テザー、顧客へシグネチャー銀行を通じバハマへ米ドル送金指示か=報道

テザーがシグネチャー銀行通じて米ドル送金

ステーブルコイン「USDT」を発行するテザー(Tether)が、シグネチャー銀行(Signature Bank)を通して、米国からバハマへ米ドル資金を送金していたようだ。関係者からの情報をまとめる形でブルームバーグが4月5日報道した。

その報道によればテザーは顧客に対し、シグネチャー銀行のシグネット(Signet)決済プラットフォームを介してバハマ拠点の提携銀行であるキャピタルユニオン銀行(Capital Union Bank Ltd.)へ米ドルを送金し、ステーブルコインを購入するよう指示していたという。

なおテザーは、米国の銀行システムに直接アクセスすることはできない。

米証券取引委員会(SEC)及び財務省で上級執行職を務め、現在はコンサルティング会社の共同経営者を務めるアルマ・アンゴッティ(Alma Angotti)氏は、こういった取引は違法ではないとの見解を示したという。

しかし同氏は、もしシグネチャー銀行がテザーのこういった取り決め(テザーによる顧客への指示)を知っていていて許可したのであれば、シグネチャー銀行の高いリスク許容度を意味する可能性があるとし、シグネチャー銀行はこの方がテザーに預金口座を提供するより低リスクだと判断したかもしれないと推測している。

テザーの最高技術責任者のパオロ・アルドイーノ(Paolo Ardoino)氏は、シグネチャー銀行が閉鎖した直後の3月13日のツイートで、テザーはシグネチャー銀行へのエクスポージャー(市場リスクなどにさらされている資産の割合)はないとツイートしている。

また同氏は4月5日、自身のツイッターにて、テザーはシグネチャー銀行に対する直接的・間接的エクスポージャーを持っていない旨を改めて強調した。

シグネチャー銀行の状況

暗号資産関連企業向けの融資で知られていたシグネチャー銀行は、業界への不安の高まりにより、預金引き出しが相次ぎ3月12日閉鎖した。

その後連邦預金保険公社(FDIC)が同行の買収先を探していた。2度にわたる売却の試みの末、ニューヨーク州に拠点を置くニューヨーク・コミュニティーバンコープ(NYCB)傘下のフラッグスター銀行が、全ての預金と資産の一部を買収することで合意した。

NYCBの発表によると、シグネチャー銀行から取得する資産約380億ドル(約5兆円)の内訳は、現金が約250億ドル(約3.2兆円)、融資が約130億ドル(約1.7兆円)。預金約340億ドル(約4.4兆円)、他の負債約20億ドル(約2,634億円)も引き受けることだ。

また2度目の売却報道の際、シグネチャー銀行の買い手は、同銀行の暗号資産(仮想通貨)ビジネスをすべて放棄することに同意しなくてはならないことが消息筋によって証言されていた。

関連ニュース

デザイン:一本寿和
images:iStocks/royyimzy・Iurii-Garmash

関連するキーワード

この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者