NY連銀がトルネードキャッシュ制裁は有効とのレポート発表、イーサリアムの弱点を指摘も

NY連銀が報告書を公開

ニューヨーク連邦準備銀行が、暗号資産(仮想通貨)ミキシングサービス「トルネードキャッシュ(Tornado Cash)」への制裁が与える影響に関する報告書を公開した。

トルネードキャッシュは2022年8月、資金洗浄に関与したとして米国財務省の外国資産管理室(OFAC)より制裁対象に加えられている。

報告書ではまず、制裁発表前後のトルネードキャッシュのコントラクトの市場反応と利用状況が検証された。

報告書によれば、制裁後にトルネードキャッシュの利用は大幅に減少したが、徐々に回復。トルネードキャッシュの認知価値と実際の使用量の両方が制裁後においても著しく低下したレベルにとどまっており、トルネードキャッシュのプロトコル価値と使用量に「永続的な影響がある」ことを示していると述べられた。

報告書によるとイーサリアムの大口ビルダーは制裁を守っていたが、その程度はやや低かったという。なおプロポーザーは、制裁に従わないブロックを選別することができたがほとんど変化がなかったと報告書は指摘している。ちなみにイーサリアムにおいて、ビルダーはブロックに含める取引を決める機能で、プロポーザーはブロックを実際に生成する機能だ。

また「トルネード・キャッシュの総額と取引量は、測定されたサンプル期間において急激に減少」しており、ミキサーを通じて送金された資金を含むブロックのほとんどを、たった1つの事業体が担っていたと指摘した。

なお報告書は、今回の観察がイーサリアムそのものに関する事実をあらわにしたと指摘。

「私たちの結果は、イーサリアムの検閲耐性が脆弱であることを示唆している。イーサリアムの様々な設計上の選択は、分散化を促進するために選択されたが、私たちは、決済チェーンに沿ってかなりのレベルの集中を発見し、トルネードキャッシュ取引の受け入れを促進するために少数のアクターに高く依存していることを認める」と報告書で述べられている。

トルネードキャッシュについて

「トルネードキャッシュ」は、複数ユーザーの暗号資産の取引をミキシングすることで、その取引履歴を匿名化できるサービスだ。

その特性をサイバー犯罪に関与した資産のロンダリングに利用されていることが問題視されていた。昨年3月には、「ラザルス」が「トルネードキャッシュ」を利用してサイバー攻撃で得た資産をミキシングし、当局の追跡を困難にしていた。

これらの事実から2022年8月にOFACは「財産および財産上の利益がブロックされている人物である北朝鮮政府に対して、実質的に支援を提供した」として「トルネードキャッシュ」を制裁対象に加えた。財務省が技術全体を制裁対象としたことにより、米国内のユーザーはトルネードキャッシュを利用できなくなり、資産が凍結された状態となった。

この制裁について、暗号資産取引所コインベース(Coinbase)社員2人を含む6人のトルネードキャッシュユーザーが米国財務省を相手とする訴訟を起こし、同年9月にはコインベースが、米国財務省に対するトルネードキャッシュ制裁についての訴訟を支援することを表明した。

トルネードキャッシュ共同創業者兼開発者のアレクセイ・ペルツェフ(Alexey Pertsev)氏には5月、暗号資産ミキシングサービスを通じて22億ドルのマネーロンダリングを行ったとし、懲役5年4カ月の実刑判決が言い渡されている。

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参考:報告書
images:iStocks/mouu007

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この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

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