S&P、米コインベースの格付けを「BB-」に引き下げ

S&P、コインベースの格付けをBB-に引き下げ

米格付け会社S&Pグローバルレーティング(S&P Global Ratings)が、米コインベース(Coinbase)の格付けを「BB-」に引き下げ、格付け見通しを「ネガティブ」としたことを1月11日に発表した。

S&Pの格付けは「AAA」から「D」まで存在し、「AAA」から「BBB」までが「投資適格」、それ以下は「投機的格付け」とされている。また格付け見通しについては中期的(1~2年)に格付けが変動する方向性を示している。例えば見通しが「ネガティブ」であれば、1~2年以内に格付けが引き下げられる可能性がある。

S&Pによると、コインベースの格付けを引き下げた理由は「取引量の減少に伴う収益性の低下」であるとのこと。コインベースは収益の8割を取引手数料収入が占めており、会社の収益が取引量に大きく依存している。昨年11月に発生した暗号資産取引所FTXの経営破綻以降、コインベースの取引量は低迷しており、同社の収益性は非常に低くなっているとのことだ。

またコインベースの今後の見通しについては、暗号資産市場の低迷と規制リスクの観点から「2023年も同社の収益性は圧迫される」とS&Pは予測しているとのこと。収益性の改善には取引量の回復が不可欠であるが、現在は暗号資産市場自体が低迷しており、今後どの程度まで取引量が落ち込むかや、いつ頃までそれが続くかが不透明とのこと。またFTXの破綻により規制当局の監視が加速し、さらなるコストの増加や収益の低下を招く規制が設置される可能性が高いとのことだ。

なお今回コインベースに付与された「BB-」という格付けの定義は「高い不確実性や、事業環境、金融情勢、または経済状況の悪化に対する脆弱性を有しており、状況によってはその金融債務を期日通りに履行する能力が不十分となる可能性がある」となっており、投資対象には向かない発行体として分類される。

また今後1年の間に「業界環境の大幅な悪化による取引量のさらなる減少」「ビジネスモデルをゆるがす規制強化」「予想を超える信用力の低下」などが発生した場合は格付けをさらに引き下げる可能性があるとのことだ。

コインベースは、運営コスト削減のために同社の従業員の2割にあたる約950名を解雇し、成功の見込みが低いプロジェクトを廃止することを1月10日に発表している。この発表により同社の株価は20%ほど上昇した。また同社による日本事業の大部分が終了となることが11日に報じられてる。その報道によると、日本法人には顧客資産管理のために少数の従業員のみが残るとのことだ。

またコインベースに関しては、著名投資家キャシー・ウッド(Cathie Wood)氏がCEOを務めるアーク・インベスト(ARK Invest)が、自社の上場投資信託にコインベースの株式74,792株(約4.2億円)を追加したことを12日に発表している。アークは10日にもコインベースの株式33,756 株(約1.8億円)を上場投資信託に追加したことを発表していた。

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この記事の著者・インタビューイ

小俣淳平

「あたらしい経済」編集部 一橋大学2年生 真面目で温厚な20歳。大学1年生のころにブロックチェーンに出会い、その革新性に衝撃を受け、ブロックチェーン業界に足を踏み入れた。勢いのままに学内で「OneLab」というサークルを立ち上げ、週一で活動している。