PayPal、環境配慮の「ビットコインマイナー向けインセンティブプログラム」提案、NPOのEnergyWebらと協力で

環境に配慮

米決済大手ペイパル(PayPal)のブロックチェーン研究部門が、「エネルギー消費量の少ないビットコインマイニングをモニタリングし、報酬を与える」といったクリーンエネルギー検証プラットフォームの開発を行っている。同社が4月22日の研究論文にて発表した。

なお今回の取り組みにあたりペイパルは、NPOのエナジーウェブ(EnergyWeb)およびDMGブロックチェーンソリューション(DMG Blockchain Solutions)と戦略的協力。研究論文によれば、クリーンエネルギー検証プラットフォームはエナジーウェブが開発したという。

同プラットフォームでは、ビットコインマイナーがマイニング業務において低炭素認定を取得でき、この認定を受けたマイナーは、公開鍵と紐づけられた報酬を得られるという。

オンチェーンの取引は、低い取引手数料で送信されることで、認定マイナーに優先的に送られるが、一部のビットコイン(BTC)報酬はマルチシグの支払いアドレスに「ロック」されるとのこと。認定マイナーは、追加の「ロックされた」BTC報酬を受け取られる唯一の存在となるため、これらのトランザクションをマイニングするインセンティブが高まるとペイパルは説明している。

同プラットフォームは、マイナーが環境に与える負荷を抑制する狙いがあるとみられる。

ペイパルのブロックチェーン研究グループは、「基本的な暗号資産経済的インセンティブを、既存の実証済みの強力なネットワークを改善・最適化するために再適用する方法を提案することで、この論文が好ましい行動に影響を与えることを期待する」と述べている。

マイニングとはビットコインネットワークなどのプルーフオブワーク(PoW)を採用したブロックチェーンにおいて、コンピュータの計算力を用いてブロックを生成する権利を獲得しブロックを生成することで報酬を得ることだ。

マイニングには多くの電力が必要で、2022年10月にEUの行政執行機関ECが発表した「エネルギーの効率化に向けた行動計画」によるとマイニングによる電力消費が世界の電力消費量の0.4%に達しているとのこと。発電には一般には炭素系燃料が使用されており、ブロックチェーンが炭素系燃料の使用量を増やし環境に悪い影響を与えるという意見もある。また環境への影響のみならず、エネルギー価格上昇等様々な側面から批判されている。

今年2月には米大統領ジョー・バイデン(Joe Biden)氏率いるバイデン政権が、ビットコインマイニング企業の電力消費量における緊急調査の開始を承認したことが報じられた。

またバイデン政権の2024年予算では、マイニングの電気代を課税対象とする提案もなされている。

補正予算書ではマイニングについて「マイニングの成長に起因するエネルギー消費の増加は、環境に悪影響を及ぼし、環境正義に影響を与えるだけでなく、マイナーと電力網を共有するものにとってエネルギー価格を上昇させる可能性がある」とし、「マイニングは、活動が非常に変動しやすく、移動も多いため、地域の公益事業者や地域社会に不確実性とリスクをもたらす」という見解が記されていた。

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参考:ペイパル研究論文
images:iStock/LuckyStep48

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この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者