ワールドコイン、ユーザーによる個人データ保管の実装を計画=報道

個人データをユーザーが保管可能に

ワールドコイン(Worldcoin)は、更なる個人情報強化のため、ユーザー自身がデータの保管方法を選ぶ設計を計画しているようだ。ブロックチェーンメディアのザ・ブロック(The Block)が、3月22日報じている。

ワールドコインは、AIチャットボットサービス「ChatGPT」を提供する米オープンエーアイ(OpenAI)のCEOサム・アルトマン(Sam Altman)氏が立ち上げた暗号資産(仮想通貨)プロジェクト。

ワールドコインは「オーブ(Orb)」と呼ばれるボール状のデバイスで虹彩をスキャンし、各人それぞれの虹彩の特徴をデジタルコードに変換することで個人を識別する「World ID」を発行する。これによりワールドコインは世界的なIDシステムの構築を目指している。

これまでは、ユーザーがワールドIDにサインアップする際に、ユーザ-のバイオメトリックデータを暗号化して保存するか、「オーブ」から削除するかのオプションが与えられていた。

今後ワールドコインが実装しようとしている「パーソナル・カストディ(Personal Custody)」では、ユーザーのバイオメトリックデータは個々人のデバイスに保存され、同データの保管方法をユーザーが選択できるようになるという。

なおこの計画は、昨年12月にワールドコインが発表した「World ID 2.0」計画の詳細を発表した際に予告されていた。「World ID 2.0」では、虹彩を提供せずワールドIDが作れたり、ゼロ知識証明を活用したプライバシーの強化などが実装される。

ワールドコインの関連会社「ツールズ・フォー・ヒューマニティ(Tools for Humanity)のティアゴ・サダ(Tiago Sada)氏はザ・ブロックに対し、今回の構想はまだワールドコインに参加していないユーザーが感じている信頼レベルの強化につながると述べ、ユーザーが自分のデータを管理できるようになることは、誰も信頼する必要がなくなるため、安心感が得られるだろうと伝えている。

オーブのソフトウエアコンポーネントをオープンソース化も

またワールドコイン財団は3月22日、「オーブ」のソフトウエアコンポーネントをオープンソース化することを発表。GitHubで一般公開することで透明性の強化と検証可能性を向上させるとのことだ。

ワールドコインは3月14日、第三者機関であるITセキュリティ企業トレイルオブビッツ(Trail of Bits)による監査結果を報告。同報告では「オーブ」が安全に情報処理していることの検証と、セキュリティ強化の上での推奨事項が提示されている。

個人情報保護の観点から各国懸念の声も

ワールドコインのウェブサイトによると、虹彩スキャンに登録した人の数は120カ国で400万人を超えた。しかしこのプロジェクトはアルゼンチンからドイツに至るまで、個人情報保護の活動団体から批判を浴びている。

韓国や香港でもデータプライバシーの観点から調査が開始されている。

昨年10月には、ケニア政府の合同特別調査委員会が同国規制当局に対し、ケニアでのワールドコインの事業停止を勧告。今年に入り2月には香港の個人情報保護委員会(PCPD)が、ワールドコインの香港事務所6つに立ち入り調査を行い、また韓国の個人情報保護委員会もワールドコインについて調査開始を発表している。

AEPDは3月6日、不十分な情報、未成年からのデータ収集、同意の撤回を認めないことに関する苦情を受けて、ワールドコインに対し、個人情報保護の観点からリスクがあるとして、最長3カ月間の活動禁止を要請した。

ワールドコインは3月、スペインでの営業禁止を受け、同国のデータ保護規制当局に対して訴訟を起こしたことを発表している。

現在オーブでの虹彩スキャンは無料ででき、スキャンしたユーザーは暗号資産「Worldcoin(WLD)」を受け取れる。この「WLD」の配布により、ベーシックインカム実現も計画されている。

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参考:The BlockWorldcoinWorld ID 2.0
images:Reuters

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この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

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