【取材】NFT・ブロックチェーン活用の教育採用サービス「ONGAESHI」発表=コクヨ、SMTB、慶應FinTEKセンター、TUSIM、IGSら運営

NFT・ブロックチェーン活用の教育採用サービス「ONGAESHI」発表

NFTやブロックチェーン技術活用のデジタル人材育成・採用一体型のサービス「ONGAESHI(オンガエシ)」実現のための、ONGAESHIプロジェクト発足が2月2日に発表された。

ONGAESHIプロジェクトには、コクヨ、三井住友信託銀行(SMTB)、慶應義塾大学経済学部附属経済研究所FinTEKセンター、東京理科大学インベストメント・マネジメント(TUSIM)、およびプロジェクトの運営主体としてInstitution for a Global Society(IGS)が参画している。

なお「ONGAESHI」は今年9月に提供開始を予定している。これに伴い今回の発表から、デジタル人材を目指す20~30代の社会人・学生の事前登録、デジタル人材を採用したい企業、及びデジタル関連スキルが身につく講座を提供したい講師の募集が開始されている。

「ONGAESHI」は人材業界に第三の選択肢をもたらす新しいシステム「連帯貢献システム」を取り入れたデジタル人材育成・採用一体型のサービスだという。

持続的な無償教育の提供を行い、まずは喫緊の課題となっているデジタル人材不足の解消を目指していくとのこと。

なお「ONGAESHI」は、国際的なサッカークラブ移籍制度「連帯貢献金」から発想を得ており、採用費用の一部をデジタル人材育成に関わった全員に還元するという。

また受講権をNFT化(名称:ポジションNFT)することで、一般的に資金供給が十分でない教育領域への資金を呼び込むという。NFTを活用する理由についてはNFTが持つ「独自性」、「保有者の証明、そして「売買可能」に着目したからだという。

そしてユーザーの個人情報の管理にはブロックチェーンシステムを活用するとのことだ。このシステムでは学習歴や関連情報を暗号化し、ブロックチェーンと分散型ストレージに分割してデータを移行する設計にするという。

さらに「ONGAESHI」では企業とユーザの採用マッチングにおいて、メカニズムデザインを専門とする慶應義塾大学坂井教授が、能力に基づいた年収によるマッチングを設計しているとのことだ。

「ONGAESHI」はブロックチェーン基盤としてポリゴン(Polygon)、そして分散型ストレージにIPFSを技術選定している。

なお「ONGAESHI」のブロックチェーン技術を活用した基盤システム・ビジネスモデルは特許を2つ申請中だという。

慶應義塾大学経済学部教授坂井豊貴氏は「Web3の本命がこのプロジェクトだと考えています。ビットコインの登場以来、クリプトの世界では数多の実験が行われてきました。そこで得られたシンプルな結論は、世に価値を生まないプロジェクトは、中長期的には消えるというものです。このプロジェクトでは、入念なメカニズムデザインを伴うエコシステムによって、人材育成と採用マッチングが成立します。そこで世に生まれる価値が、エコシステムの動力となります。これまでの資本主義が、食物連鎖のヒエラルキーを範とするものであるなら、私たちはそれとは違う相貌、生態系のサイクルを範とする姿を見たいと思っています」とコメントしている。

慶應義塾大学経済学部附属経済研究所FinTEKセンターのセンター長で経済学部教授の中妻照雄氏は「ONGAESHIではSTARの実証で得られた知見を発展させ、ブロックチェーンを用いた個人情報管理の高度化と学習歴の採用への活用、さらにはデジタル人材の育成を実現してまいります。是非多くのタレント、企業、教育者の方にご参加いただければと思います」と伝えている。

IGSプラットフォーム事業部長の松原祥起氏は「IGSのパーパス『分断なき持続可能な社会を実現するための手段を提供する』のもと、STARプロジェクトでは、ブロックチェーンシステムの開発や、学習歴データの可視化や企業様とのマッチングをおこなってまいりました。今後は本格的なブロックチェーンの社会実装とデータの利活用に向けてONGAESHIの開発を進めてまいります」とコメントしている。

IGS松原氏と阿部氏へ取材

あたらしい経済編集部はInstitution for a Global Society株式会社(IGS)プラットフォーム事業部長の松原祥起氏とIGSプロダクトマネジャーの阿部一也氏へ取材を行った。

–教育という公共的性質が帯びる領域においてのブロックチェーン技術の適用は、時間を要するものになると思いますが、それでもブロックチェーン技術を適用させていきたいと思えたのはどういった理由からでしょうか?

松原氏:無償教育の提供やステークホルダーみんながメリットをとる仕組みを実現するためにNFTの利用が最も適していると考えたためです。

今は短期的な成長を支援した人にしか恩返しできませんが、今後は恩師や卒業校への恩返しもブロックチェーンによって効率的に実現できると考えられます。

また、昔からの教育データを個人が保有して使えるようにするというのもブロックチェーンならではのコンセプトだと考えています。

–ブロックチェーンとしてPolygon、分散型ストレージとしてIPFSを選定した理由を教えてもらえますか?

今回の仕組みが実現できるものの中から、それぞれの流通量や開発規模、ロードマップ、障害や障害時の対応、過去のハッキング事件などを分析し、実績があってコストが低かったため、今回はこちらを選定しました。

尚、今後の状況によっては変更する可能性もあります。

参考:ONGAESHI
images:iStocks/Максим-Ивасюк・Thinkhubstudio
デザイン:一本寿和

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この記事の著者・インタビューイ

竹田匡宏

兵庫県西宮市出身、早稲田大学人間科学部卒業。 「あたらしい経済」の編集者・記者。