日銀、「中銀デジタル通貨パイロット実験」の進捗状況を報告

実証実験の進捗状況を報告

日本銀行が、中央銀行デジタル通貨(CBDC)に関するパイロット実験の進捗状況を4月22日報告した。

報告書によれば、日銀は2021年4月から2023年3月まで、概念実証を通じてCBDCの基本的な機能や技術的実現可能性について検証を進めてきたという。

2023年4月からは、概念実証では検証していない技術的検証の実施と、民間事業者の知見を反映させたパイロット実験を進めているという。

今回の報告書では2024年3月までのパイロット実験の進捗について報告されている。

2つの柱で行われるパイロット実験

パイロット実験は、「実験用システムの構築と検証」と「CBDCフォーラム」の2軸で行われているという。

「実験用システムの構築と検証」では、日銀構築の実験用システムによる性能試験の実施や、実装されない機能の各種机上検討を行うとのこと。また「CBDCフォーラム」では、日銀が事務局となりリテール決済に関わる民間事業者と議論・検討を行っているという。

実験用システムで行わること

また実験用のシステムとして、中央システムや仲介機関システム及びネットワーク、スマートフォンやタブレットを利用したアプリであるエンドポイントデバイスが構築され、広範囲なテストが行われているとのこと。

それらの上でエンドツーエンドでの処理フローの確認、外部システムとの接続へ向けた課題などの検討を行うという。

また、プライバシーにも配慮がなされており、顧客管理分と、決済を行う「CBDC台帳部分」は分離して構築される予定とのことだ。

さらに実験用システムの性能や事務量に関しても、社会実装に向けた技術的な留意点・解決策の洗い出しや評価を行う予定だという。

CBDCフォーラムで行われること

CBDCフォーラムでは、テーマ毎にワーキンググループ(WG)を設置して議論・検討を行うという。

今回の報告書では、すでに開始されている5つのWGの議論状況について報告された。

具体的には、「CBDCシステムと外部インフラの接続(WG1)」、「追加サービスとCBDCエコシステムの設計(WG2)」、「KYCとユーザー認証・認可の標準化(WG3)」、「新技術の探求(WG4)」、「ユーザーデバイスとUI/UXの改善(WG5)」である。

今後設置が検討されているWGとしては、電子マネーなどとの交換容易性について議論する「他の決済手段との水平的共存」と、基本的機能にかかる事務フローや、現金との交換について議論される「基本機能の事務フロー」が挙げられている。なお「基本機能の実務フロー」については、WG1での検討との連続性を意識して設置運営する方針とのことだ。

今後日銀は、CBDCフォーラムでの議論等を踏まえながら実験用システム構築へ向けた作業を推進していくとのこと。

報告書では、「日本でCBDCが導入されるかは現時点で決まっておらず、今後の国民的議論により決定されるものだ」と報告されているが、「日銀としては議論の前提となるよう、CBDCに関する検討を引き続き進めていく」とのことだ。

日銀は1月、CBDCに関する連絡会議の初会合を財務省内で開き、関係府省庁がCBDCを導入した場合に生じる課題を洗い出し、今春を目途にその時点での議論を整理することで一致していた。

4月17日には、その中間整理報告となる「CBDCに関する関係府省庁・日本銀行連絡会議 中間整理」を公表していた。

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参考:中央銀行デジタル通貨に関する実証実験「パイロット実験」の進捗状況
images:iStock/liulolo・Ninja-Studio

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この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者