BISと英中銀、分散型台帳技術活用の決済システムをテスト

BISと英中銀が同期決済を実験

国際決済銀行(BIS)と英国の中央銀行であるイングランド銀行が、分散型台帳技術(DLT)活用の決済システムをテストしたようだ。両行が4月19日に提出したレポート「プロジェクトメリディアン(Project Meridian)イノベーションによる取引の簡素化について」にて明らかとなった。

なお「プロジェクトメリディアン」は、中央銀行デジタル通貨(CBDC)を使用した同期決済実験のことである。

レポートによれば、「 同期化(シンクロナイゼーション)とは、資産台帳と即時グロス決済(RTGS)システムを相互リンクさせるという既存の概念に基づき、幅広い資産に対して中央銀行貨幣での同期決済を可能にする機能の開発を目指すもの」と説明されている。

なお今回イングランド銀行とロンドンのBISイノベーションハブはDLT活用の同期決済の実験として、ウェールズとイングランドで住宅の購入に成功したとのことだ。

このユースケースによる同期決済の実験では、資産台帳とRTGSシステムの間に位置する「同期オペレーター」の概念が導入されている。

レポートによると「同期オペレーター」は、条件付決済を調整する役割を果たすが、RTGSの口座は持たない。この場合、「同期オペレーター」は、許可されたDLTであるR3提供のエンタープライズブロックチェーンのコルダ(Corda)を使用し、また各参加者はネットワーク上のノードを持つことで、クレデンシャル(認証情報)を使用して身元を確認しているとのこと。

なお同期決済では、すべての当事者間で資産の交換が行われ、その譲渡が正常に行われない場合は、譲渡が無効になるとのことだ。

またAPIを介して同期ネットワークとRTGSシステム間でやり取りされるメッセージは、外国為替などの他の資産クラスにも拡張できる汎用的なインターフェースとして機能するという。これにより取引にかかる時間・コスト・リスクを削減できるとのことだ。

なおイングランド銀行は、同期決済がクロスボーダー決済やリテール決済の改善に役立つとも考えているという。また、CBDCを含む「新たな資産クラス」にも同期決済を利用できるようになる可能性があるとしている。

またレポートでは、外国為替市場において、2022年4月には毎日2.2兆ドルが決済リスクにさらされていたことが引用されている。

BISは3月6日、イスラエル・ノルウェー・スウェーデンの中央銀行と共同で行っているリテール(小売)型CBDCのクロスボーダー決済に焦点を当てた調査事業「プロジェクト・アイスブレイカー(Project Icebreaker)」を終了したことを発表していた。

イングランド銀行は2020年8月、RTGSサービス更新プログラムのテクノロジーパートナーにAccenture(アクセンチュア)を任命。新たなRTGSは2022年に提供を開始される予定とされていた。

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参考:レポート
デザイン:一本寿和
images:iStock/your_photo

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この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者