米判事、LUNA・USTのテラフォームラボ訴訟でSECに有利な判決下す

SECに有利な裁定

米地裁判事が、昨年5月に暴落した暗号資産(仮想通貨)「テラ:Terra(LUNA:ルナ)」及び「テラUSD:TerraUSD(UST)」の発行元であるテラフォームラボ(Terraform Labs)と米証券取引委員会(SEC)の訴訟について、SECへ有利な略式判決を下した。12月28日の裁判資料にて明らかとなった。

本訴訟を担当するジェド・ラコフ(JED S. RAKOFF)判事は裁判資料にて、テラフォームラボとその創業者ド・クウォン(DoKwon)氏が、LUNAとUST、そして暗号資産ミラー(MIR)を未登録で提供・販売したと主張するSECに有利な略式判決を下した。しかし証券ベース・スワップの無登録の提供・販売については被告側の略式判決を認めた。

SECは、ユーザーが「mAssets」をミント(発行/鋳造)できるミラープロトコル(Mirror Protocol)を作成・管理することで、クオン氏とテラフォームラボは証券ベース・スワップの取引を提案し、実行したと主張している。しかし裁判所はこの主張を退け、「mAssets」は証券ベース・スワップの法定定義を満たさないと裁定した。

「mAssets」は、チェーン上の取引所価格を反映することで、現実世界の資産の「ミラー(鏡)」として機能するブロックチェーン資産だ。ミラープロトコルのユーザーは、原証券の価値の150%以上の担保を預けることで「mAssets」をミントできる仕組みをもつ。

この特性から、原資産の価格が保有者の最初の買い付け価格より上昇するたびに、保有者は追加担保を追加し「mAsset」を維持する必要があるため、「mAsset」が保有者に利益をもたらすこと、あるいは保有者がそれを期待していたことを示唆する証拠はないと裁判所は裁定している。

しかし裁判所はミラーについては、クオン氏が購入希望者へ送った販促資料にて、トークン保有者は「取引手数料収入」を得られると記載していた点や、ミラープロトコルの成長とともにミラーの価格が上場することを見積もる収益予測表が含まれていた点などからユーザーに利益を期待させたとした。

また裁判所は、LUNAの証券性に関する判断についてクオン氏の言葉を引用しながら説明。

クオン氏の言葉を借りれば、LUNAの保有者は、単純に「後ろで(彼の)活躍を見守る」ことができたとし、それは言い換えれば、人々が「共通の事業に投資する」ことができたということであり、「プロモーターや第三者の努力のみから利益を期待するように仕向けられる」可能性があったと裁定した。

さらに裁判所は、SECの専門委員であるブルース・ミズラック博士(Dr. Bruce Mizrach)とマシュー・エドマン博士(Dr. Matthew Edman)の証言の却下を求めるテラフォームラボとクオン氏の申し立てを却下している。

しかし、同時にテラフォームラボ側の専門家であるテレンス・ヘンダーショット博士(Dr. Terrence Hendershott)の証言の却下を求めるSECの申し立ても却下している。

SECは12月4日、同訴訟においてテラフォームラボが提供・販売する暗号資産が有価証券か否かの判断は陪審ではなく裁判官が判断する事項だと弁護士を通じて主張していた。

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参考:裁判資料
images:iStock/krblokhin

この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者