世界銀行グループ支援のファンドと米州住友商事がカーボンクレジットをトークン化、Chia Network活用で決済も

カーボンクレジットのトークン化・決済に成功

カーボンクレジットファンドの「カーボン・オポチュニティーズ・ファンド(Carbon Opportunities Fund)」と米州住友商事(SCOA)が、トークン化されたカーボンクレジットの初取引の1例を6月28日発表した。

「カーボン・オポチュニティーズ・ファンド」は、高品質なカーボンクレジットの調達およびトークン化を目的に、世界銀行グループの一機関である国際金融公社(IFC)によって昨年8月17日に設立されている。

なおこのファンドにはIFCの他に、気候に焦点を当てたフィンテック企業カルティボ(Cultivo)、環境に配慮した投資を行う金融機関アスピレーション(Aspiration)、低エネルギーで運用可能なパブリックブロックチェーンであるチア・ネットワーク(Chia Network)が参加している。

発表によれば、今回の取引はチアブロックチェーン上に構築されたCADトラスト(Climate Action Data Trust)を活用して行われたという。なおCADトラストは、すべての主要なレジストリからのカーボンクレジット データをリンク、集約、調和させる分散型メタデータプラットフォームだ。世界銀行、国際排出権取引協会(IETA)、シンガポール政府が主導している。

なおIETAは、温室効果ガス排出削減量の取引に関する機能的な国際的枠組みを確立するため、1999年6月に設立された非営利のビジネス組織だ。

この取引では、SCOAがチアブロックチェーン上でトークン化されたカーボンオフセットのバッチを購入し、CADトラストを活用。これによりファンドのコンセプトとビジョンの実装が成功したことを実証したとのことだ。

なおカーボン・オフセットとは、企業が植林や再生可能エネルギーのプロジェクトに資金を提供するクレジットを購入することで、排出量を補償する手段である。

ファンドは、カーボンレジストリのエコレジストリー(EcoRegistry)と協力のうえ、チアブロックチェーン上で1万トンの炭素を鋳造(トークン化)し、チアアセットトークンとして鋳造したという。

カーボンクレジットが鋳造されると、ファンドはトークン化されたカーボンクレジットを購入者に送るだけで取引を実行することができるという。一部のクレジットはすでにチアブロックチェーン上で償却されており、エコレジストリーはその後、レジストリとCADトラストで当該ユニットを償却済みとしてマークした。

IFCの欧州・ラテンアメリカ・カリブ海地域担当副総裁であるアルフォンソ・ガルシア・モラ(Alfonso Garcia Mora)氏は、「ラテンアメリカにおけるこれらの初期プロジェクトは、世界の金融市場における炭素クレジットの正常化を期待する国際排出量取引協会(IETA)のCADトラストの仕組みとアーキテクチャーの証明に役立つ」とコメントしている。

SCOAのマーク・ライラ(Mark Lyra)氏によれば、ブロックチェーン技術はその特性上改ざんや不正行為への耐性を高めており、炭素市場の参加者に取引の安全性を保証することができる」と述べ、「チアネットワークとCADトラストは、異なる炭素市場の統合を促進し、参加者が国境やプラットフォームを越えてクレジットを取引しやすくすることができる。これにより、新たな炭素資産クラスの創設を含め、炭素市場の流動性と全体的な価値を高めることができる」とコメントした。

世界銀行の気候金融・経済グループマネジャーであるハニア・ダウッド(Hania Dawood)氏は「デジタル炭素(トークン)資産の創出は、完全性の高い炭素市場のトレーサビリティと換金性を高めるという気候ウェアハウス・プログラムの取り組みの重要な要素だ」と述べている。

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参考:CHIA NETWORK
デザイン:一本寿和
images:iStocks/undefined-undefined

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この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

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