ゴールドマンサックス、評価額低迷する暗号資産企業の投資や買収を計画中。FTX崩壊を好機に

ゴールドマン、評価額低迷する暗号資産企業の投資や買収を計画中

FTXの破綻により、暗号資産(仮想通貨)関連企業の評価額が低下し、投資家の関心が薄れている。

そしてその現状を踏まえ、世界有数の投資銀行であるゴールドマン・サックスは、数千万ドルを投じて暗号資産関連企業を買収または投資する計画を示した。

ゴールドマンサックスのデジタル資産部門の責任者であるマシュー・マクダーモット(Mathew McDermott)氏はロイター通信に対し「FTXの破綻により、より信頼性が高く、規制された暗号資産関連企業の必要性が高まっており、大手銀行はビジネスを獲得するチャンスと見ている」と伝えている。

ゴールドマンサックスは多くの異なる暗号資産企業についてデューデリジェンスを行っていると、詳細は明かさず付け加えた。なおマクダーモット氏は先月のインタビューで、「もっと良心的な価格の、本当に面白いビジネスチャンスがあると思う」と語っている。

FTXは崩壊の後、11月11日に米国で連邦破産法の適用を申請し、暗号資産規制の強化を求める声を増幅させた。

マクダーモット氏は、「FTXは、エコシステムの多くの部分で模範とされた。また繰り返しになるが、基本的な暗号資産に関連する技術は引き続き高いパフォーマンスを発揮している」と伝えた。

ゴールドマンサックスが暗号資産関連企業へ投資する可能性のある金額は、昨年216億ドルを稼いだウォール街の巨人にとって大きなものではない、このセクターの激震の中で投資を続けるという意欲は、長期的なチャンスを感じていることを表しているだろう。

同社のCEOであるデビッド・ソロモン(David Solomon)氏は、11月10日にCNBCのインタビューで、暗号資産を「非常に投機的」と見なす一方で、その基盤技術がより正式なものになれば、多くの可能性を見出すだろうと語っている。

投資銀行のライバルらはより懐疑的

投資銀行モルガン・スタンレーのジェームズ・ゴーマン(James Gorman)CEOは、12月1日に開催されたReuters NEXTカンファレンスで、「流行り廃りがあるとは思わないが、暗号資産は本質的な価値を見出すことはできない」と述べている。

一方、HSBCのCEOであるノエル・クイン(Noel Quinn)氏は、先週ロンドンで開かれた銀行会議で、個人顧客向けの暗号取引や投資を拡大する計画は無いと伝えた。

ゴールドマンサックスは、コンプライアンス、暗号資産データ、ブロックチェーン管理などのサービスを提供するデジタルアセット企業11社に投資している。

トライアスロンを趣味とするゴールドマンサックスのマクダーモット氏は、2005年にゴールドマンサックスに入社し、クロスアセットファイナンスの責任者を経て、デジタルアセットビジネスを統括するまでに成長した。彼のチームは、7人の暗号資産オプションとデリバティブのトレーディングデスクを含め、70人以上に成長している。

また、ゴールドマンサックスは、MSCIおよびコインメトリクスと共同で、デジタル資産をその使用方法に基づいて分類することを目的としたデータサービス「datonomy」をローンチした。また同社は独自のプライベートブロックチェーンを構築していると、マクダーモット氏は説明した。

信頼できるプレーヤー

データサイトのコインマーケットキャップによると、世界の暗号資産市場は2021年後半に2兆9,000億ドル(約397兆円)でピークを迎えたが、中央銀行の信用引き締めや有名企業の相次ぐ倒産が響き、今年に入って約2兆ドル減少している。最終的には12月5日に8650億ドル(約8兆円)となっている。

FTXの破綻による波及効果で、ゴールドマンの取引量は増加したとマクダーモット氏は言う。それは投資家が規制され資本力のあるカウンターパーティとの取引を求めたからだ。

また同氏は「増えたのは、私たちと取引したいという金融機関の数だ。彼らの多くはFTXと取引していたと思われるが、確かなことは言えない」と伝えている。

マクダーモット氏は「ゴールドマンサックスは、暗号資産やその技術系企業の人員削減に伴い、採用の機会もあると考えている」とも伝えている。

そして暗号資産の価格低迷をビジネス構築のチャンスと捉える人もいる。

ブリタニア・ファイナンシャル・グループ(Britannia Financial Group)は暗号資産関連サービスを構築していると、同社の最高経営責任であるマーク・ブルース(Mark Bruce)氏がロイターに語った。

ロンドンに拠点を置く同社は、暗号資産への多様化を熱望しながらも、これまで暗号資産に投資をした経験がない顧客にサービスを提供することを目的としていると、ブルース氏は述べた。また暗号資産に精通しているが、FTXの破綻以来、暗号資産取引所に資金を預けることに神経質になっている投資家にも対応する予定だ。

また同社は、富裕層向けの取引など、暗号サービスを提供するためのライセンスをさらに申請中だという。

※この記事は「あたらしい経済」がロイターからライセンスを受けて編集加筆したものです。
(Reporting by Iain Withers and Lawrence White, Editing by Lananh Nguyen and Alexander Smith
翻訳:竹田匡宏(あたらしい経済)
images:ロイター

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竹田匡宏

兵庫県西宮市出身、早稲田大学人間科学部卒業。 「あたらしい経済」の編集者・記者。

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