豪大手銀行NAB、ステーブルコインAUDN発行
オーストラリアの大手民間銀行ナショナル・オーストラリア銀行(NAB)が、昨年12月に豪ドルと連動するステーブルコイン「AUDN」をイーサリアム上で発行していた。現地メディアのオーストラリア・フィナンシャル・レビュー(AFR)の報道によって1月19日に明らかになった。
NABのイノベーション部門責任者であるハワード・シルビー(Howard Silby)氏によると、「AUDN」は企業顧客の取引に使用することを前提として設計されているとのこと。法定通貨の強みである安定性とブロックチェーンの強みである透明性や決済の効率性を組み合わせることで、企業顧客による豪ドル(AUD)を用いた即時決済を可能にするとのことだ。
なお現在「AUDN」は内部テストの段階であり、リリースは2023年半ばを予定しているとのことだ。「AUDN」のユースケースとしては炭素クレジット取引や海外送金などが挙げられており、将来的にはデジタル資産の売買やweb3アプリケーションの構築などへの利用も見込んでいるとのこと。
シルビー氏は「今後デジタル資産がどのように扱われるかは、まだ明らかではありません。しかし、重要なことは、技術的なことよりも、この分野の企業がガバナンスの実践や責任の分離を行っているか、また保管と取引の違いを理解しているかどうかということです。これらは銀行が大きな強みを持つ部分でもあります」とAFRに対してコメントしている。
オーストラリアのステーブルコインの状況
オーストラリアの大手民間銀行であるオーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ)は2022年3月に「A$DC」と呼ばれる豪ドル連動ステーブルコインを発行し、デジタル資産管理会社ビクター・スモーゴン・グループ(Victor Smorgon Group)に転送したことを発表している。
またAFRによると、2022年初頭にNABとANZを含む大手4行が共同で豪ドルステーブルコインの作成を試みたが、競争への懸念と各行の暗号資産戦略の相違から、この取り組みは中止に終わったとのことだ。
なおオーストラリアの中央銀行であるオーストラリア準備銀行は、2022年8月にCBDC(中央銀行デジタル通貨)発行に向けた調査プロジェクトを行っている。同行は調査プロジェクトの結果を受け、2023年半ばにCBDCパイロット実験を行うことを目標とするCBDC開発ロードマップを2022年9月に発表している。
関連ニュース
オーストラリアが暗号資産サービス提供を認可制に、新政権発足で
参考:Australian Financial Review
デザイン:一本寿和
images:iStocks/Fredex8・Ninja-Studios