米ドルステーブルコイン「USDC」、イーサL2「アービトラム」にネイティブ対応へ

USDCがアービトラムにネイティブ対応へ

米サークル(Circle Internet Financial)発行の米ドルステーブルコイン「USD Coin(USDC)」が、アービトラム(Arbitrum)ブロックチェーン上で6月8日よりネイティブ発行対応される。アービトラムの開発を支援するアービトラム財団(Arbitrum Foundation)が6月1日発表した。

アービトラムはイーサリアム(Ethereum)のレイヤー2スケーリングソリューション。同ネットワークでは、「オプティミスティックロールアップ(Optimistic Rollups)」を採用することでイーサリアムの安全性を保ちつつオフチェーンでの高速処理を実現している。

今までアービトラム上では、イーサリアム上で発行されたERC20トークンの「USDC」がブリッジされ、ラップドトークンの形で「USDC」が利用されてきた。今回のネイティブ対応により、今後はアービトラム上で「USDC」が直接発行され、米ドルとの裏付けもサークルの準備資産によって直接確保されることになる。

なお発表によるとネイティブ「USDC」発行開始により、いままで利用されていたアービトラム上のブリッジ「USDC」については名称を「ブリッジUSDC(USDC.e)」に変更するとのことだ。

またサークルは、「USDC」をブロックチェーン間で転送する「クロスチェーン転送プロトコル(Cross-Chain Transfer Protocol:CCTP)」をアービトラムに対応予定であることも併せて発表している。

なお「CCTP」は「USDC」を転送元のチェーンで焼却(バーン)させ、転送先のチェーンで発行(ミント)する「バーンアンドミント(Burn and mint)」を採用することで、より安全に他のブロックチェーンに「USDC」を移動できる機能である。これにより転送先のトークンがネイティブになるとされている。現在「CCTP」はイーサリアムとアバランチ(Avalanche)間にて対応されている。

ちなみに従来のブロックチェーンをまたいだトークンの転送(ブリッジプロトコル)で多く採用されているのは、トークンを転送元のチェーンで消滅させずスマートコントラクトにロックし、転送先のチェーンで発行する仕組みの「ロックアンドミント(Lock and mint)」である。

「USDC」は米ドル(USD)と1:1の比率で価値を維持(ペッグ)しているステーブルコイン。ステーブルコインの中では第2位の時価総額となっている。なお第1位はテザー社の「USDT」だ。

「USDC」は現状でイーサリアム、ソラナ(Solana)、アルゴランド(Algorand)、アバランチ、ヘデラ(Hedera)、トロン(TRON)、ステラ(Stellar)、フロウ(Flow)の8つのブロックチェーンにおいてネイティブサポートされている。ちなみにポリゴン(Polygon)についてはブリッジトークンで、現状ネイティブサポートされていないとサークルのサイトに記載がある。またコスモス(Cosmos)ネットワークのエコシステムにおいてもトークン発行プロトコルのノーブル(Noble)を介して、ネイティブ対応する予定が3月に発表されている。

なおアービトラムにおいて前述した「ロールアップ」とは、元となるブロックチェーンのセキュリティなどを活用しながら、ガス代(ネットワーク手数料)やネットワークの混雑解消を図るスケーリング技術のこと。アービトラムが採用する「オプティミスティックロールアップ」では、正当性の検証方法をレイヤー1(イーサリアム)に提出されるデータはすべて正当なものであるという楽観的(オプティミスティック)な前提に基づいて検証を行う手法にて、スケーラビリティを確保している。

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参考:アービトラムサークル
デザイン:一本寿和

images:iStocks/Ket4up

この記事の著者・インタビューイ

大津賀新也

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者 ブロックチェーンに興味を持ったことから、業界未経験ながらも全くの異業種から幻冬舎へ2019年より転職。あたらしい経済編集部では記事執筆の他、音声収録・写真撮影も担当。