TEIJINと富士通、ブロックチェーンで「自転車フレームの炭素繊維」を環境価値化する実証開始

TEIJINと富士通が「自転車フレームの炭素繊維」を環境価値化する実証開始

国内大手化学メーカーの帝人(TEIJIN)と富士通が、自転車のフレームに用いられるリサイクル炭素繊維において、「資源循環における環境価値化実証プロジェクト」を開始したことを1月19日発表した。

このプロジェクトでは、両社が昨年7月より構築を進めているブロックチェーン活用の「リサイクル素材の環境価値化プラットフォーム」を用いるという。これにより自転車フレームに使用される材料の資源や環境負荷に関する証跡データを収集・管理するとともに、そのプロセスの実現性を評価し、可視化したデータの価値を検証するとのこと。

また環境への関心が高い自転車市場における、証跡データの開示によるトレーサビリティの実現やカーボンマネジメントへの活用による価値の創出を目指すとのことだ。

なお今回のプロジェクトは、炭素繊維強化プラスチックを使った自転車フレームの製造・販売を行うV Frames(ブイファームス)ならびに自転車メーカーのE Bike Advanced Technologies(アドバンスドバイクス)と共に実施するとのこと。両社は自社内の各工程における環境負荷情報のプラットフォームへのアップロードの他、データの収集プロセスやプラットフォーム上で可視化されたデータのレビューを行うとのことだ。

発表によると欧州の自転車産業では、多くがアジアで製造されたフレームを使用し、また、使用済みフレームの多くをアジアで埋め立て処分しているとのこと。さらに材料や使用済みフレームといった資源の長距離輸送によるエネルギー消費量がかさむことから、資源が循環利用されずに処分されているという。これらは自転車産業にとって大きな問題になっているとのこと。

なおこのような状況下においてV Framesは、ドイツ国内での資源活用や製品寿命を迎えたV Frames社製自転車フレームを再利用したフレームの製造に取り組み、温室効果ガス(GHG)排出量削減に貢献しているとのことだ。

今回のプロジェクトは1月より3月まで実施される予定だ。

「リサイクル素材の環境価値化プラットフォーム」について

「リサイクル素材の環境価値化プラットフォーム」では、自転車フレームのリサイクルから販売に至るまでの全工程における資源に関する情報(所在、状態、環境負荷など)が反映されるため、物理空間の資源の状況をデジタルで仮想的に表現(デジタルツイン)ができるとのこと。

またプラットフォームのデータに基づき、自転車ユーザーに対するトレースデータの開示や、ステークホルダーのカーボンマネジメントなどに活用することで価値を生み出すという。さらにプラットフォームに蓄積されたデータは、自転車フレームの資源循環を実現していることを示すデータであることから、将来的には、ESG投資の評価やクレジットとしての活用に展開するとのこと。

帝人および富士通は「実証プロジェクト」後、資源循環における環境価値化プラットフォームの実装・導入を進め、2023年度に事業化を目指すという。また今後もこの取り組みに賛同したパートナー企業や団体との議論および実証などを進め、自転車フレームのみならず、他産業でもリサイクル市場の発展に取り組み、素材産業起点でのサーキュラーエコノミーの実現に貢献するとしている。

ちなみに「リサイクル素材の環境価値化プラットフォーム」には、富士通のブロックチェーントレーサビリティプラットフォームを実現するサービス「Fujitsu Track and Trust」が用いられている。同サービスのシステム基盤には、エンタープライズ向けブロックチェーンであるハイパーレジャーファブリック(Hyperledger Fabric)が採用されている。

なお「Fujitsu Track and Trust」は、総合重工業グループIHIの「アンモニアCO2トレーサビリティプラットフォーム」や英ボタニカルウォーターテクノロジーズ(Botanical Water Technologies LTD.:BWT)と富士通が開発した水取引プラットフォーム「ボタニカルウォーターエクスチェンジ(Botanical Water Exchange:BWX)」などに利用されている。

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参考:富士通
デザイン:一本寿和

images:iStocks/Clarini

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この記事の著者・インタビューイ

大津賀新也

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者 ブロックチェーンに興味を持ったことから、業界未経験ながらも全くの異業種から幻冬舎へ2019年より転職。あたらしい経済編集部では記事執筆の他、音声収録・写真撮影も担当。

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