SECとCFTCのデジタル資産規制管轄権を明確化する「FIT21法案」が米下院で可決

FIT21が米下院で可決

暗号資産(仮想通貨)に関する超党派の法案「21世紀のためのFIT法(the Financial Innovation and Technology for the 21st Century Act:FIT21)」であるH.R.4763が、下院にて5月22日可決された。

同法案は米証券取引委員会(SEC)と商品先物取引委員会(CFTC)がデジタル資産を規制する際の役割を明確にするもの。昨年7月に委員会を通過しており、今年5月に下院に提出され、採決が行われた。今回、同法案は賛成279票、反対136票で可決された。

下院で可決された同法案はこの後上院に回され、そこで可決されれば、ホワイトハウスに送られることになる。

親クリプト派で知られる米下院金融サービス委員会のパトリック・マクヘンリー(Patrick McHenry)氏は、下院でのH.R.4763可決を「米国のデジタル資産エコシステムにとって画期的な出来事となった」と評した。

マクヘンリ―氏は同法により、高度な消費者保護及び規制の明確化が叶い、米国のイノベーション拠点としての役割強化につながり、将来のグローバル金融システムにおいてリーダーシップが強化されると続けている。

同法案では、CFTCとSECの規制に関する管轄権を明確化するのみならず、SECもしくはCFTCへの登録が要求されるすべての主体に対し、包括的な顧客開示、資産保護、および運営上の要件を課している。

各方面からの声

大手暗号資産取引所コインベース(Coinbase)のCEOであるブライアン・アームストロング氏はXにて、FIT21の下院採決について「歴史的な採決」と述べ、これが法律になれば、「暗号資産を規制するための明確なルールがようやく制定されることになる」と述べた。

一方SECのゲイリー・ゲンスラー(Gary Gensler)委員長は、反対声明を22日に発表。

同氏は「『FIT 21』は、新たな規制格差を生み出し、投資契約の監督に関する数十年にわたる前例を根底から覆すもので、投資家と資本市場を計り知れないリスクにさらすことになる」と述べている。

ゲンスラー委員長は、「FIT21」によって、暗号資産投資や暗号資産商品が「分散型」で、「デジタル商品」という特別なクラスに見なされることで、SECの監視対象外となることが認められると指摘。

「デジタル商品」であるかどうかは、証明書を提出する「あらゆる人」による自己証明に委ねられ、SECによる精査を回避することができると主張した。それにより暗号資産市場の大部分が規制されないままになる可能性があるとゲンスラー委員長は懸念を示した。

ゲンスラー委員長は「暗号資産業界の失敗、詐欺、倒産の歴史は、ルールがないからでも、ルールが不明確だからでもない。暗号資産業界の多くのプレーヤーがルールを守っていないからだ」とし、「私たちは、コンプライアンスを守らない企業のビジネスモデルを助長することよりも、投資家を保護する政策を選択すべきである」と述べている。

 

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参考:マクヘンリー氏声明ゲンスラー委員長 声明
images:iStocks/vitacopS

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この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者