2022年は約5.8兆円に
暗号資産(仮想通貨)調査企業チェイナリシス(Chainalysis)が1月18日に発表したところによると、2023年には少なくとも242億ドル(約3.6兆円)相当の暗号資産が不正なウォレットアドレスに送られており、その中には制裁を受けたアドレスや、テロ資金供与や詐欺につながるアドレスも含まれているという。
暗号資産は、主流の金融システムを使わずに世界中への送金を可能にする。基礎となるブロックチェーン技術は、送金者と受取人が文字と数字の羅列であるウォレットアドレスによってのみ識別される取引記録を作成するものである。
チェイナリシスは、この242億ドルという数字は間違いなく過小評価であり、より多くの不正なアドレスが特定されるにつれて増加するだろうと述べた。また、2022年に不正アドレスへ送られた暗号資産の推定額を206億ドル(約3.6兆円)から396億ドル(約5.8兆円)に倍増させたという。
なお同社のデータには暗号資産関連の犯罪のみが含まれる。ブロックチェーンのデータだけでは、暗号資産が麻薬取引における支払手段である場合などの暗号資産に関連しない犯罪収益である暗号資産の量を判断することは不可能だという。
その代わりにチェイナリシスは、不正と特定されたウォレットアドレスに送られた暗号資産及び暗号資産のハッキングによって盗まれた資金の量を集計した。
同社によれば、2023年の不正取引量は、制裁を受けたエンティティおよび管轄区域を合わせて149億ドル(約2.2兆円)相当で、これは同年に計測したすべての不正取引量の61.5%に相当する。
この合計のうち、大部分は米国が制裁した暗号資産サービス、または米国の制裁が適用されない法域に所在する暗号資産サービスによるものであった。
また、暗号資産詐欺とハッキングからの収益は2023年に減少したが、ランサムウェアとダークネット市場では収益が増加したという。
このほかにも、テロ資金調達、サイバー犯罪、児童虐待に関連するものなど、さまざまな種類の不正アドレスが報告書で確認されている。
米国政府は、不正な資金の流れをブロックし、それを報告しない暗号資産企業を取り締まると述べている。昨年、暗号資産取引所バイナンス(Binance)の創設者は、米国のマネーロンダリング防止法違反を認めた。
1月15日に発表された国連の報告書によると、規制されていない暗号資産取引所は、東南アジアの組織犯罪に利用される金融構造の「基礎的な部分」になっているという。
チェイナリシスは、2021年にサイバー犯罪者が使用した暗号資産のトップはビットコインであったが、ここ2年でステーブルコインが主流となり、現在では不正取引量の大半を占めていると伝えている。
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Illicit crypto addresses received at least $24.2 billion in 2023 – report
Reporting by Elizabeth Howcroft; Editing by Tommy Reggiori Wilkes and Jane Merriman
翻訳:髙橋知里
※この記事は「あたらしい経済」がロイターからライセンスを受けて編集加筆したものです。
images:Reuters