ケニア、ワールドコイン(WLD)の調査委員会を結成=報道

報告書は下院委員会へ提出

ケニアで暗号資産(仮想通貨)プロジェクト「ワールドコイン(Worldcoin)」の活動を調査する合同特別調査委員会が結成されたと、現地紙「ザ・スター(THE STAR)」が8月21日報じた。

報道によれば同委員会は、ケニアの選挙区の1つナロクウェスト(Narok West)の国会議員であるガブリエル・トンゴヨ(Gabriel Tongoyo)氏が委員長を務め、メンバーは行政・国内安全保障、コミュニケーション・革新、観光・野生生物の各部門委員会から選出されるとのこと。

同委員会は42日以内にワールドコインを調査し、下院委員会に報告書を提出するという。

ケニア政府は8月2日、政府機関が公共の安全に対する潜在的なリスクを評価する期間を設けるため「ワールドコイン」のケニア国内での活動を一時停止したと発表。その後ケニアデータ保護局はプロジェクトに関して「多くの正当な規制上の懸念」が見つかったとの声明を出していた。

その際にキスレ・キンディキ(Kithure Kindiki)内相は、ケニア政府はワールドコインの活動に懸念を抱いており、政府機関はワールドコインが収集したデータをどのように使用するつもりなのかを調査すると述べていた。またワールドコインの活動に関与する者に対しては、詳細は語らないが、処分が下されるだろうとも付け加えている。

なお現地メディアによれば8月2日時点で、35万人以上のケニア人がワールドコインに登録し、約7000ケニアシリング(49ドル:約7,040円)相当のワールドコインの「WLD」を無料で入手したとのことであった。

また8月7日には現地メディアによって、ケニア警察がワールドコインのナイロビ倉庫を強制捜査したことが報じられ、ケニア警察がワールドコインの倉庫から書類や機械を押収し、分析のためワールドコインのデータを刑事捜査局本部に持ち込んだ様子が伝えられていた。なお押収した機械には、ケニア人の機密情報が保存されていると思われると報じられている。

ワールドコインとは

「ワールドコイン」は、AIチャットボットサービス「ChatGPT」などの人工知能で知られるOpenAIの創業者サム・アルトマン氏が、物理学者のアレックス・ブラニア(Alex Blania)氏と共に開発を進めるプロジェクト。

「ワールドコイン」は「オーブ(Orb)」と呼ばれるボール状のデバイスで網膜をスキャンし、各人それぞれの虹彩の特徴をデジタルコードに変換することで個人を識別する「World ID」を発行する。現在このスキャンは無料ででき、スキャンしたユーザーは現在無料の暗号資産「Worldcoin(WLD)」を受け取れる。この「WLD」の配布により、ベーシックインカム実現も計画されているという。

「ワールドコイン」は今月20日、システムの主要部分をポリゴン(Polygon)ネットワークからイーサリアムレイヤー2ネットワークの「オプティミズム(Optimism)」メインネット上へ移行したことを発表。その後24日に「WLD」を正式ローンチし、それに伴いHuobi(フォビ)やBybit(バイビット)、OKX、Binance(バイナンス)といった海外暗号資産取引所でも「WLD」が上場している。

「ワールドコイン」は7月24日、200万人のユーザー獲得を報告。同プロジェクトは20カ国で虹彩のスキャン業務を拡大したという。

各国規制当局による調査も

ワールドコインはケニア以外の国の規制当局からも調査を受けている。

7月25日には、英国のデータ規制機関の情報コミッショナーズ・オフィス(ICO)が「ワールドコイン」を調査すると発表。

7月28日には、フランスのデータ保護機関(CNIL)がワールドコインのデータ収集の合法性を疑わしいとして、調査していることが各報道機関によって報じられた。なお同調査は、ドイツのバイエルン州のプライバシー規制当局が監督権をもつという。

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参考:THE STAR
デザイン:一本寿和
images:iStocks/SB・Rawpixel

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この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者