フランス銀行が中銀デジタル通貨の実験レポート公開、ホールセール型CBDCの有用性を報告

ホールセール型CBDCがクロスボーダー決済を改善

仏中央銀行のフランス銀行(Banque de France)が、中央銀行デジタル通貨(CBDC)の実験から得た知見を報告するレポートを7月21日公開した。

そのレポートでは、ホールセール(金融機関などの大口業務)型CBDC(wCBDC)により、クロスボーダー決済をはじめとする決済の完結性と安全性を改善できるため、幅広い資産の安全性を改善できると報告されている。

同実験を通じてフランス銀行は、分散型台帳技術(DLT)上で直接ホールセール型CBDC(wCBDC)を発行するための3つの概念(相互運用・流通・統合)モデルを構築したという。なおこれらの概念モデルには、資産のトークン化、クロスボーダー取引の改善などの実用化を試すため、様々なタイプのDLTが使われたとのことだ。

政策と技術の両面での要点を報告

フランス銀行は、この実験により得られた政策的要点と技術的要点をあわせて8つ報告している。

政策的要点として、「ホールセール型CBDCは、リテール(個人や企業)決済とホールセール決済の両方における中央銀行貨幣の価値を確保し、異なる形態の民間貨幣間の相互交換性を確保することで、貨幣の単一性に貢献する」、「国際協力と官民パートナーシップは、よりグローバルに包括的で相互運用可能なホールセール型CBDCの枠組みに向けて収束するための優先課題であること」、「相互運用性は、DLTベースのインフラと従来のインフラとの間のシームレスなデータ交換・取引を確保するために優先されるべきである」、「気候関連の懸念は、ホールセール型CBDCの設計においてエネルギー効率の高いソリューションを開発する必要性を明確に示している」と報告されている。

また、技術的要点としては「DLT関連技術の進化は、中央銀行がホールセール型CBDCの管理を維持するための様々な手段を提供する」、「中央銀行は、技術的に中立である一方、共通基準の採用に積極的に貢献すべきである」、「DLTは貿易と取引後の活動の一貫した処理を強化し、全体的な金融の安定に貢献する可能性がある」、「DLTの分析及び運用の枠組みを構築する我々の努力を前進させるためには、国内及び国際レベルでの継続的な実験が不可欠」だとフランス銀行は報告した。

フランス銀行はこれら実験を通し、「ホールセール型CBDCは、非上場金融資産に分類され、既存サービスでは決済できないネイティブなデジタル資産やトークン化された資産にとって重要な役割を果たすだろう」と決定づけている。

フランスにおけるCBDC実験のあゆみ

フランス銀行は2020年3月にCBDC実験プログラムを開始。同年5月には、4,000万ユーロ(当時約47.6億円)のカバードボンド(債権担保付き社債)のためにイーサリアム(ETH)上でソシエテジェネラルズフォージ(Societe Generale’s Forge)とホールセールCBDCテスト取引を完了した。

また同年7月には、CBDCの実験パートナーとして、Accenture(アクセンチュア)、Euroclear(ユーロクリア)、HSBC、Iznes(イズネス)、LiquidShare(リキッドシェア)、ProsperUS(プロスパーユーエス)、Seba Bank(セバ銀行)、Societe Generale’s Forge(ソシエテジェネラルズフォージ)の8社を選出したことを報告している。

2021年1月には、総額200万ユーロ(当時約2.5億円)のCBDCによる銀行間決済に成功していた。

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参考:フランス銀行レポート
デザイン:一本寿和
images:iStocks/frederique-wacquier

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この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

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