月3日(東部標準時)までに通知されるという。
FTXは合計で2,230万WLD(約55億円相当)を保有しており、同暗号資産は大幅に割り引かれて売却されるようだ。
なおWLDの割引率は、現在約1.69ドルで取引されているWLDの現物市場価格から40%から75%になる見込みと情報筋は述べている。
WLDのロック解除は2028年まで毎日行われる。具体的には、2024年12月1日から2026年7月24日までは毎日20,539WLD(約500万円相当)がロック解除され、2026年7月25日から2028年7月24日までは毎日13,689WLD(約325万円相当)がロック解除されるとのことだ。
また一部関係者からはWLDのロックアップ期間の長さについて懸念の声も上がっている。
フィギュアマーケッツ(Figure Markets)の共同創業者兼CEOのマイク・キャグニー(Mike Cagney)氏は、WLDトークンオークションに参加するためのファンドを設立する可能性を示唆していたが、トークンの浮動株数が限られていることや、FTXからの期待値に対する懸念から、今回WLDトークンの入札を見送ったという。
なお同社は4月、FTXによる75億ドル(約2,880億円)相当のSOLトークンオークションに参加し、市場価格より安価でSOLを購入した実績がある。
FTXとその関連会社であるアラメダリサーチ(Alameda Research)は、大量のSOLを保有していたことでも知られており、ソラナ関連のスタートアップにも多額の投資を行っていた。
また9月には6,260万MPLXトークン(35億円相当)がパンテラキャピタル(Pantera Capital)やパラファイキャピタル(ParaFi Capital)などに売却されている。
ワールドコインとは
「ワールドコイン」は、AIチャットボットサービス「ChatGPT」を提供するオープンエーアイ(OpenAI)のCEOであるサム・アルトマン(Sam Altman)氏によって共同設立された、ツール・フォー・ヒューマニティ(Tools For Humanity:TFH)によって展開されているプロジェクト。WLDは同プロジェクトの独自トークンだ。
ワールドコインは「オーブ(Orb)」と呼ばれるボール状のデバイスで虹彩をスキャンし、各人それぞれの虹彩の特徴をデジタルコードに変換することで個人を識別する「World ID」を発行する。これによりワールドコインは世界的なIDシステムの構築を目指している。
参考:The Block
画像:Reuters