オーストラリア中銀がCBDCのユースケーステストへ
オーストラリアの中央銀行であるオーストラリア準備銀行(Reserve Bank of Australia:RBA)とデジタル金融共同研究センター(DFCRC)が、パイロット版の中央銀行デジタル通貨(CBDC)を用いてユースケーステストを行うと3月2日発表した。
今回のユースケーステストは、両社が昨年8月に発表したCBDC(中央銀行デジタル通貨)関連プロジェクトの一環として行われる。
同プロジェクトでは、主にCBDC導入による経済効果などの具体的なユースケースおよびビジネスモデルについて重点的に調査を行うとのこと。決済サービスなどの様々なユースケースにパイロットCBDCを導入し評価するという。プロジェクトの期間は1年間が予定されており終了は2023年の半ばとなっている。なおこのプロジェクトにはオーストラリア財務省も運営委員会のメンバーとして参加するとのことだ。
今回実施されるユースケーステストでは、ビジネスモデルとユースケース、それらに関連する利点とリスクについて調査を行うようだ。ユースケースは、個人や企業が利用する「リテール型CBDC」と中央銀行と民間銀行など金融機関が利用する「ホールセール型CBDC」に対応するという。なお同テストへの業界の関心は高く、昨年10月31日までに140件を超えるユースケースの提出があったという。
今回発表されたテスト対象となるユースケースには「オフライン決済」、「商品サービス税(GST)の自動化」、「信頼性の高いWeb3コマースを実現する相互運用可能なCBDC」など14の項目が挙げられた。また参加するプロバイダーとして、マスターカード(Mastercard)やイントゥイット(Intuit)、オーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ)、オーストラリア・コモンウェルス銀行(Commonwealth Bank)等を含む15の企業・機関が名を連ねている。
なおユースケーステスト実施期間は3月31日~5月31日で、6月30日に最終報告書が発行されるとのことだ。
オーストラリア準備銀行の金融システム担当のブラッド・ジョーンズ総裁補佐は「パイロット版と並行して行われるより広範な調査研究は、2つの目的を果たすことになる。産業界による実地学習に貢献し、CBDCがオーストラリアの金融システムと経済にどのような利益をもたらす可能性があるのか、政策立案者の理解を深めることになるだろう」とコメントしている。オーストラリア準備銀行は2021年9月より、国際決済銀行、マレーシア国立銀行、シンガポール金融管理局、南アフリカ準備銀行と共にCBDCの国際決済テストを行っていた。
なお日本においては、日本銀行が進めている中央銀行デジタル通貨(CBDC)の実証実験が、4月より「パイロット実験」の実施に進むことが2月17日に発表されている。
日本においてCBDCを導入するかどうかは現時点では決定しておらず、日銀としては「今後の国民的な議論の中で決定されるべきもの」との考えを表明している。
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