バイデン大統領、SECの暗号資産会計ルール「SAB121」無効化法案に拒否権発動

FIT21法案成立の望みは上院に託される

米大統領ジョー・バイデン(Joe Biden)氏が、米証券取引委員会(SEC)の暗号資産(仮想通貨)保管に関する方針「SAB 121」を覆す新法案に拒否権を5月31日発動した。これを受け、議員らの間では超党派の法案「21世紀のためのFIT法(the Financial Innovation and Technology for the 21st Century Act:FIT21)」の成立を求める声が上がっている。

「SAB 121」は2022年3月にSECが発表した指針だ。このガイドラインは、暗号資産のカストディを行う機関に対し、暗号資産の保有額を貸借対照表上の負債として記録するよう求めている。

「FIT21」は、SECと商品先物取引委員会(CFTC)がデジタル資産を規制する際の役割を明確にする法案。昨年7月に委員会を通過しており、今年5月22日に下院で可決された。なお同法案はこの後上院に回され、そこで可決されれば、ホワイトハウスに送られることになる。

ホワイトハウスの拒否権発動を受け、親クリプト派で知られる米下院金融サービス委員会のパトリック・マクヘンリー(Patrick McHenry)氏は、「大統領の拒否権は、デジタル資産市場における消費者の保護を弱め、数十年にわたる保管規則を根底から覆すものだ。議会の超党派のコンセンサスを拒否することで、政権は失敗したアプローチを倍加させようとしている。FIT21に対する上院の行動は、これまで以上に急務だ」と声明を出している。

また、シンシア・ルミス(Cynthia Lummis)上院議員は「私は、この政権が法律を回避しようとするのを黙って見ているつもりはない」とし、「バイデン政権が押しとどめようと躍起になっている金融イノベーションと暗号資産の重要な保護を推し進めるために戦い続ける」とXにて述べている。

バイデン氏は拒否権発動の声明にて、「SAB121」を「暗号資産を保護する特定の企業の会計義務に関するSECスタッフの技術的な見解を反映したもの」だとし、「共和党が主導するこの決議は、SECが適切なガードレールを定めて将来の問題に対処する能力を不適切に制約するもの。 このようにSECスタッフの思慮深い判断を覆すことは、会計慣行に関するSECの広範な権限を弱体化させる危険性がある。 わが政権は、消費者と投資家の福利を危うくするような施策を支持するつもりはない」と説明している。

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参考:ホワイトハウス 声明
images:Reuters

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この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

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