【取材】三菱UFJ信託ら、ステーブルコインの分類基準や導入意義を公表

DCCがステーブルコインの分類基準や導入意義を公表

三菱UFJ信託銀行が主催する「デジタルアセット共創コンソーシアム:DCC(会員企業数166社)」が、パーミッションレス型ステーブルコインに関連する中間整理内容を12月23日に公表した。

この中間整理では、パーミッションレス型ステーブルコインの日本における導入意義、決済システムの未来およびweb3など新時代における国際競争力の確保への影響について検討、確認されている。

現在、日本の決済システムは中央銀行と市中銀行が日銀当座預金を介して流動性を調整する「第1層」と、市中銀行と民間事業者/一般預金者等が銀行預金を介して流動性を調整する「第2層」の2階層に分かれている。そしてパーミッション型ステーブルコインの仕組みは、よりオンチェーン取引に最適化した「第2層」に関連するものとしている。

報告では、「第2層」であるステーブルコインは決済の相手方となる価値が、複数のパーミッション型/パーミッションレス型ブロックチェーン上で発行・流通していることが想定されるため、パーミッション型およびパーミッションレス型の両方のステーブルコインが利用可能となっているのが望ましいという見解が示されている。

なおCBDC(中央銀行デジタル通貨)については、仮に発行されるとしても中央銀行が一般預金者等を直接管理(KYC等)することは想定しづらいことから、新しい「第1層」のシステムとして存在することを想定しているようだ。

またweb3など新時代における国際競争力の確保について、パーミッションレス型ブロックチェーン上のNFTの支払い対価は、パーミッションレス型のステーブルコインの方が望ましいという見解も示されている。

その他の例として、web3関連企業に対するVC等による出資形態は、パーミッションレス型ステーブルコインを用いて行うことがグローバルでは一般的なため、国内でパーミッションレス型ステーブルコインを利用できない場合、 海外web3投資ができないことによるグローバル展開の阻害や、海外VC からの出資が受けづらいことによるweb3 スタートアップの国外移転(web3産業の空洞化)といった事態が想定されると説明されている。

また、航空機などの調達に関連するリアルアセットのトークン化についてはパーミッションド型ステーブルコインが活用され、グローバル/パブリックなweb3エコシステムについてはパーミッションレス型ステーブルコインが活用されることが想定されている。

ステーブルコインのスキームについて

またステーブルコインのスキーム分類として「国内発行型」と「海外発行型」およびそれらが採用法定通貨を「外貨建て」と「円建て」にしているかなどを想定して、分類および評価がされている。

なお国内発行型および円建てのステーブルコイン(国産ステーブルコイン)は「各電子決済手段等取引業者を共同委託者兼当初受益者、信託会社等を受託者として円建ての特定信託受益権型ステーブルコインを発行し、電子決済手段等取引業者が利用者に対してステーブルコインを販売するスキーム」と説明されている。

国内発行型で外貨建てステーブルコインは「海外籍発行体を委託者兼当初受益者、国内の信託会社等を受託者とする金銭信託を行い、受益権として特定信託受益権型ステーブルコインを発行し、海外籍発行体が受領した当該ステーブルコインを電子決済手段等取引業者に譲渡し、電子決済手段等取引業者が利用者に当該ステーブルコインを販売するスキーム」と説明されている。

海外発行型および外貨建てステーブルコインについては、まだスキームが整理されていないようだ。なお中間報告書では、海外発行の外貨建てステーブルコインについて「仲介者買い取り義務スキームについては、電子決済手段等取引業者が買取り義務に対応するための原資の調達方法などにつき検討を重ねる必要がある」と説明されている。

そして短期および中長期的に対応すべき課題としては「パーミッションレス型ステーブルコインの管理・移転に関するAML/CFTの適切な措置」、「仲介者破綻リスクへの対応」などが挙げられている。なお「仲介者破綻リスクへの対応」については、暗号資産交換業者の預り暗号資産と同様に仲介者の預りステーブルコインに対する利用者の優先弁済権を規定する方針としている。

なお金融庁(FSA)が、来年にも海外発行の「ステーブルコイン」について国内流通を解禁すると、日経新聞が12月26日報じた。web3において「ステーブルコイン」が決済手段に使用されることを念頭に、制度改正に踏み切るという。

加筆:12月26日19時50分

三菱UFJ信託銀行のプロダクトマネージャー齊藤達哉氏へ取材

「あたらしい経済」編集部は、三菱UFJ信託銀行デジタル企画部デジタルアセット事業室のプロダクトマネージャー齊藤達哉氏へ取材を行なった。

–2023年のステーブルコインの見通しについて、DCCのスキームでは3分類あると思いますが、どのように規制に沿って展開されていくと考えていますか?

分類のおさらいですが、 ①国内発行型/円建て ②国内発行型/外貨建て ③海外発行型/外貨建て の3パターンです。

「海外発行型/円建て」はあまり想定されないため、捨象しています。

以降、わかりやすさの観点で、外貨建てSCはUSDC(発行体はCircle)を例としてご説明します。

また、基本的に規制の適用についてはあくまで個別判断となりますので、以下は原則論かつ個人的考えとして参考にしていただければと思います。

まず、USDCをそのまま日本で取り扱い可能にする③の場合、今回の規制で顕著な内容として、次の2点が挙げられます。

a) 日本で取り扱う仲介者(新法において、電子決済手段取引業者、以下電決業者)が、発行体(例えばCircle)が破綻した場合に同額を買い取る義務を負う。

b) 発行体(例えばCircle)は日本の発行体規制が適用されないが、資金移動業者並みの送金上限額として、100万円の送金上限額がつく。

bは、利用者の利便性観点で、課題が残ります。

特に大きいのはaで、そのままでは電決業者が発行体破綻リスク分を自己資金で賄う必要があるわけで、かなり負担が大きく、そのままでは実質的に取り扱いが難しいといえます。

もちろん、現時点ではパブコメの段階ですので、今後色々な意見を踏まえるプロセスとなっています。

が、解禁されることと、ビジネスとして実際にワークすることは、完全に別問題である、ということはしっかり認識した方がよいです。

ということで、上記の課題を発生させずに、実質的にUSDCを取り扱い可能にするために考えたのが②です。

国内発行、となっていますが、

例えば 委託者(原資の出し手)=Circle

受託者(原資の置き場所)=信託会社等

とすることで、USDCと同じ振る舞いが可能なパーミッションレス SC(例えばUSDCj)が利用可能になります。

USDCjは、a)電決業者買取義務もなく、b)送金上限額もないため、③よりも利便性やビジネス実現性が向上するものと考えています。

重要な点は、外貨建てについてはいずれにしても、まずは選択肢ができたということと、それを実現するための仕組みについて今回明らかにしたということです。

どちらが実現するかは、上記の例でいえばCircleのような外貨建て SCの発行体がビジネスとして決めることなので、現時点で私から断言はできません。

が、発行体や仲介者(将来の電決業者)のご意向を踏まえて、速やかに発行するための基盤を整えるのが私達のミッションですし、皆さん、目標は法施行後速やかに、つまり2023年をターゲットにされていると認識しています。

参考:三菱UFJ信託
images:iStocks/metamorworks

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この記事の著者・インタビューイ

竹田匡宏

兵庫県西宮市出身、早稲田大学人間科学部卒業。 「あたらしい経済」の編集者・記者。

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