トレント大教授、ブロックチェーンの耐量子暗号システムへの移行の必要性を指摘

ブロックチェーンにおける量子コンピューターの脅威

トレント大学の数学教授であるマッシミリアーノ・サラ(Massimiliano Sala)教授は、量子コンピューターがブロックチェーンのセキュリティに重大な脅威をもたらす可能性があると指摘。今後のブロックチェーン技術について洞察を行った。リップル(Ripple)社の記事コンテンツ「リップルインサイツ(Ripple Insights)」にて5月17日掲載された。

サラ教授は、「量子コンピューターは、デジタル署名の基礎となる問題を簡単に解決することができるため、ブロックチェーンプラットフォーム上でユーザーの資産を保護するメカニズムを損なう可能性がある」と説明。この脆弱性は暗号資産のセキュリティに大きく依存する技術にとって特に懸念されるが、量子計算攻撃に対する安全性を考慮した「ポスト量子」暗号方式の開発に向けて、暗号資産コミュニティが積極的に前進していることも報告された。

サラ教授は、こうしたリスクを軽減するために、量子コンピューティングに強いシステムへの移行の必要性を指摘。古典的な公開鍵暗号システムはすべて、量子攻撃に対して安全なものに置き換える必要があるとした。

また同氏は、これらのシステムを既存のブロックチェーン技術に統合することは複雑で、安全なトランザクションのための計算需要の増加やデータサイズの増大など、避けられないトレードオフが伴うことを認めつつも、これらの実装を実用化に向け最適化を目指す現在進行中の研究については楽観的な見方を示している。

サラ教授は、量子耐性暗号システムの開発における代数学と符号理論の重要性を強調。また、国際協力の大切さについても言及し、安全な暗号標準の確立するために世界的な取り組みを促進する米国NISTの標準化プロセスのようなイニシアチブを称賛している。

またサラ教授は、教育の観点から、将来の暗号技術者が量子に耐性のある暗号方式を取り入れるよう、学術カリキュラムを改訂する必要があると指摘した。

サラ教授はブロックチェーン技術が量子耐性を持つ暗号ブロックをうまく統合することで、量子の脅威を緩和する未来を思い描いており、ブロックチェーンシステムは、継続的なユーザビリティを確保するために、重要度の低い領域への量子安全要素の組み込みから始めることを提案している。

最後にサラ教授は、「量子の脅威が顕在化する確率は差し迫ったものではないかもしれないが、事前対策を講じるに値するほど重大」だとし、組織に対し、すぐにでも耐量子技術への移行を開始するよう提案している。

具体的には、ブロックチェーン開発者に対し、現在進行中の標準化の取り組みへの参加や、量子安全な進歩に焦点を当てたフォーラムに参加することを勧めている。

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参考:Ripple Insights
images:iStocks/Vitalii-Gulenok

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この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者