暗号資産の法人期末課税、特定条件で対象外へ
自由民主党(自民党)が、令和5年度「与党税制改正大綱」を12月16日に発表した。「与党税制改正大綱」には暗号資産(仮想通貨)関連の税制のほか、個人投資家の優遇制度「NISA」の抜本的な拡充・恒久化や、スタートアップ・エコシステムの抜本的強化に向けた具体的な方策などが盛り込まれている。
暗号資産関連の税制に関して、「与党税制改正大綱」に記載されたのは「自社発行の暗号資産保有に対する期末評価に対する対応」、「自社発行トークンの取得価格の評価方法」および「暗号資産レンディング事業者などの損益評価方法」などとなっている。
なお「与党税制改正大綱」では、かねてから要望のある「個人の暗号資産の申告分離課税」や「暗号資産同士の交換時の課税ポイントの有無」および「暗号資産の少額決済への対応」などは論点にあがらなかった。
そして暗号資産の法人期末課税については、法人が事業年度末において有する暗号資産のうち時価評価により評価損益を計上するものの範囲から、特定の要件に該当する暗号資産を除外することとなった。特定の要件は次の通りである。
(1)自己が発行した暗号資産でその発行の時から継続して保有しているものであること。
(2)その暗号資産の発行の時から継続して次のいずれかにより譲渡制限が行われているものであること。
・他の者に移転することができないようにする技術的措置がとられていること。
・一定の要件を満たす信託の信託財産としていること。
また「自己が発行した暗号資産について、その取得価額を発行に要した費用の額とする」と記載された。
最後に法人(レンディング事業者など)が暗号資産交換業者以外の者から借り入れた暗号資産の譲渡をした場合については「その譲渡をした日の属する事業年度終了の時までにその暗号資産と種類を同じくする暗号資産の買戻しをしていないときは、その時においてその買戻しをしたものとみなして計算した損益相当額を計上する」と記載された。
今年7月に一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)と一般社団法人日本暗号資産取引業協会(JVCEA)は、共同で暗号資産(仮想通貨)に係る2023年度税制改正要望書を取りまとめ、金融庁へ提出していた。両団体の2023年度税制改正要望書には、「申告分離課税」と「短期売買目的で保有するトークンの期末時価評価課税の対象としない」ということが含まれていた。
JCBA税制検討部会部会長の斎藤岳氏へ取材
(12月26日に加筆)
あたらしい経済編集部は、JCBA税制検討部会部会長の斎藤岳(株式会社pafin代表取締役)へ取材を行った。
−−「令和5年度与党税制改正大綱」の暗号資産税制の論点について、どのように捉えられましたか?そして来年度の対応方針について教えていただけますか?
法人税制について、自社発行トークンを期末時価評価課税の対象外とする点が盛り込まれたことは大変高く評価しております。要望の1つが記載されたという意味だけではなく、暗号資産をより企業が発行しやすい税制が整ったということは業界全体の発展にとって大きな意味を持つと思っております。
来年度については、まず法人税制について当初の要望内容どおり、自社発行トークンに絞られない形で短期売買目的以外での保有については期末時価評価課税の対象から除外するという点について引き続き議論を重ねていきたいと思います。また個人の税制についても丁寧な議論や意義を関係各所に共有させて頂くことで1日でも早く実現を目指していくつもりです。
参考:令和5年度「与党税制改正大綱」
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デザイン:一本寿和