Visa、イーサリアムL2「StarkNet」で自動支払機能をテスト実装

Visa、StarkNetで自動支払機能アプリをテスト実装

米決済大手のVisaが、イーサリアムブロックチェーンのレイヤー2「スタークネット(StarkNet)」で、自動支払機能をテスト実装したことを12月19日発表した。「Account Abstraction(AA:アカウント抽象化)」という、イーサリアム開発者の中でこれまで提案(EIP-2938)されていた仕組みを応用したアプリケーションを構築したとのことだ。

通常のネットサービスでは、サブスクリプション(定期購入)などのサービス利用費用を、ユーザーが毎月などの一定期間で自動支払いする仕組みを構築するのは比較的容易である。しかし、秘密鍵をユーザーが管理する仕組みのブロックチェーンのウォレットでは、その本人が支払いの際に秘密鍵を利用しなければいけないため、自動支払いの仕組みを構築するの難易度があると考えられていた。

そこでVisaの研究チームは、「Account Abstraction」を応用し、「スタークネット」でそれを実現する仕組みを構築し、発表した。

「Account Abstraction」は、スマートコントラクトがユーザーに変わってトランザクションへの署名が行えるようにする仕組みだ。

前述の通り、ユーザーがノンカストディアルウォレットを利用する場合、イーサリアムにおけるトランザクションの署名は、ユーザーのアカウント(EOA)が行う必要がある。

Visaは現在のイーサリアムのトランザクションプロセスに関して「イーサリアムのトランザクションは、イーサリアムプロトコルにハードコードされたいくつかの厳格な要件を持っています。例えば今日のイーサリアムブロックチェーン上の取引は、有効なECDSA署名、有効なナンス、計算コストをカバーするのに十分な口座残高がある場合にのみ有効です」と説明している。

なお「Account Abstraction」では、イーサリアムブロックチェーン上でトランザクションを検証するプロセスにおいて、より柔軟性を持たせることを次のように提案している。

マルチシグネチャーの検証により、マルチオーナーアカウントを可能にする」こと、「マルチシグネチャーの検証により複数所有者のアカウントを可能にする。そして取引の検証にポストクォンタム署名(量子コンピューターが実用化された後に使われると考えられる、デジタル署名技術)を使用できるようにすること」、また「署名検証を完全に取り除くことで、誰でも取引を行うことができるいわゆるパブリックアカウントも可能になる」ことだ。

具体的にVisaは「Account Abstraction」を活用して、ユーザーアカウントがスマートコントラクトである委任可能なアカウント(Delegable Accounts)にトランザクションの署名を委託することで、自動支払を実現させたと説明している。

つまりこの仕組みでは、「Account Abstraction」によって、ユーザーアカウントにプッシュ支払い(支払人が受取人やカード加盟店のアカウントを指定し、資金を送る決済方法)するように指示する能力を、委任可能なアカウントに、委託する仕様としている。

なおVisaが今回スタークネットを選んだ理由は、まだイーサリアムが「Account Abstraction」をサポートしていないためだと説明している。

そしてVisaは、実世界での応用を念頭に置いた革新的な決済商品とソリューションの設計に最前線で取り組み、お金と決済をプログラマブルにするために、スマートコントラクトの新しいアプローチを積極的に探求していくと発表した。

スタークネット(StarkNet)とは?

「スタークネット」はゼロ知識証明、ZKロールアップ(ZK-Rollup)活用したイーサリアムのレイヤー2ソリューションだ。昨年11月、イーサリアムのメインネットでアルファ版としてローンチ。今年7月には独自トークン「StarkNet Token(STARKNET)」発行を発表。そして11月に独立した非営利団体「スタークネット財団(StarkNet Foundation)」の正式発足させている。 

参考:Visa
images:iStocks/2Ban
デザイン:一本寿和

この記事の著者・インタビューイ

竹田匡宏

兵庫県西宮市出身、早稲田大学人間科学部卒業。 「あたらしい経済」の編集者・記者。

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