香港の小売店でも中国デジタル人民元が使用可能に
香港において中国本土で利用される試験的なデジタル通貨の使用を許可すると、香港の事実上の中央銀行総裁が5月17日に発表した。
このことは、地政学的な緊張が高まる中、人民元の国際化を目指す中国政府の取り組みが一歩前進したことになる。
中国政府が支援するこのプログラムでは、中国本土と香港の居住者が、中国の中央銀行が開発したモバイルアプリを通じてデジタル人民元(e-CNY)のウォレットを開設することで、香港と中国本土の小売店や一部のオンラインショップでの支払いを可能にする。
中国の中央銀行の最新の情報開示によると、主に中国国内の小売店での支払いにe-CNYを使用した取引は、2023年6月末時点で1兆8000億元(約38兆7,730億円)に達し、1億2000万のデジタルウォレットが開設されたという。
このウォレットを使えば、ユーザーは中国本土の17の省と都市にある1,000万以上の加盟店で支払いが行える。
香港金融管理局(HKMA)の関係者によると、都市で使用される各ウォレットには1万元の残高制限があり、1回の取引は2,000元、1日の支払いは5,000元が上限となる。
HKMAによると、ピアツーピア(P2P:ウォレット間)の送金は現時点では許可されていない。
「香港でe-CNYの試験運用を拡大することで、ユーザーは本土の銀行口座を開設することなく、いつでもどこでも財布の中身を増やすことができる。それにより香港住民による本土の加盟店での支払いが容易になる」とHKMA長官のエディ・ユエ(Eddie Yue)氏は述べた。
現在、Ant Group(アントグループ)やTencent(テンセント)が運営する他のデジタル人民元ウォレットのユーザーも香港市内で支払いが可能だ。
また中国工商銀行、中国銀行、中国建設銀行、交通銀行がe-CNYウォレット運営者として選ばれている。
グローバル金融における人民元の使用は、依然として低い水準にあるものの、着実に増加している。
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※この記事は「あたらしい経済」がロイターからライセンスを受けて編集加筆したものです。
Hong Kong allows China’s digital yuan to be used in local shops
(Reporting by Selena Li and Shanghai newsroom; Editing by Sumeet Chatterjee and Kim Coghill)
翻訳:大津賀新也(あたらしい経済)
images:Reuters