バハマが「中銀デジタル通貨」提供の銀行を規制へ、普及促進で

バハマが「サンドダラー」提供の銀行を規制へ

世界初の中央銀行デジタル通貨(CBDC)を発行したバハマが現在、電子マネーの普及を促進するために、商業銀行に電子マネーのアクセスを義務付ける規制を準備していると同国の中央銀行総裁がロイターへ語った。

2020年にデジタル通貨「サンドダラー」を発行したバハマは、CBDCの先駆者としての役割を担っており、そのためカリブ海諸国での同国の取り組みは、現在、自国通貨のデジタル版を検討している欧州から中国まで130カ国以上から注目されている。

約4年前に「サンドダラー」の発行を監督したカリブ諸島の中央銀行総裁ジョン・ロール(John Rolle)氏は、「サンドダラー」の普及がまだ限られているため、アメがムチに変わり、商業銀行は事実上、それを配布するよう強制する規制について知らされていると述べた。

「我々は、機関にそのことを伝え始めている」と、ロール氏はロンドン訪問中にロイター通信に語り、2年以内に規則が施行されるはずだと語った。

またロール氏は「私たちは、すべての商業銀行が最終的にその分野に参入し、中央銀行のデジタル通貨へのアクセスを顧客に提供することが求められるようになると予測している」とも述べた。

CBDCは中央銀行と商業銀行の間で論争の的となっている。銀行ロビー団体は、この通貨は事実上、国民に中央銀行の銀行口座を提供するため、預金流出を助長する可能性があると警告している。

欧州中央銀行は、ユーロ圏の小売業者や銀行が将来の「デジタルユーロ」を受け入れ、流通させることを義務付けると表明している。しかし、それはまだ何年も先のことであり、バハマが再び最初の事例になることを意味する。

CBDCには2つの形態があり、一般市民が使用できる「サンドダラー」の「リテール型」と、金融機関のみが使用する「ホールセール型」がある。

商業銀行に「サンドダラー」を利用できるように命じるには、各銀行のITシステムに大幅な変更を加える必要があるが、バハマ中央銀行はCBDCの普及とモバイル決済の一般的な普及を促進するために不可欠だと考えている。

中央銀行のデータによると、「サンドダラー」は現在バハマで流通している通貨の1%未満に過ぎず、昨年8月までの8カ月間でウォレットへの入金は1200万ドルに減少した(前年同期は4980万ドル)。

ナイジェリアやジャマイカなど、CBDCを導入した他の国でも、利用は最小限にとどまっている。

問題の一部は、CBDCが既存の決済方法に比べて明らかな利点をまだ提供していないことであり、一方で、一部の国では政府の監視が強化される可能性があるという懸念が残っていることだと、CBDCウォッチャーは言う。

ロール氏は、商業銀行が「サンドダラー」をシステムに組み込むことを義務づけることは、利用促進には役立つだろうが、より多くの商店、レストラン、その他の事業者が「サンドダラー」を決済手段として受け入れるようにすることが、大きな課題であると認めた。

バハマは、インドが「eルピー」の試験運用を行っていた時のように、CBDCを利用するための金銭的なインセンティブを提供する可能性は低いとロール氏は述べた。また、イスラエルが提唱しているような、「サンドダラー」のウォレットへの金利も提供しないだろう。

関連ニュース

※この記事は「あたらしい経済」がロイターからライセンスを受けて編集加筆したものです。
Bahamas to regulate banks to offer cbank digital currency
翻訳:大津賀新也(あたらしい経済)
imagesReuters

関連するキーワード

この記事の著者・インタビューイ

大津賀新也

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者 ブロックチェーンに興味を持ったことから、業界未経験ながらも全くの異業種から幻冬舎へ2019年より転職。あたらしい経済編集部では記事執筆の他、音声収録・写真撮影も担当。