米SECがビットトレックスと元CEOを起訴、取引所の未登録運営で

文言の削除指示も

米証券取引委員会(SEC)が、米国証券法を遵守しなかったとして米暗号資産(仮想通貨)取引所ビットトレックス(Bittrex)と元CEOウィリアム・シハラ(William Shihara)氏を4月17日起訴した。なおこれに伴い、ビットトレックスの関連会社であるBittrex Global GmbHも告発を受けている。

刑事訴状によれば、同取引所はブローカーディーラー・取引所・精算機関としての登録を怠り、取引所を運営したとのこと。また2017年から2022年までで、投資家らからの手数料などで少なくとも13億ドルの収益を得たという。

また元CEOのシハラ氏については、同社プラットフォームでの取引を望む発行体の申請者と共謀し、規制当局の調査対象となり得る特定の「問題発言」をパブリックチャンネルから削除したことが訴状にて指摘されている

具体的には、取引所とシハラ氏が発行体の申請者に対し、プラットフォーム上で資産を利用可能にする前に、「価格予測」・「利益の期待」・その他「投資関連用語」に関連する記述を削除するよう指示したという。

なおシハラ氏は2014年から2019年までビットトレックスのCEOを務めていた。

SECの主張

SECのゲイリー・ゲンスラー(Gary Gensler)委員長は「(今回の措置は)暗号資産市場が、規制の透明性の欠如ではなく、規制遵守の欠如に苦しんでいることを浮き彫りにした」と述べている。

またビットトレックスは、決済機関としての登録・米国証券法の順守を怠った上、対象となる規制を知りながら、発行体の申請者へ意図的にそれを回避するための指示を行ったと指摘した。

またゲンスラー委員長は、ビットトレックスが投資家保護よりも利益を繰り返し追求したと非難。「ビットトレックスの責任追及だけでなく、他の非準拠の暗号市場仲介業者に対しても、連邦証券法に従うか、その違反の責任を追及するようメッセージを送るべきだ」と主張した。

ビットトレックスの反論

ビットトレックスは4月18日、自身のツイッターにて「ビットトレックスに対し、執行措置を行うというSECの決定に失望した」と述べ、「この動きの影響は、米国の暗号資産のみならず、ブロックチェーン技術とイノベーション全般に恐ろしい影響を与えるだろう」と批判した。

ビットトレックスの主張として、同取引所では証券の提供・取引は行われておらず、投資契約にあたる商品は提供していないという。またSECは過去5年以上にわたり、違反の可能性がある特定の行為についてビットトレックスに対し通知しなかったという。その間ビットトレックスはSECに対し、どのデジタル資産を証券と見なしたかについて、複数回問い合わせを行っていたととのことだ。

ビットトレックスは4月1日、4月30日をもって米国での事業を終了することを発表。事業縮小に至った理由について、「米国での暗号資産に関する規制の不確実性が続いていること」、「経済環境的に事業継続が難しくなったこと」を挙げていた。

関連ニュース

参考:SEC
デザイン:一本寿和
images:iStock/Who_I_am

関連するキーワード

この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者